中皮腫サポートキャラバン隊 | ||
鈴木 江郎 さん | ||
https://asbesto.jp/ | ||
100万円 |
アンケート聴取の様子
2018年12月の助成申込書から
アスベストが原因で発症する中皮腫の患者はいまピークを迎えており(年間死亡者1500人超え)、今後も十数年はこの傾向が続くと推測されている。また30歳代〜50歳代の現役世代からの中皮腫の相談が増えている。一方で中皮腫は希少ガンとして治療の開発が遅れ、治療の選択が限られている現状にある。また中皮腫患者は同じ病気の患者と会う機会もなく、精神的にも孤立した状況に置かれている。そんな中、中皮腫の患者どうしがお互いに支え合うピアサポート活動の必要性が高まっている。
また安易に石綿ばく露不明とされる中皮腫患者が増えてきており、ばく露不明とされた中皮腫患者の石綿ばく露について改めて聴き取りし、石綿ばく露の機会を追求していく。
調査手法としては、中皮腫サポートキャラバン隊のメンバーが、中皮腫患者に会いに行き、現在の医療面、主に経済的な生活面、精神的なケアの面で患者の要望や石綿ばく露原因をアンケートやインタビューで明らかにしていく。
一ヶ月で4人程度への調査を予定しており、1年で50人弱の中皮腫患者から調査し、調査結果を集計分析し、医療機関や行政機関や社会一般に問題提起していく。
【 この助成先は、2020年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2020年度の助成事例 】
2019年10月の中間報告から
中皮腫サポートキャラバン隊は、2017年7月に栗田英司(腹膜中皮腫)と右田孝雄(胸膜中皮腫)が出会い、孤立している全国患者と励まし合い、生きる希望につなげる活動として始まりました。
アスベストが原因で発症する中皮腫の患者数は増加の一途をたどり、今後も十数年間、発症者数は高水準で増え続けると推測されています。また相談対応の実感としても30歳代〜50歳代の現役世代からの相談が増えています。
一方で、中皮腫は希少がんとして治療の開発が遅れ、治療の選択が限られている現状にあります。また中皮腫患者は同じ病気の患者と会う機会もなく、精神的にも孤立した状況に置かれているため、中皮腫患者同士がお互いに支え合うピアサポート活動(※)の必要性が高まっています。加えて、どこでアスベストにばく露したのかについて、安易に「不明」とされ、労災保険が適用されない患者が増えてきています。
そこで私たちは以下の4 点の課題について、中皮腫の患者さんにアンケート調査を実施することにしました。
(1)アスベストばく露「不明」とされた場合などの石綿健康被害救済制度と労災保険制度との給付内容の格差
(2)中皮腫の治療内容や患者の療養生活についての情報の圧倒的な不足
(3)治療の選択が限られていること、また治療体制や療養生活の地域格差
(4)医師などの医療従事者とのコミュニケーション
2019年4月から8月まで、私たちは静岡県、富山県、愛知県、新潟県、岡山県、鳥取県、青森県、岩手県、山形県、福島県、東京都、石川県、大阪府、沖縄県にて中皮腫患者の講演会・患者交流会・患者訪問を実施し、その場で本アンケートの趣旨説明を行い、アンケート調査を行いました。
当初のアンケート回答の目標は年間50回答でしたが、本アンケート調査の必要性と重要性が伝わり、4月から8月までで既に60回答が集まりました。また、アンケート結果を集計し、中間とりまとめを行いました。
(※)同じ立場の人への支援。共通の「体験」を持った人同士の支援。
完了報告から
中皮腫の原因は、そのほとんどが石綿(アスベスト)ばく露と言われています。我が国では石綿を大量に輸入・使用したことで、多くの労働者や住民が石綿ばく露しました。潜伏期間を踏まえると、2000年代から2030年代に、中皮腫患者が多く発症する可能性が考えられます。しかし、中皮腫は希少がんとして治療法の選択が限られており、また中皮腫患者は同じ患者と会う機会も少なく、精神的に孤立しやすい状況であり、患者同士が互いに励まし、支え合う“ピアサポート活動”の重要性・必要性が高まっています。
この調査では、以下のように45項目184個の質問を設け、アンケート調査を行いました。具体的には、2019年4月の中皮腫サポートキャラバン隊・静岡講演会&患者交流会を皮切りに、全国25都市で実施した交流会や、中皮腫患者への訪問時にアンケート調査を行いました。
<アンケートの項目>
(1)回答者の性別、年代、居住地、中皮腫の種類と病期、
(2)手術、抗がん剤、放射線治療などの作用や副作用、通院頻度、
(3)医療機関の初診、確定診断の時期、セカンドオピニオンの有無、
(4)就労の状況、収入の変化、労災保険や救済給付の手続きの重要度と満足度、
(5)職歴、石綿ばく露の自覚の有無、
(6)治療段階別の気持ちの変化。
調査の結果、以下のように、特徴的な傾向が確認されました。
1.経済状況の変化と生活の困窮では、世代別で大きく傾向が異なる。
2.医療機関の対応によって、患者が利用する制度が大きく影響される。
本調査の結果は中皮腫サポートキャラバン隊のWEBサイトで発表し、患者同士のピアサポートや今後の療養生活に役立ててもらうとともに、学会発表を行い、中皮腫ガイドライン作成時に反映させるよう訴えました。また行政機関へ制度の改善を要求していきます。2020年度も継続的に調査を行い、本調査で明らかになった現状をより詳細に掘り下げていきます。