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「卒論でテーマにしたアスベスト問題に、
            今も取り組んでいます。」

  澤田 慎一郎さん(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 事務局員)

10年前、大学4年生の時に、高木基金の助成を受けてアスベスト問題の研究に取り組み、現在は、アスベスト疾患の患者・家族の支援団体で活動を続けている澤田慎一郎さんにお話しを伺いました。
(インタビュー実施日:2018年11月/聞き手:高木基金事務局長 菅波 完)



― 澤田さんは、現在は仕事として、アスベスト問題に関わっている訳ですね。

澤田 正式には全国労働安全衛生センターの職員ですが、そこから出向するかたちで、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の事務局を務めています。仕事の内容としては、被害者の健康相談、労災手続きのサポートや、被害者・家族相互が支え合う交流の場をつくることなどが中心です。アスベスト問題に関する国家賠償訴訟の支援なども行っています。2018年のノーベル医学生理学賞に関連して話題になっているオプジーボの中皮腫への適用についても、学会と連携して、厚労省に要請してきました。

― どのようなきっかけでアスベスト問題に関わりはじめたのですか?

澤田 最初から強い関心を持っていたわけではないのですが、私が大学に入ったのが2005年で、尼崎市の旧クボタの工場周辺で多数の中皮腫患者がみつかり、その原因がクボタの工場で長年取り扱っていたアスベストであることが判明した、いわゆる「クボタショック」の年だったので、その頃から、問題として認識していました。
 もともと高校時代は東京の高校で野球ばかりやっていて、京都精華大学で環境社会学を専攻することになったのも、なりゆきのようなものだったのですが、環境社会学を学ぶ中で、六ヶ所村に行ったり、宮崎県土呂久のヒ素汚染の現場を訪ねたりして、社会問題や公害問題への関心が深まりました。
 卒論のテーマを考える中で、大阪・泉南地域のアスベスト被害問題について、元労働者などへの聞き取りを中心に調査することにしました。

― 聞き取りの相手先などは、誰かに紹介してもらったのですか?

澤田 澤田 いいえ、普通に新聞記事に出ている団体の電話番号を調べて、電話をかけて、といったかたちで、自分で調べていきました。

― その卒論研究で高木基金に応募して助成が決まったのですが、助成金額は10万円でした。

澤田 京都から泉南に行くのは、それほど遠くはありませんが、やはり交通費もかかります。高木基金の助成金があったおかげで、島根県隠岐島への調査に同行して、被害者の方への聞き取りを行い、石綿健康管理手帳の申請手続きや、加害企業との補償交渉の様子を学ぶこともできました。私がお世話になった大阪じん肺アスベスト弁護団(現・大阪アスベスト弁護団)は、とてもオープンな雰囲気で、私のような学生も快く受け入れてくださいました。会議の後には食事に連れて行ってもらったりして、とても楽しかった思い出があります。
 忘れられないのは、初めてアスベスト問題の裁判を傍聴に行ったときのことですが、自分自身、裁判所に行くのも初めてで、状況がよく分からなかったのですが、患者の家族の方が、とても親切にしてくださったことを今でも覚えています。その様なかたちでたくさんの人とのつながりができたのが大きな財産になりました。

― 学生時代の澤田さんがこの研究に関わって、驚いたこと、印象に残ったことはどんなことですか。

澤田 すべてですね(笑)。本当に驚くことばかりでしたが、アスベストの被害者の方の暮らしや労働環境の過酷さが、自分が生きている時代と、同じ時代のものとは思えないような印象を受けました。泉南地域では、在日韓国・朝鮮人の方が石綿工場に関わっていたという問題もあり、自分自身は、高校まで、その様な問題もほとんど知らなかったので、本当に学ぶことばかりでした。

― 澤田さんが、高木基金に提出した報告書には、「今後も肩書が何度か変わることがあるかもしれないが、泉南地域のアスベスト問題にさまざまな形で関与していきたい」と書かれていました。まさに、その通りになっていますね。

澤田 当時の私は、研究をしていたのか運動に参加していたのか、どちらかわからないのですが、就職活動もせず、大学院に進んで研究を続けようかと漠然と思っていたところに、この問題で関係のあった労働組合の方からお誘いをいただきました。自分としては、泉南の問題に関わっていけるならいいと思い、仕事として続けることになりました。
 自分の思いとして、卒論を書くためだけに研究をするというような関わり方はしたくないと思っていました。それは、アイリーン・美緒子・スミスさんと水俣でご一緒したときに、患者の方からすごく信頼されながら関わっている姿に触れたことや、同世代の若い研究者で、水俣の問題にしっかり関わっている人などと交流したりしたことを通じて、問題への関わり方として、すごく刺激を受けました。その気持ちは今も変わっていないと思います。

― ありがとうございました。大学時代の研究テーマをずっと追い続けて、仕事にしているというのはとても意義のあることだと思います。今後も活躍を期待しています。


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