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これまでの助成研究・研修

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1)ホルマリン由来の反応生成物に関する調査・研究 2)魚類養殖場周辺の底質調査



グループ名 天草の海からホルマリンをなくす会 完了報告書[pdf569]
完了報告書[pdf569]
完了報告書[pdf569]
代表者氏名 松本 基督 さん
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助成金額 70万円

研究の概要

2003年12月の助成申込書から
 当会は1996年の結成以来、養殖魚へのホルマリン使用について、海域汚染と食品安全性の観点から重大な問題があるとしてその解決のために活動してきました。  私たちの調査やトラフグ養殖場の実態を描いたテレビ番組放映などによって、ホルマリンの無登録販売や不正使用などが判明しましたが、行政や業界は魚体や海水のホルムアルデヒド残留濃度を分析して、濃度が極めて低いか検出されないことをもって「安全」「汚染されていない」と説明してきました。  しかし、ホルマリンは、他の物質と極めて結合しやすく、通常の海水中ではホルマリンは速やかに検出されなくなることが分かっています。  また、ホルマリンが大量に使用され、流されてきた海域では、ホルマリンが検出されなくとも海藻の枯死や貝類の大量死などの異変が起こっていることから、ホルマリンの反応生成物の毒性・特性の解明が求められています。 【 この助成先は、2003年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2003年度の助成事例 】

中間報告

中間報告から
1.魚類養殖場におけるホルマリン使用状況調査:これまで私たちが調査してきた魚類(トラフグ)養殖現場におけるホルマリンの使用実態を捉えたドキュメント番組が2003年4月に放映され、全国的な話題となりました。  その後、薬事法改正によってホルマリン使用が法規制されたこともあってか、本年はこれまでのところホルマリン使用は確認されていません。しかし、水面下で使用が続いているとの情報もあり、さらに観察を続けたい。 2.ホルマリン由来の反応生成物に関する調査・研究:昨年同様、珪藻プランクトンをホルマリンと反応させ、アコヤガイに摂取させてその影響を観察する実験を行ない、より詳細に解析する予定です。実験場所を確保して、11月から開始する予定です。 3.ホルマリン暴露実験:魚類飼育の専門家に依頼して、トラフグへのホルマリン暴露実験を行ない、魚体へのホルマリン残留のみならず脳萎縮や内臓損傷について調べる予定です。ただ、健康なトラフグの入手と実験場所の確保が課題となっています。 4.魚類養殖場周辺の底質調査:十数年前にも大問題となった環境ホルモン作用を持つ猛毒・TBTの使用が依然として魚網に使用されていることが数年前に愛媛県の魚類養殖で判明しました。このため、各地の魚類養殖場イケス下の海底泥を採取してTBT濃度を分析しています。現時点まで特に問題となるような数値は見られてないが、今後魚網洗い場下の海底泥を採取する予定です。 調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項  2003年のトラフグ養殖現場におけるホルマリン騒動をきっかけに長崎県、熊本県などの主力生産県は自県水産物を食品としての安全性をアピールすべく「養殖トラフグ生産履歴審査会」などを設置して、お墨付きを与えています。  しかし、その内容は単にホルマリンの残留検査と生産業者の自主申告による生産履歴をチェックするだけで全く不十分なものです。なぜなら、2003年に長崎県での事例から生産履歴をごまかしたホルマリン使用が明白なトラフグからホルマリン残留が確認されなかったことから、残留がないことが不使用の証明にはならないからです。  ホルマリン使用によって飼育魚の脳の萎縮や内蔵の損傷がおきるとの現場からの報告もあるため、暴露実験によってそのことを検証できるかどうか準備を行なっているが、果たして健康な実験対象魚が入手できるかどうかが問題となっています。  タンパク質などと極めて結びつきやすいホルマリンについてその残留値だけを調べることで安全性を計ることはできないことを示すべく、今後の調査・研究を続けたい。

結果・成果

完了報告から
調査研究・研修の経過 〜2005年3月(複数回) ◎ホルマリン使用状況調査、海藻調査、海底泥採取、聞き取り調査など ◎農水省・消費安全局、国会議員などに養殖漁業適正化のための提言 ◎県立大、熊本保健科学大にてホルマリン実験に関する話し合い 4月12日 ◎海の状況について聞き取り調査(壱岐) 5月18〜20日 ◎FFC研修会参加(広島) 23日 ◎本渡干潟再生講演会参加 6月17日 ◎03年採取分の海底泥分析(TBT) 20日 ◎七つ森書館より「ゆらぐ食」(日本消費者連盟編)出版 「魚類養殖のホルマリン?有害性を裏付けるデータが新たに発覚」 「長崎、166万匹の養殖トラフグ出荷へ」 「養殖水産物 有機認証制度の問題点」 日本消費者連盟の機関紙「消費者リポート」の食に関する記事で過去に書いた上記3本の原稿を掲載 7月1日 ◎清野先生と共に御所浦のトラフグ養殖業者、役場水産課と意見交換 2日 ◎熊本県内で最も魚類養殖が盛んでホルマリン使用量も多かった御所浦町(八代海に浮かぶ離島)にて講演会「沿岸漁業の再生に向けて」の開催。 講師・宇井純、清野聡子という豪華な顔ぶれ 21日 ◎03年旭川医大・吉田先生実験分アコヤガイ切片標本作成依頼 22日 ◎民主党・佐藤謙一郎議員と面会⇒養殖漁業適正化のための提言を行なう 31〜8月1日 ◎第7回有明海・不知火海フォーラムin天草参加 20日 ◎実験施設探し 10月13〜15日 ◎実験器具運搬、実験室整理 20日 ◎民主党・山田正彦、松野信夫議員と面会⇒養殖漁業適正化の為の提言を行なう 21日 ◎農水省・消費安全局魚類安全室・小嶋規純氏と水産用医薬品使用状況に関する話し合い  10月24日 ◎高木基金市民科学報告会にてホルマリン問題報告 28日 ◎熊大公開講座参加「有明海・八代海の環境特性と再生・維持方策」 11月4日 ◎アコヤガイへい死に関する検討会参加 8日 ◎第2回有明海・八代海干潟等沿岸海域再生検討委員会の傍聴 18日 ◎「ホルマリンに関する研究成果報告会」開催。講師:旭川医科大学吉田貴彦教授  〜ホルマリン反応生成物のアコヤガイに対する免疫毒性〜 12月21日 ◎「熊本県食の安全安心推進条例(仮称)の素案」に対する意見提出 11月22日〜05年1月4日 ◎ホルマリン添加実験 ◎実験分アコヤガイ血リンパ採取〜切片標本作成のための固定 1月13日〜2月24日 ◎ホルマリン減衰実験 3月19〜21日 ◎海底泥サンプル採取〜TBT分析依頼 22日 ◎第4回有明海・八代海干潟等沿岸海域再生検討委員会の傍聴 26日 ◎トラフグ養殖場視察?養殖業者と意見交換 4月1〜2日 ◎「平成17年度日本水産学会大会」参加・発表 5日 日本消費者連盟事務局長・水原博子さん、農水省・消費安全局魚類安全室小嶋規純さんとホルマリン問題に関する話し合い 調査研究・研修の成果 調査研究テーマ: 【1】ホルマリン由来の反応生成物に関する調査・研究 【2】魚類養殖場周辺の底質調査  【1】ホルマリン由来の反応生成物に関する調査・研究について A.ホルマリン反応生成物に関する実験  私達の現地調査、そしてそれを紹介した2003年4月に放映されたドキュメント番組をきっかけにトラフグなどの魚類養殖におけるホルマリンの大量使用がまたもや明らかになりました。  しかし、ホルマリン使用履歴のあるトラフグ等などもその主成分であるホルムアルデヒドの残留調査の結果、数値が低いまたは検出されないということだけを根拠に「安全である」とされ、消費者団体の強い反対を押し切って出荷が認められました。ホルムアルデヒドはタンパク質等と非常に結合しやすいが、結合して出来た反応生成物の毒性や存在の確認さえ行なわれていません。  そこで、昨年に引き続きアコヤガイのエサである植物プランクトン(キートセロス・グラシリス)にホルマリンを添加して結合させた後、余剰ホルマリン成分を取り除いた上で餌料として与え、対照群と比較してその影響を調べました。また、煮沸滅菌海水にキートセロスとホルマリンを入れたもの、ホルマリンだけを入れたもののホルムアルデヒド濃度の減衰を経時的に追跡して、比較しました。  その結果、飼育実験において目視的に実験群は貝肉の衰弱、フンの量が少ないことが観察されました。  顕微鏡所見でも対照群では中腸線の管腔構造が一定の厚さが見られたのに対して、実験群では管腔壁が薄くなり、構造の破壊が見られ、間質部分の浮腫が起こっていました。  減衰実験では煮沸海水にホルマリンだけを入れた場合にはホルムアルデヒド濃度はほとんど減衰せず、キートセロスを入れた場合には経時的に減衰し、7〜8日後にはほぼ消失しました。これはキートセロスとホルマリンが反応して新たにその反応生成物ができたことを示しています。  血リンパを採取して血液の酵素活性を測定する予定であったが、お願いしている方の都合により年度内に結果を出すことはできませんでした。 B.ホルマリンに関する研究成果報告会、学会発表  一連の養殖魚のホルマリン問題について、行政は海水や魚体内のホルムアルデヒドの残留の有無や濃度を検査しただけで、私たちがその重要性・必要性を主張し続けてきたホルマリン反応生成物の毒性や特性に関する公的な調査・研究を行なう気配すらありません。  そこで、アコヤガイ、マウスを用いてホルマリン反応生成物の免疫毒性を調べる実験を行なった旭川医科大学・吉田貴彦教授と共に成果報告会や学会発表を行ない、上記Aの実験結果や免疫毒性に関する実験結果を公表した上で、これまでのホルマリン問題に対する行政の対応が不十分であるとの問題提起を行ないました。 C.養殖場の観察と聞き取り調査  私たちの活動の成果として2003年7月の薬事法改正によりホルマリンなど未承認動物用医薬品が使用禁止(罰則付き)となりました。また、2004年7月には経口投与の寄生虫駆除剤が新薬として承認されました。  熊本県など養殖トラフグの主力生産地は生産履歴審査会を設置してチェックしています。  このように、ホルマリン使用については以前ほど野放し状態ではありません。しかし、ホルマリンの売買規制がなく、監視体制が未整備であり、現在も水面下での使用が心配されます。  そのため、今年度も引き続き魚類養殖場におけるホルマリン使用状況の観察を頻繁に行ないましたが、明らかな使用は確認できませんでした。  しかし、2004年9月の台風後に海の白濁現象やアコヤガイの大量死、海藻の枯死などの異変が熊本県・天草の一部の地区や長崎県・佐世保周辺で発生したことが聞き取り調査で明らかになりました。  このことはいまなお密かにホルマリンが使われている、または海底に沈殿していた以前使われたホルマリンの反応生成物が台風で巻き上げられ、影響を及ぼしたことが推定されます。  なお、国内の養殖業者からは『中国では使い放題ホルマリンを使って飼育しており、それを活魚のまま輸入して国内で1〜2ヶ月程蓄養して市場に出荷される。ホルマリンを使うと色・つやが良くなり商品価値が上がるので国内だけ使用規制が厳しいのは不公平だ』との声が挙がっており、ノーチェックで入ってくる大量の輸入養殖水産物が大きな問題を孕んでいることが明らかになりました。 【2】魚類養殖場周辺の底質調査について  魚類養殖場では猛毒TBT入り漁網防汚剤の密輸入品が裏流通し、依然として秘密裡に使われている、といわれています。このため、各地の養殖イケス下の底泥を採取し、TBT濃度を分析した。結果は下記の通りです。(図表は完了報告PDFファイルをご覧ください)  環境庁や建設省が実施した環境ホルモン緊急全国一斉調査(1998〜1999年)などによると、底質調査では2年間で242地点中130地点で検出され(検出率54%)、濃度範囲ND(<0.1〜22)〜218ppb、算術平均8.0ppb(NDを0で換算)でした。これに対して、上記No.6〜8の値は極めて高く、現在も魚網にTBT入り防汚剤が使用されていることが窺われます。また、No.10・11は防汚剤中のTBTが直接検出されたものと推定されます。

その他/備考

対外的な発表実績
【議員・行政への政策提言】 1.2004年7月22日:民主党・佐藤謙一郎議員と面会⇒養殖漁業適正化のための提言を行なう 2.2004年10月20日:民主党・山田正彦、松野信夫議員と面会⇒養殖漁業適正化の為の提言を行なう 3.2004年10月21日:農水省・消費安全局魚類安全室・小嶋規純さんと水産用医薬品使用状況に 関する話し合い 4.2004年12月21日:「熊本県食の安全安心推進条例(仮称)の素案」に対する意見提出 5.2005年4月5日:日本消費者連盟事務局長・水原博子さん、農水省・消費安全局魚類安全室・小嶋規純さんとホルマリン問題に関する話し合い 【学会・シンポジウムでの発表実績】 1.2004年10月24日:高木基金市民科学報告会にてホルマリン問題報告 〜魚類養殖におけるホルマリンの使用実態と環境への影響〜 2.2004年11月18日:「ホルマリンに関する研究成果報告会」講師:旭川医科大学吉田貴彦教授 〜ホルマリン反応生成物のアコヤガイに対する免疫毒性〜 3.2004年4月2日:「平成17年度日本水産学会大会」にて発表  口頭発表〜ホルムアルデヒドとの反応生成物が摂食されて誘導される健康障害〜  ポスター発表〜ホルマリン反応生成物による免疫毒性について〜 【雑誌等への寄稿】 1.2004年6月20日:七つ森書館より「ゆらぐ食」(日本消費者連盟編)出版 「魚類養殖のホルマリン?有害性を裏付けるデータが新たに発覚」 「長崎、166万匹の養殖トラフグ出荷へ」 「養殖水産物 有機認証制度の問題点」 日本消費者連盟の機関紙「消費者リポート」の食に関する記事で過去に書いた 上記3本の原稿を掲載 2.2005年1月27日:日本消費者連盟機関紙「消費者リポート」1284号 今後の展望 A.ホルマリン反応生成物に関する調査研究  昨年度と本年度の実験によって、ホルマリンそのものよりもそれとエサを結合させた反応生成物を摂取させた時により大きな影響が現れることが明らかになりました。  また、ホルマリンを大量に使用したトラフグなどの養殖水産物がノーチェックで輸入されていることも聞き取り調査の証言で判明しました。  今後、魚体内からホルマリン自体が検出されなくともその反応生成物を検出する手法や一般海域に浮遊するプランクトンとホルマリンの結合物の採取方法や検出方法について調べることが重要と思われます。 B.TBT入り魚網防汚剤について  環境省によると、「国内においては、14物質のTBT化合物が化学物質審査規制法の対象であり、これらの製造・輸入は行なわれていない。」とされていますが、私たちの調査などで依然として魚類養殖現場で使用されている可能性が高い。  今後さらに調査を進めてより詳細に使用状況を把握したい。

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