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「柏崎刈羽原発の地層年代評価をめぐって」

  立石 雅昭さん(新潟大学名誉教授(地質学)、新潟県技術委員会委員)

柏崎刈羽原発の敷地内の断層は活断層なのかどうか。地元の研究グループが、長年にわたる調査に基づいて提起してきた問題が、いまあらためて注目されています。研究グループのメンバーである立石雅昭さんにお話を伺いました。

なお、この問題の解説、原子力規制委員会への要請書などは、立石さんのブログに掲載されていますので、あわせてご覧ください。
柏崎刈羽原子力発電所敷地内の断層について(1)
柏崎刈羽原子力発電所敷地内の断層について(2)
柏崎刈羽原子力発電所敷地内の断層について(3)

(インタビュー実施日:2017年8月/聞き手:高木基金事務局長 菅波 完)



− 柏崎刈羽原発敷地内の断層について、地元の研究グループは、従来から活断層だと指摘してきました。原発の敷地内に活断層があるとわかれば、当然、再稼働はできなくなります。今回、東京電力がボーリング調査で採取していた原発敷地内の火山灰試料と、地元の研究グループが周辺の地質調査で採取していた火山灰試料とが同一であることを東京電力が認めました(→参考:東電の発表資料)が、まずこのことの意味を教えてください。

立石 この問題は、実は1990年代から議論されてきたことです。柏崎市の藤橋という地区で、1992年から93年にかけて新潟工科大学の建設工事が行われ、その際に露出した地層について、研究グループは詳細な地質調査を行い、複数の論文にまとめています。この地域の地層は、地形学的に「中位段丘」と呼ばれるもので、12〜13万年前のものと評価されています。藤橋の地層からは、7層の火山灰が見つかっており、古い時代のものから、「藤橋10」〜「藤橋70」という名前がつけられています。
 東京電力は、柏崎刈羽原発の敷地内の地層から採取された火山灰の内、「刈羽テフラ」と呼んでいるものについて、従来、年代の評価をはっきり示していなかったのですが、2014年に下北半島の海底でのボーリング試料を分析した論文が発表され、その論文で20〜23万年前のものとされた火山灰の組成が、「刈羽テフラ」とよく似ていることから、これをもとに「刈羽テフラ」が20〜23万年前のものだということを、2015年から主張するようになりました。
 私たちは、以前から、火山灰の組成をもとに「刈羽テフラ」が「藤橋40」と同一のものであり、これが原発敷地内の地層が12〜13万年前のものであることの証拠になると考えていました。今回、実際にサンプルを交換して、「刈羽テフラ」と「藤橋40」が同一のものであることが明らかになり、東電側も認めました。
 新規制基準では、12〜13万年前より新しい時代に活動した可能性を否定できない断層を「活断層」と定義しています。東京電力は、柏崎刈羽原発6・7 号機の再稼働を申請していますが、「刈羽テフラ」の年代評価を、下北半島の火山灰と同じ20〜23年万年前とするか、「藤橋40」と同じ12〜13万年前とするかは、原発敷地内の断層が活断層かどうかの判断に影響する重要なポイントになります。

− 下北半島の海底の火山灰は、柏崎の地層年代を評価する物差しになるのでしょうか。

東京電力の解釈に基づく図(東京電力資料に立石さんが加筆)。

 

活断層問題研究会の調査・解析に基づく図。

立石 巨大な噴火を起こした火山からの火山灰は、広い範囲に降り積もることから、地層の年代を評価する指標になります。たとえば、九州の火山からの火山灰が、偏西風にのって、西日本のあちこちで堆積しており、それが薄くなりながらでも柏崎でも確認できた、というようなものを年代評価の指標にしているわけです。しかし、今回の下北の火山灰は、下北以外の地点にどのように分布し、堆積しているのか、明らかではなく、これを元に、柏崎の原発敷地内の地層の年代を判断することには無理があります。東電は、「刈羽テフラ」の年代評価に都合が良いということで、下北の20〜23万年前の火山灰に飛びついたというのが実情ではないでしょうか。
 そもそも地層の年代評価は、火山灰だけではなく、地形や地層の成り立ちについて、総合的に検討した上で判断するべきものです。東京電力の解釈によれば、「藤橋40」が20〜23万年前の火山灰ということになりますが、「藤橋40」は、12〜13万年前の中位段丘堆積物とされてきた柏崎周辺の地層に広範囲に確認されており、これを20〜23万年前のものとするならば、周辺の広範囲にわたる地層の年代評価や、地層や地形の成り立ちについて、すべて考え直さなければならなくなります。私たちは東電に対して、そのための追加調査をするつもりがあるのかと問い詰めていますが、その予定はないといいます。これでは再稼働申請に都合が良いように、敷地内の地層年代を評価しているといわざるを得ません。

− この問題について、原子力規制委員会に要望書を出されたわけですが、今後の見通しはいかがでしょうか。

立石 原子力規制委員会に対しては、これまでも「科学的に厳正な審査を求める」という要望書を出しており、今回が4回目になります。これまでの経験からすると、規制委員会から研究会に対して直接の返答は来ないと思いますが、この後の審査の中で、私たちが指摘していることをしっかり踏まえた審査をして欲しいと思います。例え、規制委員会が曖昧な審査で、「基準に適合」と判断しても、当然、新潟県の技術委員会で審議されますが。

−  泊原発については、高木基金が助成している北海道の研究グループの指摘が、規制委員会での審査に大きな影響を与えましたので、今後の柏崎刈羽原発の審査にも注目していきたいと思います。話は変わりますが、今回、問題提起をした「柏崎刈羽原発活断層問題研究会」について教えてください。

立石 研究会のメンバーは、地元の高校や中学の先生などが中心で、大学の研究者数名が加わっています。もともとは、地元の先生たちが、柏崎地域の大地の生い立ちを明らかにしたい、ということでやってきたもので、私もそれに関わってきたのですが、その中で、こういう地殻変動の激しい地域に、原発があるのはおかしいということにつながってきました。
 他の原発立地地域では、原発の危険性につながるような調査をすると、圧力がかかったりして、表だって活動することは難しいというのが実情のようです。
 本来、大学の研究者は、そういう調査を主導したりしても、そのことを理由に、大学側から圧力がかかるようなことはないはずです。開き直ればね(笑)。私は真実を求めてこうやるんだ、学問の自由があるんだと突っぱねるべきですね。実際には、このような調査活動を地域の人たちと一緒にやる大学教員が少ないことも大きな問題だと思います。

− おっしゃるとおりですね。最近は、大学も法人化され、締め付けが厳しくなっているようで、その中で頑張る研究者を市民側も応援していかなければいけないと思っています。貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

<取材日:2017年8月 聞き手:高木基金事務局 菅波 完>


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