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維持基準の原発安全性への影響に関する研究



グループ名 原子力資料情報室 完了報告書[pdf521]
完了報告書[pdf521]
代表者氏名 伴 英幸 さん
URL http://cnic.jp
助成金額 90万円

研究の概要

2003年12月の助成申込書から
【背景】  東電の損傷隠し事件を契機として、維持基準が導入され、今後、原発の運転継続に必要な健全性が、この基準で評価されることとなったが、当室は、維持基準による健全性評価は原発の安全余裕を切り詰めるものだと指摘してきた。 【経過・成果】  柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟において、共同研究者の井野博満が応力腐植割れの問題で証言した(8/31主尋問、10/12反対尋問、訴訟は2005年2月に結審)。  美浜原発3号炉の事故に際しては、事故現場の検証を行い、国側の事故調査委員会などの情報を収集・分析し、公開研究会で報告するとともに、当局とのやりとりの経過を原子力資料情報室通信やwebサイトで随時発信した。  また、一般向けのブックレット『老朽化する原発−技術を問う』を発行した。 【今後の展望】  ・ブックレットでとりあげた個々のテーマについてのさらなる調査・分析。  昨年は、柏崎刈羽原発の裁判の準備として、沸騰水型炉のシュラウドと再循環系配管のひび割れ(ステンレス鋼製の機器・配管の応力腐食割れ)に精力的にとり組んだが、これに続くテーマとして原子炉の中性子照射による脆性破壊の問題を研究している。  原発運転の長期化によって、照射脆化がすすんでいくことが予想されているが、それを監視するための手段すら確立されているとは言えないのが現状で、脆性遷移関連温度などのデータの分析、原子炉破壊事故がおきうるシナリオについての解析などを行なう。  ブックレットの内容をより多くの人に知ってもらうための「出前講座」の準備。  I猷原発運転差し止め訴訟への協力。  現在、裁判所による「検証」の準備がすすめられており、検証すべき場所・機器・事柄についての示唆・検討を行なっている。

中間報告

中間報告から
 私たちは,原子力発電所(原発)の老朽化(機器の経年劣化)にともなってあらわれる,さまざまな事故・故障・トラブルが,原発の安全性に関してどのような影響を与えているのか,また,今後どのような事故・故障・トラブルが起こりうるのか,ということを,実際に起きた事例の分析を中心にすえて,調査をすすめてきています.  ここ数年来おおきく問題化しているものの一つに,ステンレス鋼製の容器や配管のひび割れというものがあります.沸騰水型原発の心臓部ともいえる原子炉圧力容器の周辺の機器(「シュラウド」と「再循環系配管」)でも,深刻なひび割れが発生しており,原発が破壊するかもしれない危険性を潜在しながら,運転が続けられています.  これに対して規制当局(経済産業省の原子力安全・保安院)や電力会社らは,ひび割れが生じても直ちには原発の安全性に問題がないとして,運転を続けながらひび割れの進行するようすを見守る制度をつくり,2003年10月から運用を始めました(いわゆる「維持基準」のこと).  これまでの本研究の成果をさらに精緻なものにまとめ,柏崎刈羽原発1号炉の設置許可取り消し訴訟において,本グループのメンバーのひとりである井野博満が証人として証言しました(8月31日主尋問終了,10月12日反対尋問予定).その証言の中心話題として取り上げたテーマが,「未知の発生メカニズムによるステンレス鋼製機器・配管のひび割れ(応力腐食割れ)」です.  1970年代半ば以降続発していたステンレスのひび割れ対策として,新たに原子力用ステンレス鋼(SUS316LC材)が開発され,いったんは問題の解決をみたかにみえました.しかし,この原子力用ステンレス鋼製の機器・配管でも,2002年8月に発覚した東京電力のトラブル隠しであきらかになったように,数多くのひび割れが発生していることがわかりました.このひび割れについては,先の70年代のひび割れと違って,原子力プラントのメーカーの研究者らの最新の研究においても,発生メカニズム(機構,機序)が解明されておらず,根本的な対策がたてられる状況にありません.また,ひび割れの進行するようすを見守るといってみても,そのスピードを予測するためのデータも不足しており,見守っているうちに配管が破れてしまう,という事態も起きかねません.  以上が井野証言のおもな内容で,これもとに一般向けのパンフレットの制作や,浜岡原発での活用も視野に入れながら,調査活動をすすめています.規制当局や関連学会への働きかけ(要請・提言・意見書提出)なども具体的に検討をすすめています.  また,その他にも,原子炉の上ぶたの損傷問題(大飯3号炉),配管の減肉問題(美浜3号炉ほか多数)など,重大な事故がたくさん起きており,これらについても精力的に資料収集および分析作業を行なっています. 調査研究の具体的な経過・成果 ◆グループ内の研究会の開催(日時とテーマ) 4月14日,原子炉圧力容器の中性子照射脆化問題,柏崎刈羽裁判の対応(応力腐食割れ) 5月19日,原子炉圧力容器の中性子照射脆化問題,柏崎刈羽裁判の対応(応力腐食割れ),圧力容器上ぶたの損傷問題. 5月29日,応力腐食割れに関する勉強会 (6月22日,超音波探傷検査に関する勉強会) 8月3日,柏崎刈羽裁判の対応(井野博満(共同研究者)の陳述書の検討) ◆柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟の準備作業(弁護団,原告団との打ち合わせと証言内容の準備作業) 5月20日,7月15日,7月28日,8月18日,8月26日,10月6日. 8月31日に井野博満(共同研究者)が東京高裁にて証言.『原子力資料情報室通信』第363号に8月31日に行なわれた井野博満(共同研究者)の証言の内容を紹介.(筆者:湯浅欽史(原発老朽化問題研究会)) ◆美浜3号炉配管破裂事故に関連して 8月9日の事故発生以降,報道機関らへの問い合わせへの対応多数. (8月11日には上澤千尋(共同研究者)が事故現場を検証(社民党合同調査団に同行).) 8月26日,原子力資料情報室公開研究会開催(上澤千尋(共同研究者),藤野聡(原子力資料情報室),井野博満(共同研究者),武本和幸(刈羽村)) 9月24,25,26日,青森県での連続講演会(上澤千尋(共同研究者),ゲスト:松下照幸(美浜町),武本和幸(刈羽村)) 『原子力資料情報室通信』第363号,第364号に特集記事,解説を掲載. (伴英幸(研究代表),上澤千尋(共同研究者),山口幸夫(共同研究者)ほか) 調査研究の進捗状況・計画の変更などについての特記事項 8月9日に発生した美浜3号炉における配管破裂事故に関連して,配管(炭素鋼,低合金鋼,ステンレス鋼)の減肉問題についても,調査研究の重点課題とします. 補足資料「原発の老朽化研究?ステンレス鋼の応力腐食割れと炭素鋼の減肉」  軽水炉(沸騰水型と加圧水型)の原子炉圧力容器には低合金鋼(炭素鋼に第3の元素をわずか添加したもの)が、炉内構造物や配管などにはステンレス鋼や炭素鋼がつかわれている。経年化による金属材料の劣化(老朽化)は避けることができないが、破局的な事故を防ぐために、これまでさまざまな技術的改良がなされてきた。  炉心シュラウドと再循環系配管の多数のひび割れ隠しが発覚し、東電所有の17基の沸騰水型原発がすべて停まる事態となったのは、つい昨年のことだ。そして、応力腐食割れを防ぐとされていたSUS316Lというステンレス鋼が、従来とは異なるメカニズムでひび割れを起こしていたことが判明した。  超音波検査でひびの場所や大きさを知ることが必ずしも出来ないことも分かった。メカニズムが未解明なので、本質的な対策がたてられない。このままでは事故を確実に防ぐことはむずかしい。本研究会の井野博満・法政大学教授は柏崎・刈羽原発行政裁判控訴審でこのように証言した(04年8月31日)。  ステンレス鋼だけでなく、炭素鋼でも問題が発生した。この8月、関電美浜3号機の加圧水型原発で、2次系の配管が破裂して5人の死者が出た。厚さ10ミリの配管が0.4ミリにまで減肉していたことが判明した。  老朽化の現状を的確に把握し、警告を発することが益々重要になった。

結果・成果

完了報告から
調査研究・研修の経過 2004年 4月14日,グループ内の会合.原子炉圧力容器の中性子照射脆化問題,柏崎刈羽裁判の対応(応力腐食割れ) 5月19日,グループ内の会合.原子炉圧力容器の中性子照射脆化問題,柏崎刈羽裁判の対応(応力腐食割れ),圧力容器上ぶたの損傷問題. 5月20日,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言)の準備作業. 5月29日,グループ内の会合.講師を招いて応力腐食割れに関する勉強会 6月22日,グループ内の会合.講師を招いて超音波探傷検査に関する勉強会 7月15日,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言)の準備作業. 7月28日,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言)の準備作業. 8月3日,グループ内の会合.柏崎刈羽裁判の対応(井野博満(共同研究者)の陳述書の検討) 8月9日,美浜3号炉事故発生以降,『原子力資料情報室通信』やWebを通じての情報発信,報道機関らへの問い合わせへの対応多数. 8月11日,上澤千尋(共同研究者)が美浜3号炉・配管破裂事故現場を検証(社民党合同調査団に同行). 8月18日,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言)の準備作業. 8月26日,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言)の準備作業. 8月26日,原子力資料情報室・美浜3号炉配管破裂事故に関する公開研究会開催(上澤千尋(共同研究者),藤野聡(原子力資料情報室),井野博満(共同研究者),武本和幸(刈羽村)) 8月31日,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言),東京高裁にて証言(主尋問). 9月24日(青森市文化会館),25日(八戸市中央公民館),26日(野辺地観光物産館),青森県各地で美浜3号炉配管破裂事故と原発現地の状況に関して連続講演会(上澤千尋(共同研究者),ゲスト:松下照幸(美浜町),武本和幸(刈羽村)). 10月6日.柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言)の準備作業. 10月12日,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟(井野証言),東京高裁にて証言(反対尋問). 10月19日,グループ内の会合.美浜3号炉事故について勉強会. 10月23日,新潟県中越地震発生後,柏崎刈羽原発の耐震性などについてWebを通じての情報発信. 12月1日,グループ内の会合.美浜3号炉事故,配管減肉問題,新潟県中越地震と柏崎刈羽原発について勉強会. 12月25日,グループ内の会合.石橋克彦さん(地震学者,神戸大学)を招いて新潟県中越地震と柏崎刈羽原発・浜岡原発について勉強会. 2005年 1月18日,グループ内の会合.ブックレット制作に関する議論,やり取り. 2月16日,グループ内の会合.ブックレット制作に関する議論,やり取り. 3月11日,グループ内の会合.ブックレット制作に関する議論,やり取り. 4月25日,グループ内の会合.ブックレット完成報告,今後の調査研究のテーマについて話し合い. 4月27日,一般読者向けのブックレット『老朽化する原発 ?技術を問う?』(原発老朽化研究会著,原子力資料情報室発行)が完成. 美浜3号炉事故について上記以外の調査研究などの実施状況: ・「総合エネルギー調査会原子力保安部会・美浜発電所3号機2次系配管破損事故調査委員会」,「原子力事故・故障分析評価専門部会 美浜発電所3号機2次系配管事故検討分科会」を藤野聡・勝田忠弘・上澤千尋らを中心に傍聴を行ない,資料の収集分析を続けた. ・藤野聡を連絡窓口にして,各地の市民グループとともに,原子力安全・保安院に対して質問書をもとに交渉・要請を行なった(おもな質問書・申し入れ書などの日付:2004年8月11日,8月12日,8月24日,9月23日,10月11日,11月9日,12月3日,2005年3月29日,4月7日). 調査研究・研修の成果 私たちが今回の助成期間のなかで行なったおもなことは,柏崎刈羽原発裁判の証言準備,美浜3号炉配管破裂事故の分析,一般読者向けのブックレット『老朽化する原発 ?技術を問う?』の製作,の3つです. (1)柏崎刈羽原発1号炉の設置許可取り消し訴訟において,本グループのメンバーのひとりである井野博満が証人として証言しました(8月31日主尋問,10月12日反対尋問).その証言の中心話題として取り上げたテーマが,「未知の発生メカニズムによるステンレス鋼製機器・配管のひび割れ(応力腐食割れ)」です. 「1970年代半ば以降続発していたステンレスのひび割れ対策として,新たに原子力用ステンレス鋼(SUS316LC材)が開発され,いったんは問題の解決をみたかにみえた.しかし,この原子力用ステンレス鋼製の機器・配管でも,2002年8月に発覚した東京電力のトラブル隠しであきらかになったように,数多くのひび割れが発生していることがわかった.このひび割れについては,先の70年代のひび割れと違って,原子力プラントのメーカーの研究者らの最新の研究においても,発生メカニズム(機構,機序)が解明されておらず,根本的な対策がたてられる状況にない.また,ひび割れの進行するようすを見守るといってみても,そのスピードを予測するためのデータも不足しており,見守っているうちに配管が破れてしまう,という事態も起きかねない.原発材料としてステンレス鋼を採用したことは原発メーカー・電力会社の誤りであり,そういう原発の設置・運転を認めたのは政府の誤りである」という内容の主張を金属材料学の研究者の立場から行ないました. この裁判は2005年2月に結審しており,現在,判決が出るのを待っているところです. (2)美浜3号炉での配管破裂・蒸気噴出事故への対応については,「2.調査研究の経過」に記載した通りです.配管の減肉問題については,加圧水型炉だけの問題でなく,別の要因がからむ事故として沸騰水型炉のタービン系,蒸気系,脱気系であらわれており,今後も取り組んでいく必要があります.規制当局とのやり取りの経過は,『原子力資料情報室通信』やWEBにて報告しています.各電力会社や規制当局の態度は,美浜3号炉のような事故はどこかで再発する可能性がある,と感じさせるものであり,今後も監視を強めていく必要があると考えています. (3)一般読者向けのブックレット『老朽化する原発 ?技術を問う?』をつくりました.ブックレットの「はじめに」より,内容の紹介部分を抜粋します. 第1章 老朽化すすむ原発(上澤千尋) 日本の二つの型の原発について,知られているかぎりの損傷と事故をていねいに紹介した.さらに,それらがいつ,どういう処置をほどこされたかをまとめ,批判的検討をくわえた.原因が究明されないままに運転されているケ−スもあり,注意をうながしている.外国の原子炉の損傷と対比させて論じているので,世界の原発の老朽化の状況を知ることができる.そのうえで,維持基準とは何かを解説した. 第2章 原子炉材料の劣化(井野博満) まず,どんな特性の金属材料が原発のどういう箇所に使われているかをまとめ,ついで,材料の金属疲労,腐食,放射線損傷を解説した.ここだけでも,一読の価値がある.さらに,再循環系配管とシュラウドの応力腐食割れに新しい現象が見つかっていること,超音波検査が信頼できないこともあり,き裂の進展の予測がつかないことを,明らかにした.最後に圧力容器の照射脆化が一般の予想を超えて進んでおり,きわめて危険な状態にあることを,詳しい研究結果にもとづいて警告した. 第3章 「高経年化」対策という虚構(田中三彦)  日本の初期の原発はまだ法規がない時代に作られ,すでに経年数30年をこえて9基ある.これらを「高経年化対策」の名のもとに60年酷使する案が進行中だ.しかも,アンダ−クラッド・クラッキングの認識が国にも電力会社にもなかったのに,知っていたかのように技術報告書が書かれている.原発関係者の楽観のもとにある「累積損傷係数」について注意をうながし,原発には個性があると指摘している.設計者としての体験に基づいた論考である. 第4章 設計技術からみた維持基準の意味−設計技術者の発言−(柴田宏行)  とにかく作る,という立場の技術者は何を優先し,なにを切り捨てるのか.強度,安全率,経済性,劣化,壊れ方のいろいろ,破壊力学,などの考え方とからめて設計条件の中身の実際を語った.原発プラントの検査には,建前と現実にギャップがあり,維持基準の導入は意味がないうえに,危険だと主張している.原発の設計思想には根本的な誤りがあると指摘した. 第5章 近代技術の性格と事故(湯浅欽史)  技術の世界では,単純化したモデルに基づき,安全率でカバ−しながら設計作業がなされる.なによりも全コストを最小にする努力がされるので,利害の立場に依存して技術は実現される.いま進行中の原発の耐震設計指針にも,それがうかがわれる.そう考えると,原発と安全とは両立しないと言わなければならない。 第6章 柏崎刈羽からの現地報告(武本和幸) 老朽化をめぐる柏崎刈羽原発地元の住民と電力会社や国とのあいだに,どんなやりとりがあったのか.その実情をあきらかにした.本社の建前論も事実によってひっくりかえっていき,住民はなにが本当のことなのか迷う.原発の完全な検査が期待できないうえに,想像を絶する被曝作業を伴うことがデ−タでしめされる.地元との信頼関係はきづけるのか.安全・安心などとはほど遠い現実を語った.

その他/備考

対外的な発表実績
対外的な発表実績 原子力資料情報室が直接関わっているメディア以外のおもな発表実績は次の通りです. 藤野聡,美浜原発で死傷事故・防げたはずの人災,『週刊金曜日』,520号,2004年8月20日 井野博満,柏崎刈羽原発設置許可取り消し訴訟陳述書,2004年8月31日. 上澤千尋,地震による原発事故発生の「確率」について,『消費者リポート』,第1283号,2005年1月17日 山口幸夫,高経年化対策で惨事の危険性が増す,原子力長計策定会議意見書,2005年3月29日 井野博満,原発シュラウド・再循環系ステンレス鋼のひび割れ問題(その後),『金属』,Vol.75,2005年5月号. 今後の展望 現在すすめているものが3つあります. 1つ目は,ブックレット『老朽化する原発 ?技術を問う?』でとりあげた個々のテーマそれぞれについて,さらなる調査・分析を行なうことです. 昨年は,柏崎刈羽原発の裁判の準備として,沸騰水型炉のシュラウドと再循環系配管のひび割れ(ステンレス鋼製の機器・配管の応力腐食割れ)について精力的にとり組みました.とくに,ひび割れ発生メカニズムは未解明であり,維持基準摘要の根拠となるひび割れ進展予測については不確実性が高く,ひび割れを残したまま原発を運転することには大きな危険性があることを指摘しました. これに続くテーマとして,現在,原子炉の中性子照射による脆性破壊に関する問題にとりかかっています.原発の運転中に,原子炉内壁が中性子線の照射によって変質・劣化することが知られています.これを原子炉の中性子照射脆化と呼んでいます.原発運転の長期化によって,照射脆化がすすんでいくことが予想されていますが,それを監視するための手段すら確立されているとは言えないのが現状です.脆性遷移関連温度などのデータの分析,原子炉破壊事故がおきうるシナリオについての解析などを行なって,原子炉の中性子照射脆化の問題点を明確にしていきたいと考えています.5月下旬にグループ内部での最初の研究会を行ないます. 2つ目として,ブックレットの内容をより多くの人に知ってもらうために,「出前講座」のようなものを準備しています.現代技術史研究会での勉強会や原子力資料情報室の公開研究会を行なうことは決まっていますが,その他の会についての詳細は未定です. 3つ目は,浜岡原発運転差し止め訴訟への協力です.現在,裁判所による「検証」の準備がすすめられていますが,検証すべき場所・機器・事柄についての示唆・検討を行なっています.

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