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高木仁三郎市民科学基金
2017年度 国内枠調査研究助成
書類選考通過者の調査研究計画概要(受付番号順)


(下記は、それぞれの応募者の助成申込書から概要のみを転載したものです。)

グループ名
代表者名

伊藤 延由さん
応募金額 60万円
テ ー マ 身の回りの放射能汚染測定を通して福島県飯舘村に居住することの意味を考える
概  要

 福島県相馬郡飯舘村は原発事故により居住制限地域に指定されているが、2017年3月で制限が解除されることになった。身の回りのもの全てが汚染され、空間線量も年間1mSvという基準を超えているため従前の生活はできないが県や村などの公的機関からの適切な生活指導はなされていない。汚染された飯舘村に住むというのはどのようなことなのか、身の回りの放射能汚染を測定することによりその意味を考える材料を提供して行きたい。
 事故後、申請者は福島市松川町の仮設住宅に避難したが、最近はもっぱら飯舘村内に居住し、研究者やジャーナリストなどのサポートを続ける一方、空間線量、個人被曝線量、それに土壌、植物など思いつくままに様々な材料の放射性セシウム量の測定を続けてきた。そうした中で、
(1)土壌中セシウム量が国が示す降下放射線量と合致せず局所的に大きく振れること
(2)植物のセシウム量も土壌中濃度とは比例せず移行率には大きなばらつきがあるが蜂蜜は比較的よく比例していること
(3)植物の中でも枝葉の先端部など盛んに成長している部分に概してセシウムが蓄積しやすいこと
(4)植物の種類によっては茹でたり塩漬けにしたりするとセシウムが減少する場合があることなど多くの発見があった
本研究においてはこれまで行ってきた様々な身の回りの測定をより体系的な形で継続すると共に、植物の放射能蓄積メカニズム解明や収穫後の処理によるセシウム除去にむけた実験的な取り組みを行なおうとするものである。こうした成果は適宜村民に公表し注意喚起して行くとともに、村民のほぼ半数が参加しているADRの場でも活用する予定である。


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グループ名
代表者名
Annakaひだまりマルシェ
神戸 るみさん
応募金額 100万円
テ ー マ 群馬県における汚染状況重点調査地域を中心とした放射性物質の健康への影響に関する調査研究
概  要

 当該事業では、放射線の健康への影響について正当な評価をするための情報集積手段として、「子どもたちの甲状腺エコー検査」並びに「群馬県内の汚染状況重点調査地域を中心とした土壌測定及び内部被曝線量の試算」を行うことで、福島第一原発事故以降、子どもたちの置かれている状況を客観的、科学的に調査研究することを通して、社会の在り方に問題を提起していく。
 放射性物質汚染対処特措法では、「環境大臣は、その地域内の福島第一原発事故由来の放射性物質による環境汚染の状況について重点的に調査測定することが必要な地域を『汚染状況重点調査地域』として指定する」とされており、現在、8県99市町村がその指定を受けている。このうち群馬県では、平成24年12月に片品村及びみなかみ町がその指定を解除したことから、現在では桐生市、沼田市、渋川市、安中市、みどり市、下仁田町、中之条町、高山村、東吾妻町、川場村の10市町村が指定を受けている。当法人事務所所在地である群馬県安中市も、この汚染状況重点調査地域に指定されているが、未だ除染計画が策定されないままに5年が経過している状況である。
 また、平成23年11月21日に開催された群馬県主催の「放射線の健康への影響に関する有識者会議」では、『子どもについては、放射線の感受性が高いということもあるが、少なくとも今、がんが直ぐに発生するわけではないし、甲状腺機能低下症については、線量が全然違うので、発がんの観点からすれば、小児であってもこの程度であれば影響はない。』という報告を出しており、子どもたちの健康への対策は講じられていない。
 私たちは群馬県における以上のような現状を踏まえ、以下の内容にて事業を実施する。
1.群馬県に住む子どもたちの甲状腺エコー検査の実施
 チェルノブイリ原発事故後の健康被害として小児甲状腺がんが報告されており、福島県においては平成23年10月より、県民健康調査が開始されていることから、群馬県においても、特に汚染状況重点調査地域に居住する子どもたちを中心に標記事業の実施を通して、万が一の被害を最小限にするための体制づくりを市民主導で行う。
2.群馬県内の汚染状況重点調査地域における土壌測定及び内部被ばくの試算
 汚染状況重点調査地域の地域指定基準に空間線量率が用いられるなど、事故当時から現在に至るまで、空間線量率の議論が先行してきた感が否めない現状において、土壌測定データを集積すると共に、内部被ばく線量の試算も行う。


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グループ名
代表者名
被ばく労働を考えるネットワーク
渡辺 美紀子さん
応募金額 100万円
テ ー マ 原発労働者の労働安全・補償制度と被曝労働災害の実態に関する国際調査
概  要

 福島原発事故以前から政府と電力会社及び元請会社は、原発労働者の労働実態と健康被害状況について、隠蔽と言って差し支えないほど明らかにしていない。その条件のもとで、主として非正規雇用労働者が使い捨てられてきた。労働者保護制度は不備であり、使いうる制度さえ労働者がアクセスしにくい環境が作られている。被曝労災・労災死を一人でも減らすため、原発被曝労働に関する実態解明と労働安全・労働者保護制度そのものと運用のあり方の抜本的見直しは緊急の課題である。また、原発問題のアキレス腱でもある被曝労働問題があまり注視されないのは、原発を持つ他の国でも同様であり、この問題は国際的な共通課題である。
 本研究では、日本のみならず原発を有する各国について、公開資料等から原発労働者の労働安全制度と労災補償制度について比較するとともに、各国の労働団体・市民団体と協力して労働者への聞き取り調査を行い、労働実態と労災・健康被害の国別比較を行い、そこから捉えうる問題を明らかにすることを目的とする。
 研究を進める国内体制としては、被曝労働問題に取り組む諸団体や社会学的調査の経験がある研究者と共同で行う。国際的体制としては、今年3月に開催された「核と被ばくをなくす世界社会フォーラム2016」に参加したウクライナ、フランス、ドイツ、韓国、日本のメンバーの協力共同で進める。
 この成果は、労働者や市民に対して被曝労働に関する正確な情報を提供するために用いるとともに、各国政府および事業者に対して、労働安全・労働者保護制度の改善を要求するために用いる。


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グループ名
代表者名
霞ヶ浦漁業研究会
浜田 篤信さん
応募金額 93万円
テ ー マ 霞ヶ浦導水事業の生物多様性影響評価研究
概  要

目的
霞ヶ浦導水事業で那珂川から毎秒15m3および利根川から毎秒25m3の取水を行った場合の那珂川・涸沼および利根川・霞ヶ浦への生態系、漁業への影響を明らかにするために以下の研究を行う。
1 霞ヶ浦の環境に与える影響(霞ヶ浦が浄化されるとする国の予測の検証を中心に)
2 全国のニホンウナギに与える影響(産卵場が全国共通のマリアナ海域なので影響あり)
3 涸沼の環境に与える影響(国の涸沼への影響は、ないとする予測の検証)
4 那珂川のアユ資源への影響
5 那珂川・涸沼水系のシジミ漁業への影響
6 那珂川水系の漁獲対象種の魚種毎の被害率算定

方法
現地調査、漁業者からの聴き取り調査、既往のデータ収集、既往文献解析

期待される成果
東北地方太平洋沖地震をふまえた新しい水資源開発管理への提言
霞ヶ浦開発事業、霞ヶ浦導水事業等大規模公共事業の中止、見直しの開始となる.
生態系、生物多様性価値を中心に据えた新しい地方創生案の提言
次世代を担う戦う研究者の育成.


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グループ名
代表者名
熱帯林行動ネットワーク
川上 豊幸さん
応募金額 100万円
テ ー マ 再生可能エネルギーとしてのパーム油利用問題に関する調査研究
概  要

欧州のパーム油調達では森林減少や人権侵害を引き起こさないことやRSPO認証油を選択する動きもあり、パーム油生産は土地や労働の人権侵害の問題ととも気候変動への影響も大きい。RSPO委託調査やUNEPによるパーム油の排出係数では、森林転換や泥炭地開発や管理状況により大きな幅があるが、下限値では石炭等の化石燃料の排出係数より大きい。ところが、再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)において、パーム油を燃料とした発電事業が可能で、一件で現在の全輸入量の25%近い量のパーム油を利用した発電事業も検討されている。こうした事業が拡大すると、むしろ温室効果ガス発生を増加させ、環境社会問題を拡大してしまう。日本ではパーム油の排出係数をゼロとする場合や、FITでは持続可能性条件もなく、「農産物の収穫に伴って生じるバイオマス」として24円の買い取り価格が設定され、世界の認識と大きなギャップがある。そこで、既存の排出係数推計内容の精査し、森林減少と泥炭地開発の排出係数への影響評価の整理を行う。加えて、その情報開示としての認証制度の有効性を検討する。現在、RSPOやRSPO NextやPOIG等の自主的な認証に加え、ISPOやMSPO等の生産国が進める認証制度があり、実態を踏まえた上で、これら認証制度の有効性を評価する。これに基づき、日本でのFIT等の政策やカーボン・フットプリントの議論に影響を与えたい。


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グループ名
代表者名
駒ヶ根の環境を守る会
岸 真結子さん
応募金額 50万円
テ ー マ 放射性廃棄物の拡散防止のために地方自治の果たす可能性に関する調査研究
概  要

 東京電力福島第一原子力発電所事故後、放射性物質汚染対処特措法の下、放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kg以下の廃棄物は市町村、処理業者等が処理するとされ、全国に放射性廃棄物が拡散されています。
 現在、長野県上伊那郡宮田村には、放射性物質を含む廃棄物の管理型処分場の建設計画があります。建設計画を審査する県は、国の基準を安全と主張しており、住民は大きな不安を強いられています。宮田村だけでなく、人口の少ない地方であれば次の候補地とされる可能性は十分にあります。そのような地域は水源や豊かな自然環境に恵まれ、農林畜産業や観光など自然の恩恵を受ける産業で成り立っていることも多く、放射能汚染のリスク等到底受け入れられません。
 国や県行政が、放射性廃棄物や除染土の拡散を推進、容認する立場であるのであれば、地域で自ら環境を守るための手段を住民主体で研究、議論、検討することが重要です。本調査研究では、特措法、過去に原発廃棄物を拒否した条例の事例、協定の事例、広域処理の問題点等を精査し、また、地域の住民や行政の考え方などを聞き取りしながら、放射性廃棄物拡散問題に関して地域主体で取り組む具体的な対策を提案します。


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グループ名
代表者名
みんなのデータサイト
石丸 偉丈さん
応募金額 100万円
テ ー マ 土壌および食品の放射能汚染データベースの解析と活用
概  要

 福島原発事故により発生した広大な地域の放射能汚染に対し、日本政府は、正しく汚染実態を把握し、人々の健康を守るための適切な措置を怠っていると言わざるをえない。当プロジェクトは国が行おうとしない「東日本全域をほぼカバーする土壌放射能汚染調査」を行い、独自のデータベースを確立しつつある。このデータをマップ化して、汚染地域で暮らす市民が自らの生命と健康を守る指針とするとともに、データベースを解析することによって、事故直後の初期被ばく量の推定や、食品汚染による内部被ばくを極力回避するための指針を作成して市民の健康を守る。
 また、チェルノブイリ法による汚染区分に準じたゾーニングを試み、汚染地域に暮らす人々に警鐘を鳴らすとともに、住民による政府交渉の際の根拠となるものを目指す。
 食品データを解析し土壌データとあわせて複眼的にみせることで、汚染地域に住む市民が地元の汚染状況について俯瞰できる「わかりやすい」情報を伝え、啓蒙する。
 原子力村側による放射線被ばくのリスクを軽視するキャンペーンが成功しつつあり、チェルノブイリで起きたような事故後10年目での内部被ばく線量の急増現象が再現する可能性が高いことが危惧される。特に汚染の高い福島および北関東の県に重点を置き、ワークショップなどの開催を通じ、マイクロホットスポットの存在に対しての啓蒙、ジビエや野生キノコの危険度を伝えていく。
 これらの結果については、レポートとしてウェブサイトでの告知、紙媒体の作成、またマスコミへのプレスリリースを通じて、広く日本社会へ警鐘を鳴らす。


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グループ名
代表者名
ふくいち周辺環境放射線モニタリング・プロジェクト
満田 正さん
応募金額 100万円
テ ー マ 福島県南相馬市を中心とした空間および土壌の放射線測定
概  要

 2011年3月12日に起きた福島第一原発の暴発事故で、放射性物質により汚染された福島県南相馬市の山側8行政区を中心に、2012年10月より冬期を除く毎月1回(約1週間)、34回にわたる放射線測定を行っています。
 測定は、地図を元に75m×100mのメッシュをきった中心点を、以下の4項目の測定方法により放射性物質汚染状況を記録しています。
(1)日立アロカメディカル社製の空間線量測定器(TCS172B)による地上1mの空間線量率(μSv/h)測定
(2)日立アロカメディカル社製の表面汚染測定器(TGS146B)による地表1cmの表面汚染計数(cpm)測定
(3)上記測定時に無線を利用した簡易型放射線測定器(ギョロガイガー)による位置情報と時刻情報を加味
   した地上1mの空間線量の可視化
(4)土壌採取による放射性物質の含有分析(土壌分析はキャンベラ社製放射能食品分析器を使用)
 その他、2015年4月からは国の1mSv/yから20mSv/yへの避難解除基準引き上げに抗して訴訟を起こした「南相馬・避難勧奨地域の会」原告団の208世帯の住宅および敷地の放射線測定も実施して、そのデータは行政区長を通して各原告に情報開示するとともに、弁護団の訴訟資料としても提供しています。
 また、現地では原告団を中心とした勉強会も開催されており、原告団の住民に対する講師派遣も対応する他、弁護団の放射線知識の向上をめざす勉強会にも同席して、資料提供や意見交換等もしています。なお、私たちの活動は、60歳以上のシニアを中心として、全てをボランティアとして行っているものです。


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グループ名
代表者名

永野 いつ香さん
応募金額 35万円
テ ー マ 水俣市茂道の歴史的形成過程と水俣病発生前後の住民の生活
概  要

 1956(昭和31)年に水俣病が公式確認され60年が経過した。チッソが流した有機水銀は不知火海一帯を汚染し、被害者は20余万人にのぼるとも言われている。しかしながら、国・熊本県による住民への健康調査および全容解明のための調査は、これまで一度も行なわれていない。
 本研究では、水俣病の被害実態を正確に把握するため、水俣病多発地区の中でも戦争と公害に翻弄された歴史を持つ「茂道」地区に限定し、住民からの「聞き書き」を中心とした長期滞在型の聞き取り調査を行なう。聞き取り調査は、2004(平成16)年から継続して行っており、これまで30名の住民に協力していただいている。
 今回は「水俣市茂道の歴史的形成過程と水俣病発生前後の住民の生活」を明らかにするために、水俣病認定患者夫婦から戦前から昭和30年代前後の茂道集落全体の生活の様子と個人の生活史を聞き取る。また、第21海軍航空廠袋補給工場跡地の元住人4名から生活の様子と水俣病発生時の状況について聞き取りを行ない、これまでクローズアップされてこなかった戦争と水俣病の関係についても解き明かす。
 茂道の歴史を知る古老たちが生きている間に、日常生活により細かく人間の襞にまで立ち入ることのできる聞き取り調査を行ない記録することが、国・熊本県・チッソの加害責任を問う歴史の検証につながると考える。水俣病事件の検証を行うことは、新たに他の地域・種類の公害・事件・事故などが起こった際、補償問題を考える上で大きな意義を持つ。


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グループ名
代表者名
乳歯保存ネットワーク
松井 英介さん
応募金額 100万円
テ ー マ 個人の被曝量を特定できるストロンチウム90の測定法の確立および乳歯保存・測定のためのラボ建設の計画と調査
概  要

・2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故は、莫大な量の人工核分裂生成物を環境中に放出した。ストロンチウム90もその一つであり、カルシウムと類似の挙動をとり骨や歯牙組織に入り長期間体内から排出されずに白血病等の発症のリスクを高める可能性がある。
・ストロンチウム90は、1950年代から大気圏内核実験や発電所事故の際には国内でも観測体制がとられていた。しかし、残念なことに日本政府や福島県「県民健康調査」検討委員会では、今回の事故が国内の至近で発生した重大な事故にもかかわらず系統的なモニタリングは一切行っていない。
・このような現状のもと、私たちは比較的容易に手に入る乳歯に着目してストロンチウム90 の測定を「当面」の目標に活動を計画している。
・この目標を遂行するため、(1)福島県を中心に乳歯収集のネットワークを確立する。(2)スイスで行われている比較的簡便なシュウ酸塩法によるストロンチウム90測定法に改良を加え、個人の被曝量の特定ができる程度まで高度な測定法を確立する。(3)その上で測定所を開設する。
・私たちの活動成果は、ベータ線の被ばくの実態を明らかにし、生体影響について科学的に言及できる第一歩として期待できる。


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グループ名
代表者名
岩内原発問題研究会
斉藤 武一さん
応募金額 100万円
テ ー マ 北海道における旧炭鉱の「ズリ山」の放射能汚染について
概  要

 泊村、夕張市など旧炭鉱の「ズリ山」がある北海道の6市町村で、ガンの死亡率が非常に高くなっている。「ズリ山」の石炭に含まれているウランからラドンガスが発生していると考えられる。
 北海道には「ズリ山」は全部で100以上あるが、そのうち何地点かを選定(今のところ3地点を予定)し、「がん」とラドンガスの関係を明らかにしたい。
 ラドンガスの実際の濃度測定は泊原子力発電所近くの旧茅沼炭鉱を含む「ズリ山」でラドンガス測定器を用いて調査し、期間を設け季節ごとに行う。
 ラドンガスの測定には、家庭用や低価格の携帯用機器では測定時間が長時間にわたり(24時間以上かかる)、ズリ山での測定には不向きである。10分程度の短時間でも測定できるスポットタイプの測定器が必要になる。アメリカ製のスポット測定機器「ドーズマン」の仕様は、シリコン半導体検出器でアルファー線スペクトルをもとにラドン濃度を測定、ラドン濃度・湿度・温度・気圧・平均ラドン濃度を測定できる。また測定間隔(時間)の任意変更が可能となっている。
 測定調査後、結果を取りまとめ公表し、関係機関に対策を求めていく。


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グループ名
代表者名
諫早湾アオコ研究チーム
高橋 徹さん
応募金額 50万円
テ ー マ 諫早湾調整池から有明海に排出されたアオコ毒ミクロシスチンの残留、蓄積、分解と水生生物への移行
概  要

 諫早湾干拓事業は有明海の潮流に影響し、赤潮大規模化や貧酸素の原因になったと推定されている。一方で調整池からの排水のCOD負荷は工事前の3倍近くになっており、漁場への直接的悪影響は明白である。特に、 2011と2013年度当助成研究を含む10年間の調査で、諫早湾調整池で産生されたアオコ毒ミクロシスチン(MCs)が年間数十〜数百kg海域に排出されていることが判明し、アオコが発生してない低水温期を含め、海底の堆積物に残留している事が確認された。農水省は、アオコは海域に排出されると死滅し、毒素も分解菌に分解されるから問題ないとしている。しかし、我々の予備的室内分解実験では、低水温の堆積物中ではMCsの分解が止まる一方、合成は進行していた。本研究では、同様の実験を行い、堆積物中のMCsの消長を遺伝子レベルで明らかにしたい。そのために、堆積物中MCs濃度が高くなる9月頃の調整池堆積物を用い、異なる温度系列で分解過程を追跡する。そして、採取した泥の一部からアオコがもつMCs合成酵素と分解菌の分解酵素遺伝子をコードするmRNAを抽出し、RT-PCRで遺伝子発現量を定量する。このことで、冬期の残留が分解速度低下に起因する事を証明し、アオコ発生期以外にも警戒が必要であることを示したい。一方で、底生生物を通した魚介類への影響を明らかにし、調整池に海水を導入する以外、有明海の広域汚染を解決する方法がない事を示す。さらに、同様の状況がみられる韓国など他地域の問題解決にも寄与したい。


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グループ名
代表者名
原子力規制を監視する市民の会
阪上 武さん
応募金額 50万円
テ ー マ 原子力規制行政の監視・検証
概  要

 原子力規制を監視する市民の会は、原子力規制行政の監視活動を続けており、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査及び寿命延長審査に係る調査研究活動を行ってきた。原発再稼働に際し、地震動や耐震評価、火山リスク等をめぐる問題、運転開始30年経過時の高経年化技術評価及び40年経過時の寿命延長審査に係る手続き上および安全上の問題、福島原発事故で問題となっている海洋への汚染水放出の防止対策に係る問題などを指摘し、対応を求めてきた。
 2016年度は、元規制委委員の提言に端を発する地震動評価に関する問題、熊本地震や老朽化に照らしながら、耐震安全評価をめぐる諸問題、火山灰再評価の問題、フランスで発覚した原子炉鋼材の品質問題等に焦点をあててきた。
 今後の原発の再稼働に向けた安易な審査を許さないためにも、既に再稼働している原発の監視を続けるためにも、審査の過程で明らかになった問題を整理し、また、新たな問題点を抽出して指摘する作業が求められている。
 また、技術論争や裁判の資料としても活用できるよう、公開されている審査資料や映像記録、議事録に基づき論証的に、なおかつ、様々な場面で活用できるよう、市民にもわかりやすく整理することが、市民科学の課題となっている。
 検証のテーマとしては、これまでの審査で問題となった事柄の整理に加えて、特に注目すべき審査として、沸騰水型原発で優先審査となった柏崎刈羽原発6・7号機の審査及び裁判闘争が本格化する美浜3号機、高浜1・2号機など40年超え老朽原発の寿命延長ための審査が挙げられる。


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グループ名
代表者名
新外交イニシアティブ
猿田 佐世さん
応募金額 50万円
テ ー マ 米国政府・政界・学界等における原子力エネルギー政策の検証:連携の可能性を求めて
概  要

 日本の原子力政策に多大な影響を及ぼす米国の対日原子力政策や米国国内の原子力・再処理の現状について調査し、原子力エネルギーをめぐる日米外交のパイプを拡大すべく、両国で働きかけを行う。
 米国の対日原子力政策について、日本では米原発推進派の声ばかりが報道される。例えば、福島原発事故発生後、2012 年には民主党政権(当時)が「2030年代に原発ゼロ」を目指す閣議決定を行おうとしたが、「米国」が反対して見送られたと報道された。半面「再処理を続けつつ原発を止め、日本がプルトニウム保有量を増加する」ことに米国が懸念を示したという事実はさほど報道されなかった。
 米国にも原発に慎重な議員や専門家、市民団体が存在し、日本の使用済み核燃料の再処理については大統領補佐官を含む多くの政府関係者・研究者等が懸念を示してきた。
 本研究では、日米の原発・再処理慎重派へ情報と討論の場を提供し、脱原発・脱再処理に向けた新たな方向性を示すことを目指す。また、メディアの恣意的な情報選択という問題点についても指摘・分析し、情報の流通を是正する。
 2017年度は、追加調査を進めると共に、2016年10月に出版したブックレットを軸に、米国の原発産業が斜陽産業であること、再処理について米国の各所から日本に懸念が示されていること、日本メディアの報道する一面的な米国の対日圧力について等、シンポジウム等での発信を通じて日米において問題提起を行う。2018 年の日米原子力協定の満期を良いタイミングと位置付け発信を強化する。


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グループ名
代表者名
貝類多様性研究所/泡瀬干潟を守る連絡会
山下 博由さん
応募金額 58万円
テ ー マ 沖縄県沖縄市泡瀬干潟の埋立工事に伴う干潟環境・生物相変化の研究
概  要

 沖縄県沖縄市泡瀬干潟では,国・沖縄県による埋立工事が進行中である。泡瀬干潟では,海上工事が本格化した2006年前後から,干潟環境の大きな変化が続いている。埋立工事による直接的な変化のほか,埋立地の成立による潮流変化は,干潟の環境(底質など)・生物相に大きな影響・変化をもたらしている。
 近年では特に,ヒメマツミドリイシ(サンゴ)群落の衰退が大きな問題になっている。海草藻場の衰退は恒常的なものになっており,海草藻場に生息する貝類は大きく減少している。2016年10月の調査では,岩礫地においても浮泥の堆積が著しく,貝類の減少が認められた。
 申請者らは,2001年より泡瀬干潟の環境・生物調査を行っており,本研究では,そうした過去のデータや写真と,現在の状況を比較する。
 環境全般では,景観・地形・底質・海草藻場・サンゴ礁地の状態を,主に写真による比較と,今後も継続的に観察するポイントの選定を行う。生物では,過去のデータが豊富で,多様性の高い貝類を中心に調査を行い,どのような種の生息状況が変化しているのかを明らかにする。その上で,環境の指標となり得る種を選定し,定量調査や継続的調査手法を確立する。これらの環境や生物のモニタリングでは,市民にも手軽に継続的にできる方法を模索する。
 埋立事業者・環境監視委員会は,埋立工事による環境への影響は軽微であり,環境に大きな変化があった場合も台風などの自然変化によるものとしている。こうした見解は,市民・研究者という「実際に干潟を見てきた人々」の実感から大きく乖離している。干潟環境の劣化や,生物の生息状況の変化を,分かりやすい形で把握し,写真やデータによって,社会に訴えかける。


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グループ名
代表者名
モザンビーク開発を考える市民グループ
大林 稔さん
応募金額 70万円
テ ー マ アフリカ小農主体の開発・援助に関する調査研究〜日本社会に向けた提言
概  要

 本研究は、 2015年度の研究「アグリビジネスによる土地収奪に関するアフリカ小農主体の国際共同調査研究−モザンビーク北部を中心事例として」の成果をもとに、 2016年度には「日本の官民による「回廊開発」がモザンビーク小農の暮らしに及ぼす影響に関する研究−小農主体の調査・政策提言を目指して」との題目の研究に発展させる形で実施してきた。
 これまでの研究活動では、アフリカ、とりわけ日本の官民が積極的に進出するモザンビーク北部に注目し、「経済回廊開発」の促進によって、アグリビジネスをはじめとする大規模経済投資による土地収奪(ランドグラブ)がもたらす影響について、小農主体の調査・研究・提言活動を行ってきた。2年間の助成によって、 (1) 土地収奪の背景と実態、 (2)「経済回廊開発」の実態とその影響、 (3) 日本の官民の関与の情報収集と整理、 (4)これらに関する調査・研究・政策提言における地元住民(とりわけ圧倒的多数を占める小農)の主体的な活動の支援が可能となった。
 三年目にあたる本年は、これまでの日本の市民グループとモザンビーク小農による国際共同調査研究の成果を踏まえ、日本政府・企業・学術界・社会に対して小農の視点から問題提起を行い、「日本によるアフリカでの開発・援助に関する実態」について、市民科学に基づく調査結果を提供し、共に考えてもらう機会を提供したいと考える。そのことによって、小農らとともに、これまでの蓄積を政策に反映させる努力を最大化させる。


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グループ名
代表者名
行動する市民科学者の会・北海道(略称 ハカセ)
斉藤 海三郎さん
応募金額 45万円
テ ー マ 北海道の原発と地層処分問題の科学的検討
概  要

1.これまでの調査から、泊原発敷地内で、F-1断層によって変位している「岩内層」という地層が、北海道電力が主張するような120万年前の古い地層ではなく、わずか33万年前の地層であることが確実になりました。また、同じ時期の地層が、泊原発周辺の岩内平野にも広く分布することが明らかになっただけでなく、同じ「岩内層」とされていたもののなかには、12.5万年前の地層や、22万年前の地層も含まれることが明らかになりました。そこで、今年度は、それぞれの地層が、どのような環境で堆積したかを、地層の構造の分析から明らかにすることで、この地域の全体的な地形発達史を解明し、それによって、原発の安全性にとってもっとも重要な更新世後期以降の地殻変動が、北海道電力の主張するような小さなものではないことを実証したいと思います。

2.高レベル核廃棄物の地層処分については、政府が、「科学的有望地、適地」を自ら提示し、そこでの処分を推進させたいと方針転換し、すでにそうした方向で、各地域でも説明会が開かれています。しかし、海外での地層処分の候補地や、あるいは海外で不適地とされた地域との比較はほとんど行われていないのが現状です。本研究では、それらの地球科学的な比較を行って、活発な変動帯にある日本列島での地層処分の困難性を明らかにしたいと思います。


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