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原子力機器の材料劣化の視点からみた安全性研究



グループ名 原子力資料情報室 調査研究の概況[pdf219kb]
調査研究の概況[pdf219kb]
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代表者氏名 伴 英幸 さん
URL http://cnic.jp
助成金額 100万円

研究の概要

2002年12月の助成申込書から
 この研究では、原発事故の原因となる原発機器材料劣化問題について、海外含めて事例研究し、材質の観点および発生要因の観点から分析を行ないます。  具体的には、炉心シュラウド、圧力容器貫通管、圧力容器上蓋の3部位に関して、原発ごとの事故・トラブルの詳細とともに、使われている材質情報も集めます。  さらに、腐食や劣化環境に関する情報を収集します。  これらと並行して、材質に関する文献情報、学会情報なども収集します。  これらを総合して分析を行います。

中間報告

中間報告から
 原発の運転年数が増えるに従い、材料劣化の観点から原発の安全性をチェックする必要性が増しているとの認識から研究会を立ち上げました。その具体例として、東京電力の損傷隠し事件以降に原子力安全保安院が進めている「原子力発電設備の健全性等にかんする評価小委員会」の活動およびそこで公表された沸騰水型原発のシュラウドの亀裂と再循環配管の亀裂に関する報告を批判的に検討しながら、問題点を探り出しています。  これまで4回の会合をもった。メンバーにはオブザーバーも加わり、議論にふくらみがでています。また、メンバー間でのメーリングリストを立ち上げ、緊密な情報とその共有を図っています。  これまでに検討した内容は、 1)万全な応力腐食対策とされた改良材料のSUS316ステンレス材に応力腐食割れ(SCC)が多数発見されたことに関して、改めて、応力腐食割れの発生メカニズムと材料改善の歴史を見ながら、SCCは3つの要因(残留応力、材質、腐食環境)が重なって起きると広く受け止められている論理の誤りを確認しました。  SCCは避けられないし、電力各社はさまざまな対策を試行錯誤している状況であるが、その上で、知見の共有ができていない体制の問題も確認しました。 2)応力腐食割れの長さ深さなどの計測技術はいくつかあるが、その精度については未だ十分ではないことの確認をしました。  今後は上記2点をさらにつめながら、導入されようとしている健全性評価制度について、批判的検討を進めたい。

結果・成果

完了報告から
1)応力腐食割れ発生のメカニズム解明の現状について、SUS304材では鋭敏化によるひび割れ発生のメカニズム解明がおおむね出来ていることがわかりました。しかし、SUS304L材、SUS316L材では、加工層が関与していることは現象的に分かってきているが、ひび割れ発生メカニズムの解明は出来ていないことがわかりました。 2)応力腐食割れの安全性評価の問題点について、応力測定の精度、有限要素法による数値計算による応力解析の信頼性、超音波探傷検査の検出精度などに、それぞれ問題点があることが分かりました。 3)応力腐食割れ進展予測の問題点について、進展予測速度式の信頼性に疑問があることが分かったが、同時に、果たして進展予測が可能なのか深い疑問が出てきました。これは、式の元となるデータの信頼性・精度に疑問があること、測定のバラツキへの考慮が行われていないことからくること、そして、いまだ把握されていない因子の存在が予想されることなどによることが分かりました。 4)ニッケル基合金の応力腐食割れについて、実際に起きている3つの事例を検討しました。A)アメリカサウステキサス原発での圧力容器底部の計装用貫通管の溶接部に応力腐食割れが見つかった件では、ひび割れた既存の管を残したまま、溶接方法を変更して部分的補修のみに終わっているが、ひび割れ発生メカニズムは解明されていない、B)敦賀2号炉の加圧器逃し弁へと通じる配管の溶接部にひび割れが見つかったが、製造時に生じた溶接ミスを手直ししたことが、応力の増大につながり、ひび割れが起きたと見られている、C)女川1号炉の圧力容器炉心スプレイノズルの溶接部にひび割れが見つかり交換したが、これは事故隠しの疑いが強い、などが分かりました。

その他/備考

対外的な発表実績、今後の展望
1)上澤千尋:原子炉および核燃料施設の事故・故障、『原子力資料情報室通信』第348号、2003年6月 2)上澤千尋:シュラウドと再循環系配管の交換にともなう労働者被曝、『原子力資料情報室通信』第349号、2003年7月 3)上澤千尋:米国サウステキサス原発、原子炉容器の底に穴があいた?!『原子力資料情報室通信』第351号、2003年9月 4)井野博満:原子炉材料の安全性への疑問、原発シュラウド・再循環系配管ステンレス鋼のひび割れ問題、『原子力資料情報室通信』第354号、2003年12月 5)上澤千尋:敦賀2号炉「手直し溶接」で発生した加圧器と配管のつなぎ目のひび割れ、『原子力資料情報室通信』第354号、2003年12月 6)井野博満:原子炉材料の安全性への疑問:原発シュラウド・再循環系配管ステンレス鋼のひび割れ問題、『金属』Vol.73 No,.11 pp.62-72(2003)  つい最近(5月初旬)も、関西電力の大飯原発3号炉で圧力容器の上蓋を貫通している管にひび割れが起きているらしいことが明らかになりました。また、浜岡1号炉ではシュラウドの脚の原子炉への付け根部分にもひび割れが見つかるなど、新しい問題が次々に起きています。これらの事故に関する情報収集と分析も、並行して進めていきます。  さらに、前述の応力腐食割れの進展予測についても、曖昧な科学的根拠の上に使われていることがわかったが、「ひび割れがあっても原発は大丈夫」という「維持基準」の基本が揺らぎました。さらに徹底した分析と批判を進めます。研究課題の中心にすえていきます。  原子力学会のシンポジウムに参加したり、上記の『金属』の論文をきっかけに、原子炉メーカーや電力会社の研究者らと議論する機会がありました。同じ事故、現象、データを見ていても、私たちとの間でその解釈の差が非常に大きかったです。推進側が都合のよいデータを都合よく使うことが見えてきたので、このような姿勢に対しても時期を違えずに批判していきます。

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