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大気中揮発性有機化合物簡易分析法の検討



グループ名 化学物質による大気汚染を考える会 VOC総合研究部会 2007年度完了報告[pdf36kb]
代表者氏名 森上 展安 さん
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助成金額 60万円

研究の概要

2006年12月の助成申込書から
 この頃、揮発性有機化合物群(VOCs)による大気汚染が世界的に急増して、かなり一般的な地域で、従来の自動車排気ガス汚染を上回っているとも言われている。しかし、大気汚染中のVOCsは、極めて多種類の化合物が混在し、また、各化合物の濃度はごく薄いので、質量分析器を検出器とした高価で、専門的訓練を受けたものしか使えないガスクロマトグラフ・質量分析器を使わなければ全体像が見られなかった。幸いなことに、専門訓練なしでも再現性あるクロマトグラフが描ける「携帯型VOCモニター」が最近開発され、各所で、色々な発生源からのVOC汚染状況を測定し始めようとしている。  この研究では、各所でその測定器などを用いて測定したクロマトグラフから、検出されたピークのリテンションタイムとピーク強度比を、試料空気の場所や時間による特質ごとにデータバンク化し、クロマトに表された物質汚染の各特質、可能な限りは物質名をも知り、クロマトグラフパターンから、大気汚染全体像を評価する基準を作りたい。  また、多数が同時に調査でき、市民が使いやすいよう、吸着剤でVOCを採取した後に分析する方法を実験検討する。  各地の全体的汚染状況の評価と、発生源ならびに伝播の様子を把握して、適確な大気汚染対策実施を可能とすることで、アレルギー、癌、シックハウスなどの化学物質蔓延による健康悪影響防止を目的とする。

中間報告

2007年9月の中間報告から
A.いろいろな地点で分析実施:土浦地区、つくば地区、所沢地区で、携帯型VOCモニターで、1時間おきに1分間ずつ空気試料を採取し、連続的に約4日間・99時間のあいだ、自動分析記録した。 各測定地域から送られた全地域の全記録データを、次の4通りの方法で解読し、記録し直している。 1.専用ソフト(1)でトルエン(=メチルベンゼン)、エチルベンゼン、キシレン(=ジメチルベンゼン)、スチレン(=ビニルベンゼン)の4種とそれ以外のVOCおよび全VOCの濃度を読み取り、測定日時や備考と合わせて一覧表に収め、それらの経時的変動を積上げ棒グラフの形で表した。 2. 専用ソフト(2)で代表的測定時のクロマトグラフの概観を描いた。 3.専用ソフト(3)で分子量約50〜150の範囲のクロマトピーク位置とピーク積分強度をやや精密に解析し、幹線道路近くで得られたクロマトと、文献から知りえた自動車排気ガス汚染都市大気のクロマトおよび4種の標準ガスを用いたこの測定器のクロマトとの照合を行って、各地の汚染物質の特徴を検討した。 4.専用ソフト(1)で1列の縦に連続記録された測定データをエクセルで4列の測定時間ごとに変換・並べ換えし、やや精密な検出器による分子量約50〜150のものと、その5倍の保持時間まで見られる概観検出器のものに分けて、各地・各時間の汚染物質と濃度の推移を検討している。  方法1.の棒グラフにするデータ整理はたやすく、解読も明快であるが、VOC汚染の有害性の評価にはすぐには繋がらない。方法2.と方法3.は難しくはないが結果としては中途段階であり、方法4.が最終的な研究目標であり興味深い様子も見えてはいるが、市民のみの研究手段の限界もあり、また時間も要するので苦戦している。  室内空気は時間による変動がたまにしかなかったが、室外空気の時間的変動は著しく、日によってその時間変動の様子もうって変わり、測定場所による違いも甚だしいことが分かった。幹線道路から離れた住宅地(土浦乙戸団地)や廃棄物処理場が多い地域(所沢周辺各地)では、自動車排気ガス成分の割合はごくわずかで無視できるほどであった。幹線道路沿いでさえ、自動車排気ガス主成分でもある標準4物質以外の割合が半分を超え、また、測定地点によって種類の異なる汚染物質が少なくないようであり、今再確認中である。  方法4.方法3.との補助データに、発生源として明らかな新しいマットレス、健康器具のシート、木材ペレット、デスクトップパソコン、猫および人の尿、酢酸アミル、クロロホルム、プロピルアルコール、などのクロマトグラフも収集した。 B.吸着法の検討:信頼できる品質の活性炭を10kgを入手し、洗浄・赤熱で清浄にし、広口ガラス瓶に10g入れて、VOCモニター測定と平行して1週間静置するパッシブ法でサンプリングした。150度の加熱で収着VOCが脱着することが確かめられた。脱着VOCサンプルをGC-MS分析器による定性分析で物質名を確かめようとしたが、水分の混入が多くてVOCを読み取れなかった。このVOCモニターではどうなるのか、まだ確かめていない。 C.研修:各現場で測定機を設定・運転し、分析記録データを収録できるように、各地の測定希望者に研修を行った。また、VOC分析の基礎知識およびVOC規制と空気汚染の実態の食い違い等について学習会を行った。

結果・成果

2008年4月の完了報告から
 啓蒙活動と実験方法の研修を行いながら、まだ例のない方法での揮発性有機化合物(VOC)空気汚染測定調査研究をスタートさせた。参加者は閉じられた会員ではなく、必要性を感じて測定を希望している不特定の市民と、指導的協力を仰ぐ協力研究者で、それぞれの地域で外気と室内空気の連続測定が実施された。特別な汚染問題が無い幹線道路沿いの大気を標準として、他の地域のVOC種類と濃度を比較検討した。  室内空気は建物ごとに異なっていたが、公共建物でも民家でも、シックハウスの規制値を上回るものも少なくなかった。普通は、開放換気することで汚染濃度は問題なく低減された。しかしもっと問題なのは、外気である。  外気は汚染物質合計濃度が20ないし2000μg/立方メートルの範囲にあって、シックハウスガイドラインの400μg/立方メートルを超えることが珍しくなかった。それぞれの地域での時間と気象による変動も著しく、クロマトに示された物質群は地域により特徴的に異なった。問題が無い地域の幹線道路沿い以外では、自動車排気ガス成分(トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ベンゼン)やスチレン、ホルムアルデヒドとは異なる物質群が主であった。特に日中に汚染が増加した場合には、住民が体調不良を自覚していて、汚染源が近隣の建築や野焼きなどと認識できたことが多い。しかし、ある例では、急激な汚染が3.5km離れた地域に常にある特徴的なものと一致し、それが上空で濃縮され高濃度になって降下したと推定されたこともある。  まだ検出物質の名称を特定する段階には至らないが、しかし、現在の諸規制物質とは異なる物質群が頻繁に見出されることから、健康保持の対策としては、規制された特定物質の精密な測定よりも、存在する物質群全体と各地点で野は沿道の様子を調べる方が有効と思われた。

その他/備考


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