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これまでの助成研究・研修

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1)魚類養殖業によるホルマリン使用実態調査 2)海水中に流されたホルマリンの影響評価に関する調査・研究



グループ名 天草の海からホルマリンをなくす会 調査研究の概況[pdf345kb]
調査研究の概況[pdf345kb]
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代表者氏名 松本 基督 さん
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助成金額 100万円

研究の概要

2002年12月の助成申込書から
 近年トラフグやヒラメ等の高価格魚種の生産量が激増していますが、その養殖現場では水産庁通達に違反し、魚病対策・寄生虫駆除の為に劇物ホルマリンが大量に使用され、そのまま海に垂れ流されいます。  生産県からは使用実態はないと報告され、ホルマリンによる水産動植物への影響は十分に明らかにされていないとの理由で、法制化等実効的な対策は全く講じられていません。  この研究では、魚類養殖現場における作業実態や、周辺の海藻の生え具合などの観察、海水・海底泥の分析、海水中におけるホルムアルデヒドの動態解析及び、反応生成物の特性・毒性研究を行なうとともに、調査結果をもとに海域における有害化学物質の使用に関する規制・監視の強化を図るよう関係省庁に働きかけます。 【 この助成先は、2004年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2004年度の助成事例 】

中間報告

中間報告から
1.魚類養殖場におけるホルマリンの使用状況調査:昨年来使用状況を観察してきた長崎県 鷹島町のようすが民放のドキュメント番組で放映され、大きな反響がありました。関係県の対応や関連報道が数多くなされているが、いずれも「食の安全」確保の観点だけしかなく、海藻や水生生物などがどのような影響を受けてきたかについての調査を行なうという視点が全くありません。  熊本県御所浦町ではトラフグ養殖生産量と共にホルマリン使用量が激減したと思われるが、冬の低水温と相まって顕著な海藻の繁茂が観察されました。 2.ホルマリン由来の反応生成物に関する分析・調査:各地の浮泥などのサンプルを採取し、委託研究先に送付し、分析中です。 3.ホルマリン反応生成物の特性・毒性研究:反応生成物の構造が未解明であるため、珪藻プランクトンをホルマリンと反応させ、それをアコヤガイに摂取させて影響を観察する実験を行なう予定です。 4.養殖現場におけるホルマリンの規制・監視の強化:2003年7月30日付で薬事法が改正され、ホルマリンなど未承認動物用医薬品の使用禁止(罰則:200万円又は3年以下の懲役)が盛り込まれました。私たちが1996年に養殖魚へのホルマリン使用禁止を求めて活動を始めて以来足掛け7年目にしてやっと法規制が実現したことになります。  しかし、養殖業者へのホルマリンの販売・購入には規制はなく、監視体制が未整備であり、何より安全で有効な代替手段がないことから今後も水面下での使用が心配されます。 調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項  4月に放映されたドキュメント番組で大量のホルマリンを直接海に注ぐ映像のインパクトは大きく、その後も大きく報道され続けています。  それ故に養殖業者の警戒心が強く、ホルマリン使用状況調査は非常に困難となりました。  ホルマリン問題の実態についてドキュメントで取り上げられ、会の活動状況も紹介され、 薬事法改正でホルマリンを含む未承認動物用医薬品の使用が規制されるなど、運動面では大きく前進しました。  しかし、一連の養殖魚のホルマリン問題に関連して、行政は海水やホルマリンを使用した飼育魚のホルムアルデヒド値を分析して、その残留の有無や濃度だけを問題視しているが、反応生成物に関する調査・研究は皆無です。  限られた資金とスタッフであるが、私たちと研究者が共同で行なうホルマリン反応生成物についての実験によって何らかの成果を出せるよう努力したい。

結果・成果

完了報告から
【事業目的】 1.魚類養殖場におけるホルマリン使用状況調査(観察と聞き取り) 2.ホルマリン代謝生成物の毒性実験 3.海域でのホルマリン使用禁止の法制化 【調査方法・結果・考察】 1.魚類養殖現場におけるホルマリン使用状況調査 ⇒魚類養殖場における消毒作業を観察し、周辺の海水を採取・分析し、ホルマリンの使用状況を調査しました。その中で長崎県鷹島町の様子がテレビのドキュメント番組で放映され、養殖現場の実態が広く社会に知られることとなりました。  これをきっかけに県知事自らホルマリン販売記録を基にした調査結果を発表しましたが、ホルマリン使用トラフグの出荷は消費者団体の強い反対にもかかわらず強行されました。その際、ホルムアルデヒド残留濃度だけを安全性の根拠としてホルマリン結合物の毒性や使用による海への影響は一切調査されることはありませんでした。長崎での不正使用を受けて水産庁は関係県の実態調査を行ないましたが、騒ぎの幕引きを図るための単なる聞き取り調査で真相は闇に葬られました。 2.各地の海底泥などのサンプル採取・分析 ⇒特定の海域の海底泥や篭の上に積もった泥を採取し、それを委託研究先に送付しました。 委託研究先ではホルマリン由来の反応物の有無、微生物相の解析、TBT濃度の分析などを行ないました。TBT分析結果は特段高濃度ではないが、安心できる程の低レベルでもなく、さらなる調査が必要と思われました。 3.ホルマリンの海水における挙動解明(委託研究) ⇒HPLC(高速液体クロマトグラフィ)を使って海底泥などのサンプル中のホルマリン由来の化合物の濃度を測定し、海水中の挙動解明を試みました。その結果、一般海域ではホルムアルデヒドが遊離と結合を繰り返しながら拡散していく可能性が推定されました。  NMRを用いたホルマリン由来の化合物の構造解明にはいたりませんでした。 4.海底泥の微生物相の解析 ⇒海底泥などのサンプルから微生物のDNAを抽出し、PCR増幅を行なった後に電気泳動後のゲルを染色してバンドパターンを比較し、現在解析中です。 5.ホルマリン代謝物の毒性研究(委託および自主研究) ⇒2枚貝のエサであるキートセロスにホルマリンを結合させ、ホルムアルデヒド成分を除去したうえでアコヤガイに摂取させ、その影響を調べました。その結果、免疫機能や消化管に損傷を与える可能性があることが分かりました。 6.関係省庁への働きかけ ⇒水産庁、厚生労働省、環境省に対してホルマリン問題改善のための交渉・要望を行ないました。2003年7月に改正薬事法が施行され、ホルマリンなど未承認動物用医薬品が使用禁止となりました。獣医師関与の除外規定がある事、流通規制がなされていない事、など今後も水面下での使用が懸念されます。しかし、流通規制について厚労省は「対応は難しい」と回答するに留まりました。 【活動の成果】 1.薬事法の改正という形で罰則規定を伴うホルマリン使用禁止法制化を実現できたことが最大の成果といえます。 2.これまで全く調べられてこなかったホルマリンと珪藻プランクトンの結合物の影響について一部明らかにすることができました。 3.私たちが観察を行なってきた養殖現場の実態がドキュメントとして取り上げられ、広く社会に伝えることができたのも大きな収穫でした。

その他/備考

対外的な発表実績、今後の展望
【行政・公的機関への政策提言】 1.熊本県薬務課へホルマリン流通実態の再調査申し入れ 2.江田康幸・衆議院議員(公明党)を通じてホルマリン問題申し入れ(厚労省、水産庁、環境省) 3.ホルマリン問題に関する公開質問状提出(長崎県知事あて) 【雑誌等への寄稿】 1.日本消費者連盟機関紙「消費者レポート」1219号(2003年4月7日発行) 2.日本消費者連盟機関紙「消費者レポート」1224号(2003年5月27日発行) 3.日本消費者連盟機関紙「消費者レポート」1234号(2003年9月7日発行) 4.反農薬東京グループ機関紙「てんとう虫情報」141号(2003年6月25日発行) 5.月刊「むすぶ」?農と食は誰のモノ?No.396 (2003年12月1日発行) 6.「週間金曜日」No.498 (2004年3月5日発行)(資料・情報提供) 7.読売新聞(大阪本社版)2004年1月5日付 (活動紹介) 8.The Daily Yomiuri (January 31,2004)(コメント) 【発表実績】 1.養殖トラフグのホルマリン問題の TV ドキュメント放映 2.第20回天草環境会議にてホルマリン問題報告 3.「牛乳パックの再利用を考える全国大会in水俣」分科会でホルマリン問題報告 4.「有明海・八代海総合調査評価委員会」ヒアリングにてホルマリン問題報告(福岡) 5.環境行政改革フォーラム総会参加(東京)分科会にてホルマリン問題について市民活動報告 今後の展望 【問題点】 1.ホルマリン使用禁止について獣医師の指導による除外規定がある、養殖業者へのホルマリンの販売・購入には規制がない、監視体制が未整備である、安全で有効な代替手段がない、ことなど今後も水面下での使用が心配される。 2.ホルマリン使用による漁場や生物への影響調査が総合的に行なわれていない。 3.今年度の実験によってホルマリンと珪藻プランクトンの結合物がアコヤガイに及ぼす影響の一部を明らかにすることができたが、もっと長期間飼育してより詳細に影響を調べる必要がある。 4.TBT など他にも有害化学物質が不正使用されている可能性があり、さらなる調査が必要。 【対策】 1.ホルマリンの使用禁止措置を実効あるものにするために、流通経路を遮断・チェックする仕組みも同時に作る必要がある。 2.ただ使用禁止にするだけではなく、これまでの漁場を使い捨てにするような給餌型養殖漁業から、海藻や貝類などを飼育する非給餌型養殖漁業のような長期的漁場活用が可能な水産業への転換を推進させる。 3.「食の安全」に関する消費者意識の高まりからホルマリンを使用した養殖魚の食品安全性が懸念されているが、周辺漁場への影響という観点が極めて希薄である。ホルマリンを使用してきた漁場周辺の疫学的な調査が必要です。 【今後の活動】 1.ホルマリン由来化合物の特性・毒性などのさらなる調査・研究。 2.養殖漁業適正化提言のための調査・研究 3.ホルマリン問題解決のための活動経過まとめ

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