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地域における出生児の性比変化と死産、出生に関する調査研究



グループ名
代表者氏名 水野 玲子 さん
URL
助成金額 60万円

研究の概要


 最近、多くの先進諸国で環境ホルモンの影響ではないかとされる男児出生比率の低下を死産との関連も含め人口動態統計などから調査します。 【 この助成先は、2003年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2003年度の助成事例 】

中間報告

中間報告から
 研究テーマに基本的な変更はありませんが、出生児の性比変化の背後にある問題を詳しく探る意味で死産性比の問題に集中しています。男の子の胎児死が増加している現象を、地域レベルで詳細に考察することに後半も主に時間を費やしたいです。  死産問題の調査をしている過程で、偶然、岡山県の人形峠周辺地域の人口動態統計上で気になる問題が浮上してきました。大切なヒトの健康上の問題と思われるので、今回のテーマとはずれますが、並行してさらに考察したいです。 進行状況  全国レベルで男の子の胎児死が増加している現象を、都道府県別に調べる作業に数ヶ月かかりました。厚生省の保管統計で1970年代より今日まで調査した結果、鳥取県が全国で最も死産男女比が増加していることが明らかになりました。その原因として、はじめは中部地域のウラン残土の問題を疑っていたので、その考察と調査に時間がかかりました。しかし、鳥取県は松枯れ防止のための農薬の空中散布が全国1位であり、現段階では、農薬使用量などと県内の地域の死産問題との関連の可能性を疑って、考察をすすめています。  また、茨城県、大阪府について、地域別に調査しています。大阪府については、能勢町の問題は、新生児死亡率などの出生統計にみられる異常と出生性比の関連について考察しました。 今後の予定・課題 ここまでの結果を11月の環境ホルモン学会で発表予定(2件) 1.「都道府県別“死産性比”の推移と鳥取県の事例」 2.「能勢町の出生統計の異常と出生性比」   これは、ダイオキシン汚染で問題となった能勢町の出生統計の異常とそこで見られる出生性比変化などについて報告します。2.については統計学上の問題を同基金の今回の助成者である桑垣さんに協力していただき連名で発表する予定です。 主に胎児死の地域レベルの考察します。 1.について論文にまとめるかどうかは未定です。 その他  死産男女比で、全国で最も値が高かった鳥取県の事例を考察する過程で、人口動態統計上、岡山県、人形峠周辺地域に関して気になる死亡率の問題がでてきたので、その問題を考察してまとめたいです。雑誌などに寄稿できればよいが未定です。

結果・成果

完了報告から
 日本で男の子の胎児の死が1970年代から増加している問題について、人口動態統計より、各都道府別にその実態を調査しました。厚生省の資料室に保存されているそのデータは、未だ分析されたことがなく、調査に長い時間がかかりました。  その結果、最近の環境ホルモン問題で浮上している出生児の男児減少傾向の裏で、男の子の胎児の死が全国レベルで広がっていることがわかりました。その中でも、とくに鳥取県が全国で最も胎児死の男女比増加が著しく、その原因の究明が、少なからず全国レベルのこの問題の考察に役立つと考えました。関連する可能性がある環境要因を探っていたときに、偶然、鳥取県中部のウラン残土問題にぶつかりました。放射線照射によって、動物実験では、精子細胞が打撃うけるときにも卵細胞が抵抗性を示すという研究結果があったので、ヒトの場合にも同様のことが起きている可能性をひとつには考えました。  その後、胎児死の男女比データを鳥取県内で地域別に詳しく調査し直しました。その結果、ウラン残土の放置されている中部地域ではなく、東部地域でとくに死産性比の上昇が顕著であることが明らかになりました。その間、鳥取県の方々にこれに対する意見をたびたび頂戴しました。農薬の空中散布が問題ではないかとのことであり、その可能性を探りました。11月になり、鳥取県東部での男児死産の急激な上昇の原因として、有機リン系殺虫剤のフェニトロチオンが浮かび上がってきました。なぜならば、この物質には最近、動物実験で強い抗男性ホルモン作用が報告されていることが明らかになっているからです。東部地域でこの農薬の水源地への混入事件が誤散布により起きていた新聞報道などが確認されました。また同時に、この地域で際立って男児の死産が上昇したという事実が確認されました。このことによって、環境ホルモン物質に考えられる性特異的作用が影響している可能性がみえてきました。11月の環境ホルモン学会にて、このことを報告するとともに、ホルモン攪乱性のある農薬を、全国レベルで松がれ対策のために空中散布する危険性について書き、その使用中止をもとめるための資料を学会で配布し、かつ電子媒体で署名を集めました。  専門家の集まる学会などとは別に、若い子育て中のお母さん方が読む雑誌にも、「農薬空中散布とこども」という記事を書き、雑誌「環境監視」には、「ホルモン攪乱性が指摘されている有機リン系殺虫剤、フェニトロチオンの空中散布の中止と使用自粛を!」という題で執筆しました。  その後、この問題を、全国レベルでおきている男の子の流産・死産の増加の問題というより大きなレベルで考察する目的でまとめた「なぜ増える男の子の流産・死産―環境ホルモンの性特異的作用は日本の子どもに現れているかー」という題の原稿は、雑誌「科学」で受理していただきながら、未完成です。英文も未発表です。  この抗男性ホルモン作用のあるフェニトロチオンの散布についての環境ホルモン学会での発表は、鳥取県における農薬空中散布反対運動のための資料として、その後使われたと聞いています。また、環境ホルモン学会で発表したもう一件、「能勢町の出生統計の異常と出生児の性比」については、統計処理はこの基金の助成を別件で受けている桑垣さんに協力をえましたが、能勢町では、ゴミの焼却が中止され、ゴミ焼却施設解体の時に、統計上で出生児に異常が現れていたという点で、東京都でゴミ焼却場の解体作業をひかえている地域の市民グループの参考資料として活用されたようです。  この一連の経過の中で、当初、鳥取県の中部にあるウラン残土を男の子の死産のみが増加する原因のひとつの可能性として疑っていたときに、岡山県の人形峠付近にもおなじくウラン残土が放置されているために、両方の地域の公式統計を出来る限り詳しく調査しました。その結果、今回の研究助成のテーマとははずれたが、人形峠のある岡山県の上斉再原村では、70年代後半から、人口動態統計上、ガンなどの死亡率などが目立って高いことに気がつきました。原子力問題については、これまで関わってきたわけでないが、統計上明らかになったこの地域のヒトの健康に関わる問題点は、やはり多くの人に知らせる必要があるのではないかと思い、「人口動態統計からみた人形峠とウラン残土の地」を書きました。近日中に雑誌「技術と人間」に掲載予定です。この原稿をまとめるにあたり、ウラン残土問題に詳しい土井淑平氏、小出裕章氏、また、放射線の人体影響の問題などに詳しい阪南中央病院の村田三郎氏にお世話になりました。この問題については、あくまで問題提起として統計上の数字を指摘することに留めたい。

その他/備考

今後の展望
 助成を申請した研究テーマの「地域における出生児の性比変化と死産に関する調査研究」の中でも、とくに男の子の胎児死増加の問題は、環境ホルモン問題としては今日きわめて大切な問題であり、昨春、シーア・コルボーン氏は、来日講演で、日本でおきている注目すべき現象であると指摘しています。今回、途中からテーマがずれてしまい、この研究はまだ十分ではありません。この件でより説得力のあるデータが足りず、日本語の原稿も中途であり残念です。なんとか英文にまとめて海外に知らせたいです。  また、今年度の調査範囲から、抗男性ホルモン作用のある物質が男の子の胎児死に関連している可能性が示唆されたので、そのような作用を持つ化学物質の使用については、学者の方々に知らせ、署名もお願いしているが、使用中止を求める何らかの行動につなげられればよいと思います。

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