高木仁三郎市民科学基金 助成研究の概要 (2007-08年度実施分)



グループ名:原発老朽化問題研究会
代表者氏名:湯浅 欽史さん
研究テーマ:地震動を考慮に入れた原発老朽化の検討
 助成金額:70万円

研究の概要:2007年12月の助成申込書から
 途中経過:2008年 9月の中間報告から
<参考>
これまでの助成研究:2006年度実施分
関連する助成研究:2003年度実施分2004年度実施分

研究の概要 : 2007年12月の助成申込書から

基本的には、助成を受けた06年度の活動とそれを引き継いだ07年度の活動を基盤とするものである。2007年7月16日の中越沖地震の発生によって柏崎刈羽原子力発電所が設計を大幅に上回る地震動を受け、様々な障害に見舞われた。それによって原発老朽化の課題は、新たな局面を迎えた。

運転開始から30年を経た原発に対しては、10年ごとに実施されている定期安全レビューにあわせて高経年化に係わる技術評価とそれに基づく長期保全計画を策定することが事業者に義務付けられている。現在までに14炉の原発の高経年化技術評価報告書が国に対して提出されている。その批判的検討の作業にとって、地震時の原発の挙動に注目することが必要になっている。

当研究会は06年度に、炉内構造材料ステンレスの応力腐食割れ(SCC)、再循環系配管のひび割れ、圧力容器の加圧熱衝撃(PTS)、炉心材料の中性子照射脆化などの諸課題を掘り下げてきた。さらに、各原子炉が認可時に準拠した技術基準を総合的に明らかにするべく、データベースの枠組みとなるフォーマットを作成した。このフォーマットに内容を書き込む作業を進めるに当って、原子力安全委員会が1981年に決定した「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」以前に申請・認可された原発の問題点、さらに2006年10月に改定された新指針自体の問題点を明らかにする必要にも迫られている。


このページの先頭に戻る

 途中経過:2008年9月の中間報告から

2007年7月16日の新潟県中越沖地震によって柏崎刈羽原発が蒙った損傷の状況についての技術的検討は、東京電力から原子力安全・保安院に提出された資料に基づいて、共同研究者全員が関る「柏崎刈羽の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」で取り組まれている。

その他の原発で発生した各種トラブルについては、老朽化の視点から検討している。高経年化に係る技術評価報告書としては、07年7月に一部変更された伊方1号、保安院で3月24日承認された福島第一4号に記載されているUCC(アンダークラッドクラッキング)に注目している。また、大飯3号のAループ出口管台(ノズル)溶接部のひび割れの経過は重大である。定検中に応力緩和工事を実施するための検査で3月初旬に発見され、4/22研削が開始されたが容易に傷が消えず、工事計画認可記載の板厚70mmを変更する再三の手続きを経て、8月末には深さ約21mmまで研削し、その部分の板厚は53.6mmとなった。ニッケル低合金製管台とステンレス配管をつなぐセーフエンドの交換は技術的に困難で、補修方法が注目される。なお、カトリーナやグスタフなど、合州国ハリケーンの自然災害による原発障害も文献的に調べた。

このページの先頭に戻る


>> 高木基金のトップページへ
>> 第7回助成の一覧へ