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在沖米海兵隊のグアム移転がグアムと沖縄に与える影響の研究



グループ名 ピープルズ・プラン研究所 2009年度完了報告[pdf18kb]
2009年度完了報告[pdf18kb]
代表者氏名 山口 響 さん
URL
助成金額 30万円

グアムの主な軍事施設

実弾射撃場として接収される可能性のある土地から海を眺める(写真はいずれも山口が2010 年2 月に撮影)

「ササジャン谷を守れ」と訴えるステッカーを車に貼る

造成が進む新廃棄物処理場

研究の概要

2008年12月の助成申込書から
 米軍の世界的再編に関連して、日米両政府は「再編実施のための日米のロードマップ」を2006年5月に発表し、その中で、「沖縄の負担を軽減する」との名目の下、在沖縄米海兵隊をグアムに移転し、そのための支出を日本も負担することを決めた。グアムは太平洋地域における米軍再編の要と位置づけられており、米海軍・空軍の再編強化も進行している。  主流の報道では、もっぱら経済的利益の視点から、この再編計画が現地グアムでおおむね好意的に受け止められていると盛んに報じている。しかし、実際のところ、軍事強化のプロセスが住民生活や自然環境などに及ぼす悪影響は明らかにされていない。  そこで、本調査では、第一に、グアムの軍事再編が現地の住民生活や自然環境、先住民族チャモロの社会的・文化的権利に対してどのような影響を与えているのか(与えることになるのか)を明らかにすることを目的とする。  第二に、日本による財政出動が、グアムの軍事再編において現実にどのような機能を果たすことになるのかを明らかにする。  第三に、グアムへの海兵隊移転が「沖縄の負担軽減」になるという日米両政府の主張が本当に正しいものかどうか検討を加える。  グアムの軍事再編計画については2014年完了が目されている。日本の市民や納税者として、移転の影響と「負担軽減」の実態をあくまで実証的に明らかにし、計画の是非をめぐる議論を広く起こしていくことが急務である。 【 この助成先は、2009年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2009年度の助成事例 】

中間報告

2009年10月の中間報告から
 予算の関係から現地調査を1度しか行えないため、年度の前半においては、現地新聞『Marianas Variety』などの文献を中心にした調査を行い、その成果を「海兵隊グアム移転――誰のための負担軽減なのか(1)」『季刊ピープルズ・プラン』47号にまとめた(山口響の単著)。この論文では、第一に、今年5月に発効した「海兵隊グアム移転に関する日米協定」の国会審議を検討することを通じて、グアム移転への日本の財政支出は、「沖縄の負担軽減」というよりも、グアムの米軍増強にもっぱら資するものであることを明らかにした。第二に、現地グアムにおいては、米軍増強を支えるインフラの不足、資金不足、グアムの軍事機能上の不安、島民の懸念などの理由から、グアム移転計画には大幅な遅れが生じていると結論づけた。  なお、同誌では今後も連載を続ける予定である(すべての論文はピープルズ・プラン研究所のウェブで公開される)。  今年6月には、沖縄住民との交流を持つべく来沖・来日したリサ・ナティビダードさん(グアムの先住民族団体「チャモロ・ネーション」)と面会して、新聞等ではうかがいしれない現地の情勢について話を聞くことができた。グアムのさまざまな主体が海兵隊移転計画に対して単純な「賛成派」「反対派」に分かれているのではなく、多様な立場をとりつつ、それぞれが微妙な関係性に立っていることがよく了解できた。

結果・成果

2010年5月の完了報告から
 2005年に発表された沖縄からグアムへの8000人規模の海兵隊移転計画に対する懸念の声は、当初現地であまり聞かれることがなかった。しかし、2009年11月に公表された環境アセス素案によって計画の実態が少しずつ見えてきたことによって、現地社会は急速に移転反対論に傾きつつある。  私たち調査者は、まず文献調査によって海兵隊移転計画の論点を洗い出した後、2010年2月の現地調査で聞き取りを多数行うことによって、現地住民の声を把握することに努めた。そこで明らかにされたことは、今回の海兵隊移転計画について、土地問題や環境破壊、公共サービスの不足などに対する現地の懸念がアメリカ・日本両政府によって無視されているという一時的な現象だけではなく、1898年以降のアメリカによるグアム占領・植民地化という歴史的な構造であり、それへの現地住民らの憤懣であった。重要なことは、日本政府が、海兵隊移転への予算をつけてこれを積極的に推進することによって、この歴史的な構造の継続に手を貸しているということである。  なお、成果については、これまでも、『季刊ピープルズ・プラン』の連載や各種の発表会などを通じて出してきているが、今後はやや長めの報告書を日・英両方で作成する予定である。

その他/備考


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