高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


高レベル放射性廃棄物地層処分の批判的検討



グループ名 地層処分問題研究グループ 完了報告書[pdf382]
完了報告書[pdf382]
代表者氏名 志津里 公子 さん
URL http://cnic.jp
助成金額 35万円

研究の概要

2003年12月の助成申込書から
【背景】  高レベル放射性廃棄物の後処理は、世界のどの原子力利用国でも未解決の難問です。  各国の対応は、地下に埋設することで永久処分とする「地層処分」を進めるか、問題を棚上げにしているかのどちらかです。  日本は、2000年に地層処分することを法律として定め、2002年から原子力発電環境整備機構が国内初の処分地を公募しているが、世界でも有数の地殻の変動が激しい地帯にある日本では、地層処分の実施は欧米の各国に比べて著しく不利な条件にあります。  当グループは、2000年の法律制定前から、国が地層処分の事業化の拠り所とする核燃料サイクル開発機構の技術報告書を詳細に検討して「批判レポート」などを発表し、現時点では地層処分に絶対的な信頼を寄せることはできないと主張してきました。 【経過・成果】  2002年度から継続して、高木基金の助成を受けて研究を進めています。  2004年度もグループ内での定期的な研究会を12回開催し、廃棄物処分及びバックエンド関係の研究会・ワークショップなどに7回参加、廃棄物処分関連の政府委員会などを47回傍聴するなどして情報収集を進めました。  また、原子力長計策定会議の伴委員の発言資料として、「核燃料サイクルのコスト評価について」などの小論を提出してきました。  技術検討レポート続編及びワークショップ記録集を準備中です。 【今後の展望】  地層処分の技術的な問題の批判的検討は今後も長期にわたって継続予定です。  報告書は取りまとめが遅れていますが、地層処分が事業化段階に進んでいる現在、単に核燃料サイクル開発機構とのやり取りに終始しないよう、実施主体である原子力発電環境整備機構の動向や公募の実態にも合せたものとなっています。  また処分の技術的な問題点だけに焦点を当てた以前の批判レポートから範囲を広げて、高レベル放射性廃棄物処分からみた核燃料サイクルの問題、経済的な問題なども検討をしています。  今後は、TRU廃棄物の問題も含めて地層処分の問題をアピールしていきます。 【 この助成先は、2002年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2002年度の助成事例 】 【 この助成先は、2003年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2003年度の助成事例 】

中間報告

中間報告から
調査研究・研修の概況  私たちは、原子力発電によって生じる高レベル放射性廃棄物を地下に埋設する地層処分について、その技術的な問題を批判的に検討し、これまでにさまざまなかたちで発表してきました。いま日本では、地層処分の処分地が公募されていますが、高レベル放射性廃棄物処分の問題を広く社会に発信していくために、これまでの調査検討を取りまとめた総合的な報告書の作成を目指しています。  そのために、日本の地層処分研究開発の取りまとめの中心であった核燃料サイクル開発機構による技術報告書および地層処分の実施主体であり公募を進めている原子力発電環境整備機構が今年の6月に出した技術的基盤等の報告書、関連する問題の原著論文の検討を進めています。  また現在審議中の原子力長期計画の新計画策定会議では、六ヶ所再処理工場を稼動させない場合も選択肢の一つとして核燃料サイクル政策が議論されており、日本ではこれまでまったく白紙であった使用済み核燃料の直接処分についても、費用見積りと合わせて技術的な問題も議論されはじめました。この問題について、これまでの調査研究に基づき、長計策定会議の伴委員と協力して、事務局の文書を分析して意見書等を提出して、高レベル放射性廃棄物と直結した核燃料サイクル政策の見直しに向けて働きかけをするとともに、再処理・ガラス固化体地層処分の陰に隠されていながら高レベル放射性廃棄物と同様に深刻な問題である「超ウラン元素を含む放射性廃棄物」の処分問題について問題提起をしています。 調査研究・研修の具体的な経過・成果 2004.4〜8月1回のペースで研究会。各検討事項についての議論。 2004.6.1原子力発電環境整備機構技術報告会に参加(フロアから討論) 2004.8〜原子力長計策定会議伴委員と協力して意見書等の作成  (当グループ名によるものはホームページに順次掲載予定)

結果・成果

完了報告から
調査研究・研修の経過 2004/4〜2005/3 基盤的な活動 ・グループの定期的な研究会を12回開催 ・廃棄物処分およびバックエンド関係の技術報告会・研究会・ワークショップ等に7回参加 ・廃棄物処分関連の政府委員会、原子力長計策定会議等を47回傍聴 2004/7〜 「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の新計画策定会議に小論等を提出 現在 技術検討レポート続編およびワークショップ記録集を準備中 調査研究・研修の成果  原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物の後処理は、世界のどの原子力利用国でも未解決の難問です。現在の各国の政策は、地下に埋設することで永久処分とする「地層処分」を進めるか、この問題を棚上げにしているかのどちらかです。日本は、2000年に地層処分することを法律として定め、2002年から原子力発電環境整備機構(原環機構)が国内初の処分地を公募しているが、世界でも有数の地殻の変動が激しい地帯にある日本では、地層処分の実施は欧米の各国に比べて著しく不利な条件にあります。当グループは、2000年の法律制定前から、国が地層処分の事業化の拠り所とする核燃料サイクル開発機構(核燃機構)の技術報告書を詳細に検討して「批判レポート」などを発表し、現時点では地層処分に絶対的な信頼を寄せることはできず、地層処分によって高レベル放射性廃棄物問題が解決したかのように原子力政策を進めることは誤っていると主張してきました。  本年度もこれまでの活動を継続して、「批判レポート」の包括的な続編としての新たな報告書の作成のため、地層処分に関連する様々な分野の文献、学術論文の調査検討、核燃機構と原環機構の技術報告書等の検討をグループの定期的な研究会で重ねました。同時に核燃機構、原環機構の技術報告会等に参加して処分技術の現状を把握するとともに推進側の研究者・技術者と広く討論をし、また政府の各種委員会の傍聴を重ねました。  報告書は作成中であるが、結論は、地層処分を行うにあたっては科学的に未解明な問題や不確定の大きい要素がまだ多く残されており、現状では安全を確信することはできないというものです。ただし地層処分以外の方策として、長期的な保管管理を選択した場合にも、最悪の事態を想定すれば問題はあります。したがって、保管管理など地層処分以外の選択肢も含めて、それぞれの長所と短所を比較したうえで高レベル放射性廃棄物に対する方策の選択を白紙からやり直すことが求められます。ここで言う「選択」とは、単に比較して決めることが最終目標なのではなく、選択した方策には選択しなかった方策と比べてどのような短所がありえるかを社会的によく認識を共有したうえで、慎重に管理または処分に携わっていくことを意味しています。  高レベル廃棄物の管理と処分の問題は、核燃料サイクル政策と密接な関係があります。2004年は6月から原子力委員会による原子力長期計画の新計画策定会議が始まり、各方面から問題提起のあった六ケ所再処理工場の稼動の是非を背景に、核燃料サイクル政策についての議論がまず集中して行われました。会議は、再処理の優位性を恣意的に強調する方向で進められたが、高レベル放射性廃棄物について事務局と核燃料サイクル推進派委員は、使用済み核燃料を再処理してガラス固化体地層処分を行う場合と、再処理をせずに使用済み核燃料を直接地層処分する場合で、ガラス固化体処分のほうが安全で環境負荷が少ないということをことさらに強調しました。この問題について当グループで検討を行い、ガラス固化体処分に加えて再処理工場の運転時の放射能放出と超ウラン廃棄物処分を伴う再処理路線のほうが直接処分よりも放射線の被曝影響は大きいこと、再処理で取り出したプルトニウムをウランとの混合酸化物燃料として軽水炉で利用するプルサーマルの使用済み核燃料も含めて考えると、再処理路線の環境負荷が大きいことを示した。この会議には、本グループのメンバーでもある原子力資料情報室の伴英幸共同代表が委員に任命されて参加しており、伴委員の発言資料として、当グループの検討や試算の結果を提出しました。  地層処分に対する地震の影響について、推進側は、認定されている活断層を避ければ断層の直撃は避けられ、地下は地表に比べて揺れが小さいので問題ないという論理で安全を唱えてきました。例えば政府が地層処分政策の技術的な拠り所としている核燃機構の技術報告書では、非常に雑で粗い見積もりにより、断層が処分場に影響を与える可能性のある領域に生じる確率は100万年に1回程度であり、事実上起きないと考えてよいとしています。日本で起きる地震の発生場所と頻度と規模の確率論的な評価については、近年、政府の地震研究推進本部当グループが評価を続けており、その結果を取りまとめた「地震動予測地図」を2005年3月に発表しています。当グループでは、この評価における「震源断層を特定できない地震」の取り扱いをもとに、活断層の認められていない場所において処分場に影響を与える可能性のある領域に、地表に届くような断層を生じうる規模の地震が起きる確率を試算しました。その結果は、地域差はあるが、多くの地域で1〜3万年に1回程度となり、核燃機構の技術報告書が強調する数字よりは数十倍高い頻度です。そうした規模の地震が必ず処分場や地表にまで達する断層を生じるとは限らないが、活断層を避ければ問題はないという現在の地層処分に対する認識は楽観的に過ぎると言えます。

その他/備考

対外的な発表実績
「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の新計画策定会議に伴英幸委員の発言資料として以下の小論等を提出しました。   ・「核燃料サイクルのコスト評価について」   ・「長計策定会議政策評価視点『環境適合性』について」   ・ 「環境適合性(中間とりまとめ(案)およびご意見の取り扱いへの反論)」 今後の展望  地層処分の技術的な問題の批判的検討は今後も長期にわたって継続予定です。報告書は取りまとめが遅れていますが、地層処分が事業化段階に進んでいる現在、単に核燃料サイクル開発機構とのやり取りに終始しないよう、実施主体である原子力発電環境整備機構の動向や公募の実態にも合せたものとなっています。  また処分の技術的な問題点だけに焦点を当てた以前の批判レポートから範囲を広げて、高レベル放射性廃棄物処分からみた核燃料サイクルの問題、経済的な問題なども検討をしています。  現在進行中の原子力長期計画の新計画策定会議では、六ケ所再処理工場の操業にお墨付きを与え、当面MOX燃料の軽水炉利用による核燃料サイクル政策が進められることとなりました。再処理工場の運転により、「超ウラン元素を含む廃棄物」と称される放射性廃棄物(TRU廃棄物)の処分が現実のものとなりますが、TRU廃棄物にはヨウ素129や炭素14など、ガラス固化体の地層処分よりも将来の被曝線量への影響が大きくなる可能性がある核種が含まれます。TRU廃棄物のうち、これらの核種はやはり地層処分されることになるが、原子力長計の新計画策定会議では、これをガラス固化体地層処分の処分場と同じ場所に埋設する方向を強く打ち出しています。今後は、TRU廃棄物の問題も含めて地層処分の問題をアピールしていきます。

HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い