高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2005年度実施分)


グループ名:長島の自然を守る会
代表者氏名:高島 美登里さん
研究テーマ:上関原発計画予定地の自然環境・生態系調査及び
詳細調査が環境に与えるダメージの科学的検証
 助成金額:120万円

研究の概要:2004年12月の助成申込書から
研究の成果:2006年4月の完了報告から

<参考>
助成先のウェブサイト:http://www2.ocn.ne.jp/~haguman/nagasima.htm
これまでの助成研究:2002年度実施分2004年度実施分
 その後の助成研究:2006年度実施分2007年度実施分
2008年度実施分

研究の概要 : 2004年12月の助成申込書から

1.詳細調査のダメージの検証

2005年度は、詳細調査の開始という、私たちにとっては、まことに残念な展開の中で、これまでの活動と質的に大きな変化があった。従来は、長島の生態系の貴重さを前面に出し、その保全要求の中で原発計画にストップをかけることに精力を集中してきた。今回は、詳細調査によるダメージの検証という作業である。

2005年4月13日に陸域ボーリング、6月25日に海域ボーリング調査が開始され、7月には早くも南部海岸で汚泥の堆積、8〜9月にはカサシャミセンやカメノテ・ケガキの死殻の急増を確認した。10月には、潜水調査により、海藻への浮泥堆積や砂質変化を確認した。 これらの環境変化の原因追及の過程で、2005年9月9日、事業者が6ヶ月にわたり、陸域ボーリング濁水を垂れ流していた事実を告発した。また、05年10月15日には、海域ボーリングでの漏水防止コンクリートのひび割れを摘発した。これらの事実を以って、中国電力・山口県・環境省・資源エネルギー庁などに申し入れ、責任追及をした。

その結果、@陸域ボーリングについては、2ヶ月半、工事を中断させ、海域ボーリングについても、事業者が海中監視カメラを設置せざるをえない結果となり、06年1月29日の漏水発表の引き金になったと言える。また、海藻への浮泥堆積やカサシャミセン・カメノテ・ケガキの死殻急増など、私たちが指摘している海岸部の異変について、現段階で事業者も県も事実を認めていないが、事業者は独自調査を開始した。今後、科学的な調査結果の応酬の中でのたたかいとなる。

2.希少生物の新たな確認による保全追及

一方で国の天然記念物であるカラスバトの鳴き声を会員が確認し、事業者に追加調査を余儀なくさせ、現在、カラスバトの通年調査を行っている。また、ミミズハゼや瀬戸内海で2箇所目の確認である海藻のスギモク確認など、これから事業者や行政に新たな保全要求をするデータも得られた。事業者が毎年、調査を実施しているヤシマイシン近似種についても、06年4〜5月調査で卵塊の増加を確認し、田ノ浦が安定した繁殖地であることが証明された。

3.共有地裁判や神社地裁判での入り会い実態証明

一審の山口地裁岩国支部で入会権が認められた炉心部分を含む四代地区共有地につき広島高裁で第2審が争われた。中電側は、「入り会いの実態がなかった。」ことを証言や愛媛大学の江崎教授の報告によって立証しようとした。弁護団と生態学会の野間直彦さん、安渓遊地さんの指導のもと、会員が参加して行った植生調査の結果が全面的に認められ、「入り会い実態はあった。」とされた。しかし、利用しなくなって30年以上経過したものについては、地役権が時効消滅するという、これまで前例のない理由で裁判は敗訴し、現在、最高裁に上告している。

一方、神社地裁判でも、共有地裁判での入り会い実態証明という部分的勝利を踏まえ、氏子の入会権=所有権という主張をより一層、堅固なものにするため、植生調査を実施中である。

4.スナメリツアーの定着や里山利用の試行

一方、長島の自然に親しんでもらうためのスナメリツアーが定着し、毎回20〜30人の参加者が訪れる。特に、会員以外の人たちが多く、運動のすそ野を拡げる大きな力になっている。また、里山利用の試行として、ハゼの実を採集し、ロウソク作りの再生に着手した。

5.ビデオ「瀬戸内の原風景 長島〜長島の自然を守る〜」やパネル写真の完成

1999年の会結成から、7年間で蓄積された調査の成果を、漸くビデオ「瀬戸内の原風景 長島〜長島の自然を守る〜」に集大成することができた。‘06年6月25日広島を皮切りに、山口県内はもとより、愛媛・東京・神戸など全国で上映する計画である。上関原発問題と長島の自然環境・生態系の貴重さを広くアピールする手段として活用したい。

6.地元反対運動との連携

地元祝島を中心とする反対運動は漁船や陸上封鎖などの実力阻止行動などが中心となるが、体力的・財政的な制約の中で、短期決戦とならざるを得ない。私たちの運動が、側面からの援護として、一翼を担いつつある。

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研究の成果:2006年4月の完了報告から

◆  調査研究の概要 PDF 36KB ◆  会計報告 PDF 7KB




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