高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


カネミ油症被害者の聞き取り調査:聞き取り記録集の作成



グループ名 カネミ油症被害者支援センター 完了報告書[pdf320]
完了報告書[pdf320]
完了報告書[pdf320]
代表者氏名 石澤 春美 さん
URL http://blogs.yahoo.co.jp/qzg07170
助成金額 110万円

研究の概要

2003年12月の助成申込書から
【背景】  1968年に発生したカネミ油症事件は、カネミ倉庫(北九州市)製造の「カネミライスオイル」にPCBが混入し、それを食べた人々に被害が広がった日本最大の食中毒事件であり、ダイオキシン類(PCDF・コプラナーPCB等)を直接経口により体内に摂取した人類史上初めての事件である。  発症から30数年を経過した現在も数々の病気で苦しむ被害者の実情は知られていない。  特に年少者を含めて女性特有の症状が多く、子孫への影響も抱えているが、国が設置した全国油症治療研究班によって年に一度行われる油症検診にも、かつて婦人科はなく、異常な症状を抱えたまま死に至った女性も各地に存在していた。  これまでの活動を通じて、油症検診への女性医師の派遣、地域の相談員、相談窓口の必要性を訴え、2001年より実施されるようになった。 【経過】  高木基金からの助成は、昨年に続き2回目。  今回の助成を受け、長崎五島列島、福岡、広島に計10回の調査を行い、被害者からの聞き取りをすすめた。  平行して、日弁連への人権救済申し立て、国会議員への要請、坂口厚生労働大臣との面会などを行った。 【成果】  聞き取りがすすみ、発症から現在までの被害者の状況、現状をまとめ、記録集として出版する準備が整った。 【今後の展望】  まもなく記録集を発行する。  食品公害による人権侵害、家族被害による生活苦、病苦などを社会に知らせ未然防止に役立てるとともに、今後とも、ダイオキシンの毒性を伝え、現在我が国に制定されていない毒性化学物質の被曝に対する対策の立法化をめざしていきたい。

中間報告

中間報告から
 原田正純氏を団長とする調査団に加わり2000年3月に初めてカネミ油症被害者に会い、30数年にわたる被害の深刻さを知った。カネミ油症事件は、米糠油製造時に油中に洩れたPCBが熱変成によりPCDF、コプラナーPCB等のダイオキシン類が生成されていた事件である。  ダイオキシン類を直接経口による体内被曝は世界で初めてのケースであり、被害者の追跡調査、研究が極めて重要な課題である。また、ダイオキシン類を含む被害であることが発症から数年後には解明されながら、医療、生活保証の面でも放置されている。  被害者は、子どもや夫を亡くし、さまざまな症状に苦しみ、更に仮払金返還の悩みを抱え、世間から隠れるように生活をしていた。  2000年より、訪問を重ねるうちに沈黙を破り語り初めている。そこから未認定発掘や胎児性影響の調査が進み始めている。  PCB、ダイオキシン油症としての食品公害、カネミ油症事件。ひとりずつ訪ねた聞きとり記録集で社会に伝えたい。

結果・成果

完了報告から
調査研究・研修の経過 2004年4月2日〜5日 自主検診と聞き取り調査 長崎県五島列島    6月19日〜22日 九州地区聞き取り調査 福岡、小倉、中間市    7月3日〜5日 広島地区聞き取り調査 未認定者、次世代調査    8月21日〜25日 自主検診、法律相談、聞き取り調査    10月12日 関東地区聞き取り調査    10月14日〜15日 広島地区法律相談、聞き取り調査    10月22日〜25日 九州地区被害者交流会企画            高木基金九州報告会 報告と参加、聞き取り調査    11月7日〜9日 聞き取り調査(次世代調査) 長崎県五島列島、福岡 2005年3月8日 新認定者聞き取り調査    4月20日 関東地区聞き取り調査   調査研究・研修の成果  1968年に発生した「カネミ油症事件」はカネミ倉庫(北九州)製造の「カネミライスオイル」にPCBが混入し、それを食した人々に被害が広がった日本最大の食品中毒事件である。  発生時、構成された「全国油症治療研究班」(九州大学に設置)により認定基準が設けられ、1万4000人の届出の中からわずかに1876名が認定されている。  発生から数年後にはPCDFを含む被害として解明されながら新たな対策には至らず、そのまま放置されて来た。  2000年3月に行われた原田正純医師(熊本学園大学教授)の「カネミ油症被害者・自主検診調査団」に参加し、発症から30数年を経過した現在も数々の病気で苦しむ被害者を知った。  発症時のクロルアクネ(塩素ニキビ)や多量の眼脂の状態から、さらに内臓疾患、神経系や骨の病気、失明、全身の痛み、婦人病、がんの多発など、多岐に亘る病気を抱え、子孫への影響も抱えていた。  油症発症後の死亡者も多く、病苦、生活苦、国への仮払金返還問題などで自殺者も存在していた。  救済の必要性と、ダイオキシンの体内への影響を被害者から学び社会に伝える必要性を痛感し、数回に渡って被害者を訪ねて来た。特に年少者を含めて女性特有の症状が多く、訪れた中には婦人科診察の機関がない地域も存在していた。  全国油症治療研究班によって年に一度行われる油症検診にも婦人科はなかった。異常な症状を抱えたまま死に至った女性も各地に存在していた。  実態を国、政治、全国油症治療研究班に伝えることで油症検診への女性医師の派遣、地域の相談員、相談窓口の必要性を訴え、2001年より実施されている。また、解明されながらそのまま放置されて来た「PCDF被害としてのカネミ油症」を2002年3月国が正式に認めるに至った。  国が認めたことにより、未認定者を含む被害者全体の救済につながることを期待している。そのためには、血中のダイオキシン濃度のみの認定ではなく、器官や臓器への影響を含めた「全身病」としての認識が必要と思われる。  ベトナムの枯葉剤被害の母親から生まれた子どもたちに見るように、個々に症状が異なりそれぞれに重い障害を抱えている。ダイオキシンの毒性、体内への影響を知るために2度(2001年、2003年)に渡ってベトナムの各施設を訪問した。その際接したベトナムの人たちは、悲劇を二度と繰り返さないために世界中に情報を発信している。世界の人々が集まり、調査、研究、支援の手が差し伸べられている。それに比較し日本のダイオキシン被害としてのカネミ油症は、殆ど社会に知られていない。  高木基金の助成を受け、各地で集会や相談会、などを開きながら、被害者と接することが出来た。交流によって信頼感が生まれ、閉ざされていた内面的なことも話し合うことが出来た。 訪問によって皆が集い、久しく途絶えていた被害者同士の交流となり、近況や医療の情報交換などを行い、各地に新しく会も結成された。2004年度には5つの会が結成された。 会での発言は、諦めていた医療、生活保障への要望など、原因企業への要請や国への交渉などに発展している。  2004年9月29日全国油症治療研究班より、PCDFを含む新認定基準が発表されたが、全国で18名の認定に留まった。その際にも会が結成されていたことで情報を共有し、30数年の被害に対しての保障を原因企業を訪れ申し出ている。  また、当センターが呼びかけた日本弁護士連合会、人権擁護委員会への人権救済申し立てにも、それぞれの会が説明し合い第3次(2005年2月10日)に及ぶ261名の申し立てに至った。 2004年12月東京で開催した「人権と認定問題」の集会や省庁交渉、国会議員のヒヤリングなどにも、長崎県五島列島や福岡、広島などから、自らの意志で出席し、発言するようになった。  「カネミ油症事件」は、毒の入った食用油が「健康食品」として販売されたことで多くの深刻な被害を生み出した。  カネミライスオイルを食した本人のみならず、胎盤や母乳を通して子孫にまで影響を及ぼしている。  30数年の?苦しみ、怒り、不安?のひとりひとりを聞き取り集にまとめ記録として残し、PCB、PCDFの毒性を社会に伝えることで被害者救済と未然防止の社会を目指したい。

その他/備考

対外的な発表実績
◎提言等   ・日本弁護士連合会・人権擁護委員会へ    人権救済申し立て、被害者261名(2004年4月6日、10月22日、2月10日)   ・全国会議員723名を議院会館に訪問     被害者の現状を訴える(2005年2月9日)   ・民主党「人権問題調査会」にて     救済法についてのヒヤリング(2005年2月10日)   ・関係各省の国会議員訪問     救済法についてのヒヤリング(2005年3月9日)   ・坂口前厚生労働大臣との面談     食品中毒に対する立法について(2005年3月9日) ◎講演活動   ・「カネミ油症被害者は今」     練馬区、環境を考える会(2004年5月22日)   ・「36年後のカネミ油症被害者」     小平市、経営者の会(2004年6月12日)   ・「カネミ油症とベトナムの子どもたち」     青梅市、農薬汚染を考える会(2004年9月19日)   ・「カネミ油症とベトナムの子どもたち」     国分寺市、子どもと環境・国分寺の会(2004年10月11日)   ・「食品問題とカネミ油症」     練馬区、環境とくらし・市民ネットワーク(2005年3月25日) ◎雑誌への寄稿   ・「二世、三世にも続くカネミ油症の被害」       ― PCBやダイオキシン、次世代への影響は ― 週刊金曜日(2004年12月24日号)    【今後の展望】  36年を経過したカネミ油症被害者を訪ね、化学物質が環境、生命に及ぼす影響を改めて認識出来た。PCB、ダイオキシン問題は、現代社会の極めて深刻な問題であり、カネミ油症事件を直視し、検証することが重要と思われる。  PCB被害としてのカネミ油症を訪ね学んだことを被害者と共に国や政治、社会に訴えて来た。  そのことにより、国が発症時のPCB原因説からPCDFを含む被害として認めるに至った。  また発症時の認定も2004年9月PCDFを含む基準に改定するに至った。  被害者と共に国会に働きかけたことにより、救済の立法化の動きも出ている。  また、わが国には制定されていない食品中毒による保障の法律制定についても坂口前厚生労働大臣と話し合うことが出来た。被害者が立ち上がることによっていろいろ動き始めている。 ダイオキシンの毒性をカネミ油症被害者に学び記録し、今後の対策に役立てたい。

HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い