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カンボジアにおけるジェンダーと開発:都市と農村におけるジェンダーの変移と女性のエンパワーメント



グループ名 2007年度完了報告[pdf28kb]
代表者氏名 日和佐 綾子 さん
URL
助成金額 30万円

研究の概要

2006年12月の助成申込書から
 この調査は、開発における「ジェンダーと開発(GAD)」という概念が、男女関係をどのように影響しているかを考察する。  それは、欧米社会で生まれたGADという開発アプローチが、異なったジェンダー概念をもつ発展途上国にどのように受け入れられているかを、実際に開発の影響を直接受けている人々とその政府の視点から理解しようという試みである。  本調査地はカンボジア、そして焦点は都市と農村で開発に参加している人々である。  カンボジアにおけるジェンダー概念は階層的なクメール社会と文化的な理想を満たすことによって位置づけられる女性の立場が特徴である。  そうとはいっても過去20年の間に大きな経済・社会的変動を経験し、男女の役割・立場は変容してきている。  男女間格差、女性を取り巻く社会問題は顕著であり、また都市と農村、富裕層と貧困層の格差は大きい。  男女の平等、女性の社会進出、ジェンダー主流化は政府の優先課題であり、先進国の支援を受けてきた。  都市と農村でジェンダーに配慮した開発プロジェクトに関わっているコミュニティを調査地として選定し、各当地で2ヶ月間程の参与観察をすることによって情報収集する計画である。  開発プロジェクトを通じてコミュニティがどう変化してきたか、その中でGADの概念がどうジェンダーに影響してきたかを検討する。  研究成果は女性・コミュニティ支援をする現場の実務者へ提供され、現状理解に活かされるよう計画されている。

中間報告

2007年9月の中間報告から
 私の調査研究は、カンボジアにおける女性のエンパワメントについて、農村開発の中で活躍する女性に焦点をあてています。  彼女たちに可能だったエンパワメントがどのように起こったのか、またその成果の波及効果はどうかという点を当時者の観点から研究することを目的としています。  5月中旬にカンボジアの首都であるプノンペン市に到着。  文献調査やクメール語(カンボジア語)の研修を受けながら農村調査の準備をしました。  6月中旬より農村調査を開始。  プノンペン市から車で約2時間の4つの村で活動しています。  研究対象の農家にお世話になりながら参与観察、聞き取り調査を実施してきました。  主な活動は、農村組合、女性組合の月例ミーティングに参加、私が焦点をあてている女性リーダーが参加する活動には同伴し活動を観察、女性組合のメンバーとワークショップを運営、個人のインタビュー実施と調査方法は多岐にわたります。  農村に入ってから3か月が経ち、理解が深まってきたところでこれから調査研究としてどうまとめあげていくか検討中です。  これまで多くの関係者の方々の協力を得て、実りのある調査研究を実施することができました。  あと1か月で現地での調査を終えます。

結果・成果

2008年4月の完了報告から
 この調査研究は、カンボジアにおける女性のエンパワーメントについて、タケオ州における小規模農民生活向上プロジェクトの中で活躍する女性に焦点をあて、彼女たちに可能だったエンパワーメントがどのように起こったのか、またその成果の波及効果はどうかという点をエスノグラフィックの手法を用いて、当時者の観点から研究することを目的としている。  カンボジア、特に農村社会では、現在でも伝統習慣のなかで継がれてきた男女の行動規範が、人々の日常生活のなかに浸透している。  その行動規範やイデオロギーは変化しながらもカンボジア人としての主体性を構成している。  カンボジアで女性のエンパワーメントを考察するにあたり、カンボジアの文脈の中でジェンダー観とジェンダーの関係性を理解し、女性にとってエンパワーするということがどういう状態を示すのか議論する必要がある。  この調査は、活発に活躍する女性リーダーと女性組合の取り組みをケーススタディとして、彼らが女性組合の活動が始まる以前と現在を比べてどのような変化があったか、またそれに伴うジェンダー観の移り変わりを分析した。  調査は5月中旬に開始。  カンボジアの首都であるプノンペン市にて、文献調査やクメール語(カンボジア語)の研修を受けながら農村調査の準備をし、6月中旬より農村調査を開始。  プノンペン市から車で約2時間の4つの村で活動を開始した。  研究対象の農家でホームステイをしながら参与観察、聞き取り調査を実施。  主な活動は、農村組合・女性組合の月例ミーティングへの参加、研究の焦点をあてている女性リーダーが参加する活動への同伴・活動観察、女性組合のメンバーを対象にしたワークショップ実施、関係者・女性組合のメンバー・メンバーの夫等との個人インタビュー実施であった。  以上のような手法で得られた情報はフィールドノート、音声、写真等の形式で記録。  分析は、インタビューやスピーチ、発言等に含まれる当事者の言説を丁寧に翻訳し、語りの中に出てきた考え方や表現の変化を抽出し、変化の過程とその要因を考察した。  組合活動のセービング(※)、農業技術指導(稲作、家庭菜園、家畜の飼育等)などを通じて、家計を担う女性の主婦としての役割が向上し、家計にいっそう貢献するようになった。  その結果として、1)女性の活動範囲が地域社会へ広がった、2)情報へのアクセスが高まった、3)女性たちの自信が高まった、4)男性側の女性活動に対する支持が得られた、等々の変化が抽出された。  女性たちが認識する変化は個人によって異なるが、男女両方が女性組合の活動の有益性にたいして共有認識を持っている。  また、女性の状況を活動以前と現在で比較する質問に対し、男女両方より、伝統的なイデオロギーを比喩的に用いて変化を表現する発言が多々あった。  そのイデオロギーは女性の役割を家庭内にとどめ、女性を見下すような意味合いで以前の状況を比喩し、現在はそうではないのだという説明であった。  エンパワーメントは内面化された抑圧にたいし、女性自身がその抑圧を認識し、挑戦することによって変化をもたらすことに重点をおいているため、このような発言が多くみうけられることは重要な意味合いをもっている。  このように、人々の経験を詳細に研究することによって得られた理解は、これからのコミュニティ開発の参考になる可能性を含んでいる。  この研究を通じて、ジェンダーの観点より議論され分析された人々の経験が文章化されることによって、どのような介入が女性のエンパワーメントを試みるにあたり効果的で有効であるかという仮説が考察された。  外部者の視点や介入によって、関係当事者にとっては認識しがたい変化を論じることは有意義であったといえる。

※セービング  女性組合では、組合員が毎月一定の額を組合内で集団貯金しており、納められたお金は、組合員がお金が必要な時に低金利で貸し付けを受けられる。  金利で得られた利益は組合内に貯められ、最終的には組合員に分配される。

その他/備考


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