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高木仁三郎市民科学基金
2019年度 国内枠調査研究助成
書類選考通過者の調査研究計画概要(受付番号順)


(下記は、それぞれの応募者の助成申込書から概要のみを転載したものです。)

代表者名 山本 章子さん
応募金額 100万円
テ ー マ グアム政府による米軍基地環境汚染調査 ―沖縄県へのインプリケーション
概  要

 2018年11月、沖縄県の調査によって、在沖米軍基地周辺の河川や浄水場など計15地点で、発がん性の有機フッ素化合物が高濃度で検出された。米軍基地による環境汚染は長年認識されてきたが、沖縄県民の生活用水が汚染されている実態があらためて示された。だが、米軍は日米地位協定を理由に、「内部調査中」との回答を繰り返すだけで、沖縄県による基地内への立入調査に応じていない。沖縄県はこれまで、年一回の基地内への立入調査が認められてきたが、2015年の日米環境補足協定成立後は、協定に規定がないとして、それさえ米軍から拒否されている。
 既存の政治や制度の中でしか動けない沖縄県に代わり、環境汚染調査の新たな可能性を見出すために、本調査研究は、グアム政府による米軍の枯れ葉剤汚染調査の詳細を明らかにし、沖縄県がなしうる環境調査の可能性を模索する。
 グアムは州よりも権限の弱い「未編入領土」であり、かつ水道などのインフラを米軍基地に依存している。しかし、グアム政府は2018年1月以降、枯れ葉剤汚染の問題で米軍を提訴するために汚染調査を進めている。米国の中で最も弱い米領土であるグアムは、1972年まで米軍占領下にあった沖縄との共通性が多く、その汚染調査の手法は沖縄にとって示唆に富むものとなろう。
 よって本調査研究では、グアム政府の環境汚染調査の全体像や特徴、独自性を解明することで、沖縄県に対して汚染調査のオルタナティブを提示する。


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グループ名
代表者名
コンゴの性暴力と紛争を考える会
華井 和代さん
応募金額 100万円
テ ー マ コンゴにおける資源採掘と人権侵害の実態調査
概  要

 本研究は、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)東部において資源採掘と地域住民への人権侵害が結びついている現状を明らかにし、資源消費国である日本の政府、企業、市民が責任ある行動をとるための提言を行う
 コンゴ東部で採掘される鉱物(スズ、タングステン、タンタル、金)が武装勢力や軍の資金源として利用されていること、そして鉱山周辺において組織的な性暴力を含む深刻な人権侵害が行われていることは、2000年代から国際社会で訴えられてきた。2018年には、コンゴ東部で性暴力被害者の救済に尽力するデニ・ムクウェゲ医師がノーベル平和賞を受賞し、本問題への国際的な関心が高まった。
 また、2010年に制定されたアメリカ金融改革法1502条での紛争鉱物取引規制に加えて、2021年からはEUによる規制が開始されることが決まった。こうした取り組みによって鉱山の6割以上から武装勢力が撤退したとNGOは報告している。
 一方で、コンゴ東部で活動する武装勢力の数は70グループに増加し、性暴力の件数は2016年の2593件から2017年の5783件に増加している(UNFPA)。
 規制によって鉱山から武装勢力が撤退しても紛争が終わらず、住民に対する人権侵害が止まないのはなぜか。それを理解するためには、1996年から20年以上に及ぶ紛争の中で、鉱物をめぐるどのような利害関係が形成され、住民の人権侵害を継続させるどのような社会構造が構築されたのかを解明する必要がある。
 本研究は、紛争鉱物取引規制がおよぼした影響を、国際機関および現地のメディア、NGO、援助機関が発信する情報と統計資料、周辺国に逃れた難民への聞き取り調査から明らかにする。その上で、紛争解決に向けて日本の政府、企業、市民がとるべき方策を当事者とともに議論する


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グループ名
代表者名
いばらき環境放射線モニタリングプロジェクト
天野 光さん
応募金額 90万円
テ ー マ 福島原発事故による茨城県の放射能長期汚染とその特徴(2)
概  要

東京電力福島第一原発(1F)事故により、福島県を始め、東北地方や関東全域は広範囲に放射能汚染された。こうした中で福島県での放射能測定はかなり集中的に行われているが、茨城県での測定は、散発的であり、汚染があるにも拘わらず、茨城県での放射能汚染の特徴は必ずしも明らかではない。一般人に対する追加被ばく線量限度である1mSvを超える場所も存在している。本研究は、茨城県における空間線量の測定を主体とし、茨城県におけるホットスポットや汚染の特徴を明らかにし、放射能汚染の将来予測を行う。1F事故が経過してから2019年3月で丸8年となり、空間線量に及ぼすセシウム-134(半減期2年)の影響はほぼなくなっている。空間線量に影響する放射性核種は、天然放射性核種以外ではセシウム-137(半減期30年)が主となってきており、空間線量の将来予測も可能である。また土壌や植物中の放射性セシウムの他に重要核種であるストロンチウム-90の測定も行い、Sr-90/Cs-137比や植物への移行係数を明らかにし、福島事故による汚染の特徴を明らかにする。空間線量値は測定器の特性によっても異なるので、我々の測定では校正されたシンチレーション測定器(日本精密測器製RADCOUNTER DC-100、堀場製作所製Radi PA-1000及びベラルーシPOLIMASTER社製PM1703MO-1BT)を主に用い、国の基準で校正された測定器アロカ製172B等とのクロスチェックも随時行う。また測定のフォーマットは統一して行う。測定で解明される茨城県内のホットスポットを繋ぎ合せると放射性プルームの流れが見て取れる。SPEEDIなどの予測モデルで放射性プルームの初期の流れが推測されているが、大気の流れは複雑であり、必ずしも推測値が実際の流れと合致している訳ではない。こうした実測による解析により茨城県民の初期被ばく、それに続く現存被ばく、将来被ばくを明らかにしてゆく。こうした調査を東海第2原発再稼働阻止に結びつける。


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グループ名
代表者名
中皮腫サポートキャラバン隊
鈴木 江郎さん
応募金額 100万円
テ ー マ 中皮腫患者に対するピアサポート活動と石綿ばく露調査
概  要

 アスベストが原因で発症する中皮腫の患者はいまピークを迎えており(年間死亡者1500人超え)、今後も十数年はこの傾向が続くと推測されている。また30歳代〜50歳代の現役世代からの中皮腫の相談が増えている。一方で中皮腫は希少ガンとして治療の開発が遅れ、治療の選択が限られている現状にある。また中皮腫患者は同じ病気の患者と会う機会もなく、精神的にも孤立した状況に置かれている。そんな中、中皮腫の患者どうしがお互いに支え合うピアサポート活動の必要性が高まっている。
 また安易に石綿ばく露不明とされる中皮腫患者が増えてきており、ばく露不明とされた中皮腫患者の石綿ばく露について改めて聴き取りし、石綿ばく露の機会を追求していく。
 調査手法としては、中皮腫サポートキャラバン隊のメンバーが、中皮腫患者に会いに行き、現在の医療面、主に経済的な生活面、精神的なケアの面で患者の要望や石綿ばく露原因をアンケートやインタビューで明らかにしていく。
 一ヶ月で4人程度への調査を予定しており、1年で50人弱の中皮腫患者から調査し、調査結果を集計分析し、医療機関や行政機関や社会一般に問題提起していく。


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代表者名 山下 慎吾さん
応募金額 63万円
テ ー マ 四万十川河口域におけるテナガエビ類幼生の分布調査
概  要

 四万十川流域では,テナガエビ類は川エビとよばれ,川漁等の生業,食文化や観光,環境学習の大切な資源となっている。ところが,2010年以降,その個体数が激減し,現在も減少した状態となったままである。
 適切な保全対策をおこなうためには,数年間の定量データに基づいた客観的な検討が必要である。これまで成体や稚エビを対象としたモニタリング調査を実施し,2018年には約半年間の禁漁措置が実行されることになったものの,個体群減少要因としては,高い捕獲圧だけではなく,河川環境にも課題がある可能性がある。
 四万十川ではテナガエビ類のうち2種(ヒラテテナガエビ・ミナミテナガエビ)が主な漁獲対象となっているが,その2種は回遊性であり,川と汽水海水域を行き来する生態特性をもっている。広大な汽水域をもつ四万十川では,幼生や稚エビが育つ河口域の環境条件が個体群保全にとって重要な要因となっている可能性がある。
 そこで,河口域におけるテナガエビ類幼生の生息分布を明らかにすることを目的として,定量的な継続調査を実施する。具体的には,テナガエビ類の第1期/第2期ゾエア幼生を対象とし,5-10月に,河口域(河口から約10kmまでの範囲)において,プランクトンネットを用いた定量採集を実施し,顕微鏡を用いたゾエア幼生の同定分析と分布情報の整理をおこなう。
 本研究により,幼生の生息分布定量データを得ることができれば,汽水域環境の重要性に関する客観的基礎情報となり,環境保全や自然再生に向けた検討が進められることが期待される。


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グループ名
代表者名
空気汚染による健康影響を考える会
山本 海さん
応募金額 40万円
テ ー マ 家庭用品から大気中に放散されるマイクロプラスチックによる汚染実態調査
概  要

 近年、柔軟剤、洗剤、芳香剤や消臭スプレーの家庭用品には、接着性のある合成樹脂成分のマイクロカプセルに包まれた香料や抗菌成分が用いられている。このマイクロカプセル化技術は、内包した化学物質の徐放性や残留性を目的としたもので、日用品を対象に実用化されるようになってからまだ10年程しか経たない新規技術である。
 マイクロカプセルの材料として、メラミン樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が使われており、マイクロカプセルは、マイクロプラスチックの一種に分類される。その大きさは数μm〜数百μmであり、大気環境に放散されれば粒子状物質として存在する。また、場合によっては、光や熱による分解を受けて、SPM(浮遊粒子状物質:粒子径<10μm)やPM2.5(微小粒子状物質:粒子径<2.5μm)となり、それをヒトが吸入することで物理的に肺や気管に影響を及ぼすと考えられる。加えて、接着性をもつプラスチック成分そのものや、その分解モノマーおよび添加物の可塑剤成分が揮発性物質として環境中に放出され、複合大気汚染へと繋がっている可能性が高い。
 消費者が、上述の家庭用品を利用することにより、マイクロプラスチックが、一般生活環境中に排出されていると考えられるが、これまで家庭用品により大気環境中に放散されるマイクロプラスチックの排出実態やその大気環境影響について検討する研究は行われていない。
 本研究では、家庭用品より大気中に放散され残留するマイクロプラスチックの測定を行い、生活環境における汚染実態調査を行う。


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グループ名
代表者名
河北潟湖沼研究所・再汽水化プロジェクトチーム
高橋 久さん
応募金額 100万円
テ ー マ 河北潟の再汽水化に向けた基礎研究@再汽水化する上での課題の整理
概  要

 日本の多くの汽水域・浅海域で生態系の破壊が進んでいる。河北潟も干拓と淡水化による生態系劣化の問題を抱えている。これまで順応的管理の手法を用いて河北潟の環境改善の取り組みを進め、一定の成果とともに河北潟の環境問題と深い関係にある農家や農業団体、自治体との間に協働の仕組みを作ってきた。しかし、主要な環境問題である水質問題は解決しておらず、この問題の解決には、順応的管理とともに潟のあり方を大きく変更することが必要である。そこで、河北潟を農業用溜池としての限定的な利用から開放し、地域が河北潟の生態系サービスを享受できる潟の再汽水化を展望するために必要な基礎研究を行い提言をまとめる。
 以下の調査、研究を実施する。
@市民の参加を募り、現場の現状(水質、植生、地下水の流入の有無等)、現場で生じている課題(水質悪化に伴う生物や農業への影響等)を詳細に調査する。
Aアンケート調査による河北潟の環境問題と再汽水化についての市民の意識を把握する。
B以上の調査から問題点の解析を行う。
 これらの調査研究により、以下の点を解決、整理することを目指す。
@再汽水化によって解決する環境問題
A再汽水化にかかる市民の誤解
B再汽水によって起こりうる環境問題
C再汽水化の上でのその他の困難(社会的・産業的な観点)
D課題の解決方向と必要な研究課題
 上記をまとめて、河北潟の再汽水化に関する提言をとりまとめる。


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代表者名 山ア 真帆さん
応募金額 23万円
テ ー マ 津波被災地域における「かさ上げ盛土工事」をめぐる市民の論理
概  要

 本調査研究は、東日本大震災津波被災地域における「かさ上げ盛土工事」をめぐる市民の論理を整理、体系化し、行政の論理への対抗軸として提示することを目的とする。2011年の巨大津波により甚大な被害を受けた被災地域では、現在復旧・復興事業が佳境を迎えつつある。特に被害の大きかった一部地域では、津波による浸水から住民の命、暮らしを守る目的で、市街地などを数m〜十数m程度かさ上げする「かさ上げ盛土工事」が選択された。同工事は行政や防災分野の専門家の「安全性を高め『住民の命・暮らしを守る』」という論理を背景に、景観や構造を大規模に改変してきた。しかしながら、同工事の実施にあたっては、守られるべき「命」「暮らし」の主語たる住民の視点が見落とされてきている。また防潮堤の建設や高台移転の実施といった「住民の命・暮らしを守る」ための関連事業においては、すでに住民や研究者・実践者らの手により対抗論理が構築されつつあるが、本課題については未だ目立った運動が見られない。
 申請者は、市民の立場から本課題に取り組み、同工事にかかる上記行政論理の相対化を目指す。具体的には、従前の中心市街地において「かさ上げ盛土工事」を実施した宮城県本吉郡南三陸町においてインタビュー調査を実施し、同工事それ自体やその結果に関する住民の意見を整理、「住民の論理」として体系化する作業に取り組む。また最終的には、本調査研究の成果を以て、近い将来に想定される大災害からの復興において、行政がより市民の視点に即した選択肢を提示できるよう働きかけていく予定である。


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代表者名 鴫原 敦子さん
応募金額 79万円
テ ー マ 宮城県における「原発事故に向き合う市民の記録集」製作プロジェクト
概  要

 福島県に隣接し、原発事故の影響下にあった宮城県における被害状況の実態把握は、事故当初から十分になされてきたとは言い難い。こうした実情を踏まえ、本調査研究では、事故後の詳細な社会的事実関係の記録と、宮城県南・県北地域を中心に市民的立場から実態把握を目指して取り組まれてきた測定・調査活動の成果を網羅的に整理・集約し、原発事故被害に向き合う市民社会の記録集を作成する。そのために、行政機関がすでに公表済みのデータ、各地の測定室や市民グループが自主的に測定したデータ(空間・土壌・食品含む)など県内に散在する情報の集約と体系的整理、および未だサンプル収集段階で調査途上の、ほこりに含まれるセシウムボールに関する研究成果も可能なかぎり含めた記録集を作成したい。
 これによって、津波被災の激甚性の影に隠れてあまり認知されてきていない宮城県の原発事故被害状況を市民社会の中で共有することをねらいとする。宮城県においては、放射性廃棄物処理をめぐる問題や廃炉作業に伴う問題、原発再稼働をめぐる問題など、市民社会内での議論を必要とする課題が山積している。にもかかわらず、原発事故がもたらした影響や被害実態について、十分な事実関係の共有がなされていない実態がある。また、復興・原発再稼働への動きが加速化する現状のもとで、原発事故後の健康影響に対して住民が抱く不安を、個人的主観や市民の「無知」に帰着させ、「正しい知識の普及」による解消を図ろうとする国や県・行政側の姿勢も顕著である。低線量被ばくの影響については未解明な部分が多く、真に予防原則にたって地域社会の将来像について市民社会内での十分な議論を行っていくためには、公論形成の土台づくりとしての事実関係の共有は必要不可欠である。本プロジェクトで作成する記録集は、被害の不可視化が進む社会状況の中で、市民的立場から収集した「科学」的根拠をもとに、必要な支援策や対応策を求めていくための基礎資料となりうると考える。


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代表者名 川尻 剛士さん
応募金額 30万円
テ ー マ 水俣病患者の生き直しに関する基礎的研究;生活史調査を通して
概  要

 熊本水俣病問題は、日本の高度経済成長期にチッソ水俣工場の汚染排水によって不知火海沿岸一帯で激甚に発生した巨大水銀中毒問題で、今日もなお続く公害問題である。現在でも確たる治療法が存在しない水俣病に対して、生存患者たちはそれぞれの生活の中で「不治」の病いと向き合ってきた。
 水俣病患者の中には、近代医療では「不治」とされる病いを「未知」の病いと捉え返して病いと向き合い直すことで、自らの生を再出発させようと努力してきた患者がいる。申請者は「竹の子塾」( 1977-1979)に参集した患者の生活史に注目してその一端を理解してきた。彼・彼女らはそこに参集して各自が生活の中での病いとの格闘を通して生み出してきた諸実践――民間療法やリハビリテーション――を共有して学び合ったのだった。また一方で、自らを生き直すために必要と思われた諸科学については専門家を呼び入れて学習したのだった。
 以上のように、患者たちは自らを生き直すためにさまざまな〈知〉を動員してきた。ここでいう〈知〉は、「科学的・理性的なもの」と「感性的・身体的なもの」との総体である。高木仁三郎は、この両者が鋭く引き裂かれ、自然とのトータルな結びつきを失っていることに「現代の危機の根源」を見取っていた。いわば、患者たちは高木の指摘を自らの生活世界において先取りして実践してきたと言える。
 本調査研究は、水俣病患者が生活世界の中でいかに〈知〉を動員し、生き直すことを可能にしてきたのか、その一端を生活史調査によって明らかにすることを課題とする。自らを生き直してきた患者像の探求は、いわば一つの「市民科学者の原型」を描き出す作業ともなるだろう。
 未だ潜在患者が多いとされ、今後も患者の苦悩が続くことが予想される「終わらない水俣病」に対して、患者たちが個別に展開してきた病いとの向き合いの軌跡を理解し、集積し、共有化することに向けた基礎的研究が求められている。


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代表者名 島 明美さん
応募金額 100万円
テ ー マ 伊達市における除染にける住民対策についての調査研究ならびに宮崎早野論文の成立の経緯についての調査および市民による論文内容の批判と検証
概  要

 伊達市で2011年から実施されているガラスバッチ測定結果をもとに、福島医大の宮崎真氏と東京大学早野龍五氏は独自に解析を行い、2本の共著論文として発表した。これらの論文は、ICRPの勧告や国の被ばく防護政策に反映され、世界の原発政策に影響を与えている。
 本研究は、伊達市が「除染都市」として世界に名を知られる、世界の被曝防護政策を塗り替えていく経緯を詳細にたどり、検証するとともに、住民のデータを解析し、論文を執筆するにあたって行われた様々な不正の全容を調査するものである。
 具体的には、情報公開請求及び独自調査、またデータや論文検証を実施し、
(1)伊達市独自の除染方針の決定プロセスと汚染状況および世論調査
(2)伊達市民データを用いた研究に伴う倫理指針違反の実態調査
(3)個人線量計のおよび取得データの問題の検証
(4)内部被曝データが論文化されなかった背景の検証
(5)研究論文の誤り・不正の検証
(6)世論を封じ込めるために、電通を使って実施したアンケート調査の背景
(7)伊達市に置ける放射線アドバイザーおよび放射線安全フォーラムの関与と意味
(8)低線量被曝ワーキング・帰還のための安心安全検討チーム、原子力規制委員会や放射線審議会に対する伊達市データの影響
(9)ICRP・IAEA・UNSCEARに対する伊達市データの影響
以上を調査し、報告書にまとめて広く発信するほか、この伊達市の住民データを活用した研究者(田中俊一氏・早野龍五氏ら)と、黒川眞一氏と市民との対論(ダイアログ)を開催する。


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グループ名
代表者名
ふくいち周辺環境放射線モニタリング・プロジェクト
満田 正さん
応募金額 50万円
テ ー マ 福島第1原発周辺地域の空間および土壌の放射線測定
概  要

 2011年の福島第一原発爆発事故で、放射性物質に汚染された福島県南相馬市鹿島区・原町区の山側8行政区(特定避難勧奨地点のあった地域)を中心に、2012年10月より積雪の可能性のある2月を除き毎月1回(約1週間)、これまで56回にわたる放射線測定を行っています。2015年からは伊達市や川内村、避難指示が解除になった飯舘村、浪江町、富岡町、葛尾村、川俣町山木屋等に測定エリアを広げています。
 測定は、メッシュ法を採用しメッシュ内1点を、以下の4項目の測定方法により放射性物質の汚染状況を記録しています。
@ 日立製の空間線量測定器(アロカTCS172B/1172)による地上1m/50cm/1cm高の空間線量率(μSv/h)測定
A 日立製の表面汚染測定器(アロカTGS146B/1146)による地表1cmの表面汚染計数率(cpm)測定
B 上記測定時にスマートフォンと無線で繋いだ簡易型放射線測定器(ギョロガイガー)を使い位置情報・時刻情報・空間線量率を焼き込んだ写真撮影
C 土壌を採取し放射性セシウムの定量分析(土壌分析にはキャンベラ社製放射能食品分析器を使用)
 その他、2015年4月提訴の「南相馬・20ミリ基準撤回!」訴訟弁護団と原告団に測定データを提供し、原告団勉強会に参加しています。2018年からは各地で争われている原発被災者(避難者)訴訟弁護団依頼の原告宅モニタリングにも取り組み報告書を提出しています。
 なお、私たちの活動は、60歳以上のシニアを中心として、全てをボランティアとして行っているものです。


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グループ名
代表者名
太平洋核被災支援センター
橋元 陽一さん
応募金額 100万円
テ ー マ 太平洋核実験による放射線被災実態を解明し、被災船員救済のための研究をすすめる。
概  要

 「ビキニ水爆実験による第五福竜丸以外のマグロ船と貨物船などの被災の実態と乗組員の健康状態追跡調査」にこれまで取り組んできた。核兵器禁止条約批准を視野に入れたビキニ事件の歴史的検証が重要になっている。
 ビキニ水爆実験による被災船員は高齢化とともに健康を害し、癌の発生率が高まり、「死の灰」を受けた被災船の船員の3分の2以上がすでに死亡している。広島大学などの研究者の協力をえて、被災漁船員と同世代の男性の病歴、死亡原因調査を実施したい。 
 そして、議員立法の「核実験被災船員救済特別処置法」の制定と、核兵器禁止条約発効後の救済のための資料を作成したい。


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代表者名 伊藤 延由さん
応募金額 30万円
テ ー マ 福島県飯舘村の村民のための、放射能による村内環境汚染の実態調査
概  要

 飯舘村は2017年3月末日に一部地域を除き避難指示が解除され帰還が進められています。
 2019年3月末には避難所の廃止が予定され家賃など自己負担が出来ない家族は止む無く帰村を選択せざるを得ない環境に追い込まれます。
 しかし村内の汚染環境は巨費を投じて除染したと言うものの除染の範囲は村の面積の15%のみで依然として高い汚染環境であり見方によっては年々高まる場所もある様に感じています。
 そんな環境にも関わらず村政執行の基本は恰も飯舘村にある放射性物質は無害を思わせる事が連なっています。
 ・学校の村内再開(認定こども園、小中一貫校)
 ・村内の水田で小学生の田植え
 ・野焼きの実施(2019年3月)
 等とても村民の被ばく回避を考えている様には思えません。
 福島県も同様で県内自生山菜・茸の販売制限に真剣に取り組んでいるとは思えない事態に私自身が遭遇しました。
 昨年も“自然の循環サイクルに組み込まれた放射性物質の挙動は理解し難し”としましたが、汚染実態を測り続け発信し帰還村民の被ばく回避に役立つ活動を行います。


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グループ名
代表者名
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
青木 一政さん
応募金額 50万円
テ ー マ 焼却による放射性ごみ処分の問題点調査と環境汚染監視
概  要

 本研究は2018 年度助成を受けた「放射性ごみ『リサイクル計画』の実態調査と環境汚染監視」の継続である。18 年度の活動により、汚染廃棄物焼却や木質バイオマス発電に反対する住民グループとの連携が広がり、リネン吸着法等による監視の動きも予想以上に広がった。このためテーマを「焼却による放射性ごみ処分」に改め、対象をより明確化した。また監視や啓発・宣伝による運動の強化により重点をおいた形で展開する。
 除染廃棄物、放射能を含む焼却灰、農林業系汚染廃棄物等、いわゆる放射性ごみの「リサイクル」が進んでいる。この計画の主要な施設が@一般ごみ焼却炉、Aセメント焼成炉・灰溶融炉、B木質バイオマス発電である。
 @では減容化の目的で可燃性の除染廃棄物を焼却している。
 Aでは焼却炉から排出される飛灰(セシウム等を高濃度で含む)を、高温で熱処理しセシウムを気化、脱離させ生成物を建設資材として再利用するものである。
 Bでは不足する木材燃料をまかなうため、福島県周辺の高濃度汚染森林の伐採木が燃料として流通して焼却されている。
 これらの設備の飛灰回収には共通してバグフィルターが使用されている。しかし、バグフィルターはPM2・5(微小粒子状物質)の捕捉能力は無く、微小粒子状飛灰の拡散による環境汚染の危険性がある。また高濃度のセシウム等を含む焼却灰の管理型処分場への最終処分も環境汚染の危険性がある。
 これらの中止を求める各地の運動と連携して環境汚染監視をおこなう。また設備能力や運用の実態調査と問題点の明確化を行ない運動の拡大強化に資する。


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グループ名
代表者名
泡瀬干潟を守る連絡会
前川 盛治さん
応募金額 50万円
テ ー マ 沖縄県沖縄市泡瀬干潟の埋立工事に伴う干潟環境・生物相の変化
概  要

 これまで泡瀬干潟のサンゴ群落、貝類、ホソエダアオノリなどの調査を実施してきたが、泡瀬干潟の現状を把握するため引き続き調査を実施したい。サンゴ群落の定点観測(以下1の(1))は埋め立て工事の周辺の環境への影響を測ることを目的とし、移植サンゴの現状調査(1の(2))は事業者が行った環境保全措置の適正を見ることを目的とする。ホソエダアオノリの大発生は工事の影響により水の流れに変化が生じたことによるものと思われるため、大発生による生物への影響を測ることは工事の影響を測ることにつながる。
1.サンゴ群落の調査(2005年〜2018年)
(1)2005年より2016年までの西防波堤北西部のヒメマツミドリイシの定点(100Mライン)。2016年以降現在までの新たな25平方枠のヒメマツミドリイシの定点調査
(2)沖縄市やNPO法人が実施したサンゴ移植地の定点調査(東防波堤西側のテトラポット移植サンゴ及び海域の移植サンゴ
2.貝類調査(2017年度)
 2017年4月以降の緑藻類(ホソエダアオノリ)の大量発生による貝類(おもに二枚貝)の大量死
3.2019年度調査
(1)これまでのサンゴの定点調査では、サンゴの被度が大きく低下し、継続調査の意義が失われたが、消滅したヒメマツミドリイシ群落の周辺に新たな群落が形成されており、その場所の25平方枠を新たに2箇所設定し、継続調査したい。また、移植サンゴについても継続調査したい。
(2)泡瀬干潟では、2017年度からホソエダアオノリの大量発生があり、2018年度も大量発生があった。その貝類や他の生物に対する影響を引き続き調査したい。


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グループ名
代表者名
被ばく労働を考えるネットワーク
なすびさん
応募金額 50万円
テ ー マ 原発労働者の労働安全・補償制度と被曝労働災害の実態に関する国際調査(その3)
概  要

 福島原発事故以前から政府と電力会社及び元請会社は、原発労働者の労働実態と健康被害状況について隠蔽と言って差し支えないほど明らかにしていない。しかし多くの証言から、主として非正規雇用労働者が使い捨てられてきたことは明らかである。労働者保護制度は不備であり、使いうる制度さえ労働者がアクセスしにくい環境が作られている。原発被曝労働に関する実態解明と労働安全・労働者保護制度そのものと運用のあり方の抜本的見直しは緊急の課題である。また、原発問題のアキレス腱でもある被曝労働問題があまり注視されないのは、原発を持つ他の国でも同様であり、この問題は国際的な共通課題である。
 本研究では、日本のみならず原発を有する各国について、公開資料等から原発労働者の労働安全制度と労災補償制度について比較するとともに、各国の労働団体・市民団体と協力して労働者への聞き取り調査を行い、労働実態と労災・健康被害の国別比較を行い、そこから捉えうる問題を明らかにすることを目的とする。
 研究を進める国内体制としては、被曝労働問題に取り組む諸団体や社会学的調査の経験がある研究者と共同で行う。国際的体制としては、これまでの調査研究に参加したウクライナ、フランス、ドイツ、韓国、アメリカ、日本の6カ国の協力体制で進める。
 この調査研究は2017年度に高木基金の助成を得て開始され、初年度は主にフランス、韓国、日本について、2018年度は主にドイツの調査が行われた。本申請では、これらの調査結果を集約しつつ、いまだ原発大国であるアメリカの調査と、チェルノブイリ後も原発が稼働するウクライナを重点的に行う。
 この成果は、労働者や市民に対して被曝労働に関する正確な情報を提供するために用いるとともに、各国政府および事業者に対して、労働安全・労働者保護制度の改善を要求するために用いる。


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グループ名
代表者名
放射能を含む廃棄物から子供たちと大久保の自然を守る住民の会
北澤 勤さん
応募金額 50万円
テ ー マ 放射性物質を含む廃棄物最終処分場予定地周辺の住民参加型環境調査
概  要

 福島第一原発事故後に大量の放射能汚染された廃棄物が発生したことを受け、放射性物質に汚染された8000Bq/kg以下の廃棄物が含まれていても、産廃事業者等により通常の廃棄物と同様に処理が可能とされるようになり、放射性物質の拡散が懸念されています。 2015年、民間事業者により長野県宮田村に、放射性物質に汚染された廃棄物を含む処分場建設計画が持ち込まれました。宮田村のある伊那谷地域は南アルプスと中央アルプスの高い山々に囲まれ、放射能汚染のほとんどない地域です。住民一丸となり、全国からも支援を受けながら反対運動を続けてきましたが、計画は中止されることなく、事業者は予定地にある旧セメント工場の解体に向けて準備を進めており、いつ処分場設置許可申請の手続きを始めるかわからない状況です。
 予定地は地下水の挙動が複雑であり、処分場としての適正を評価検証する必要があります。そのためには、本申請調査研究では、まず、水質、土壌、大気の状況を測定し、現状の環境状況を把握します。また、継続的なモニタリングのための地域環境調査と事業監視体制を構築します。
 調査結果は、処分場認可を審査する長野県への要請行動、および事業者との協議に活用し、また万一処分場の建設、操業が始まった場合には、モニタリングの比較基準とします。


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グループ名
代表者名
遺伝子組換え食品を考える中部の会
河田 昌東さん
応募金額 66万円
テ ー マ 輸入遺伝子組換えナタネ輸送路沿道におけるナタネの自生と交雑種に関する調査・研究
概  要

 本調査・研究では、輸入ナタネの運搬経路である国道23号沿道(三重県四日市市-津市)におけるナタネの自生状況を定期的に調査し、簡易検査によって自生ナタネの遺伝子組み換え(GM)率を把握する。
 さらに、アブラナ科雑草(イヌカキネガラシ・ハタザオガラシなど)との交雑を疑われる個体を採取し、PCR検査によって種の断定とアブラナ科雑草への組み換え遺伝子の移行の有無を確認する。
 これらの調査・研究結果を一般市民と共有するとともに、当該地域でのGMナタネの自生拡散防止、交雑防止活動に役立てる。
 さらに、この調査結果を地方自治体および環境省・農林水産省へ提出し、遺伝子組み換え作物の運搬方法の見直しと、カルタヘナ国内法の改正への足がかりをつくる。


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