高木仁三郎市民科学基金は、アメリカなどがイラクへの先制攻撃を準備していることに対し、3月19日、下記の緊急声明を発表し、内閣総理大臣官邸、在日米国大使館、在日英国大使館に発信しました。
2003年3月19日
高木仁三郎市民科学基金は、アメリカによる対イラク先制攻撃に強く反対する。
同時に、日本政府がアメリカによる対イラク先制攻撃を支持したことに対し、
厳重に抗議する。
高木仁三郎市民科学基金
代表理事 河合 弘之
代表理事 飯田 哲也
事務局長 高木 久仁子
事務局 菅波 完
アメリカのブッシュ大統領は、3月18日、イラクのフセイン大統領が48時間以内に国外に退去しない限り、同国が、イラクに対し先制攻撃を行うと表明した。
これに先立ち、アメリカ・イギリス・スペインは、イラクに対する武力行使を容認する新たな国連決議を安全保障理事会に提案したが、事実上、他の常任理事国に拒絶された。
安全保障理事会の支持がない状態での武力行使について、アナン国連事務総長が、その正当性に疑問があると指摘しているように、これまでの国連決議によって武力攻撃が正当化されるという、アメリカの説明は、説得力が無く、自らの主張を一方的に正当化するだけのものと言わざるを得ない。
高木仁三郎市民科学基金は、脱原子力の活動と「市民科学」に生涯を捧げた故高木仁三郎の生前の遺志に基づいて、次の世代を担う「市民科学者」を育成することを使命とする。
その根底には、現代の科学技術が物質的な「進歩」をもたらした一方で、科学技術そのものが「市民社会への脅威」として、人間の生命を危険にさらし、社会と文化の存亡を脅かし、地球環境の持続的な維持すら、不確かなものにしているという危機感がある。
今、問題の焦点となっている、核・生物化学兵器など、いわゆる大量破壊兵器は、まさに「市民社会への脅威」たる科学技術の典型であり、戦争は、環境破壊の最たるものである。
これらの問題は、国連の査察に基づく管理・廃棄など、国際的な協調のなかで解決を目指すことが、強く望まれる。
それこそが「市民科学」の立場であり、その努力を放棄し、圧倒的な武力、すなわち、科学技術の独占的な支配をもって制圧しようとするアメリカ等の姿勢は、「市民科学」の対極にあるものである。
アメリカが指定した48時間を、何らかの期限として認めること自体が憚られるが、残された時間の中で、外交努力を尽くし、武力行使によらない解決への方策を探るよう、アメリカ、イギリスおよび日本の各国政府に、強く求めるものである。
以 上