高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

高木基金の取り組み

トップページ > 高木基金の取り組み > インタビュー > 宇井 純さん

この人に聞く 宇井 純さん


宇井  せっかくだから、こんなものをやってきたという絵がありますので、絵を見ていただきます。


始めの絵は話の導入ですから、普通に見てもよろしいと思いますが、外国人を対象にしますから、沖縄というのはここにありますよ、という話から始まります。

しかし、沖縄から円を描いてみるとアジアがうんと近いというのは実感としてあります。


これは沖縄本島です。この小さな島に小さな王朝があって、今まで栄えてきたという話をします。


景色が非常に良いところですから、こういう観光地としての利用は、たまにされていますが、実際には、米軍基地があって非常に窮屈な場所だということも付け加えます。

ところで、今沖縄を開発して一番大きな損害は、何かというと、結局米軍基地があることによってドカッとやってくる公共事業から生ずる、赤土の流出が一つですね。

雨が降ればこういう風なものすごい赤土の流出が起こります。普段はほとんど水が流れてないですから気がつきません。


その結果として、綺麗に生きたサンゴと死んだサンゴを撮った人がいるんですけれども、この方は事故で亡くなった吉嶺全二さんという方ですが、長年サンゴの写真を撮ってまして、全く同じサンゴが生きている時がこうで、死ぬとこうなりますという写真を撮りました。


これ(右図)はもう一つ有名な例ですけど、68年に生きていたサンゴが、82年には死んでなくなりました。
これはまだ形をとっている間はいいのですが、恐らく1年すると波で崩れてなくなってしまうであろうと。ですから、非常に丁寧にこの写真は撮られてますね。


少しでも赤土の流出を減らすことで、雨水をまず中水道、つまりトイレの水ぐらいに利用する試みを沖縄大学でやっているんです。


屋上に水を貯めて、曝気漕を作ってそこで下水を処理して、また水洗便所に戻すということをやりました。


調子が良いときには雨水を流していますから、こんなきれいな水で、調子が悪くて水洗便所の処理水、浄化槽の処理水だと少し色がついてこんなふうになる。その日の調子、まずお天気によって調子が変わる。


雨が降らないでこの水を何回も循環させて使うようになると、確かにだんだん色がついて臭いがでてくる。

そうしたら、どのへんまで我慢ができるかというのももう一つデータになる。つまり、自分が出したものを流すだけの水として、どのへんまで我慢できるか、これはまだ苦情はきていないですが、苦情がきたら、何回廻したかというデータが採れますから、調べようとは思っております。

宇井  もう片方で、沖縄中南部の中小河川ていうのは、どういう用途にも使えないくらい真っ黒になってしまう。


これは畜産排水が無処理で放流されていることから起こるんですね。豚は産まれてから1年くらいで成豚になり100キロを超える。人間の10倍くらい食べますから、人間の10倍くらい排泄する。それをそのまま川に流すということが続いています。


これをなんとかできないかということで、こんなふうな池を作って、ウナギの養殖用の水車で撹拌をしてみた。


こういうものは動かしてみないと分からないものだとしみじみ思ったんですが、だいたいここの農家の規模からいって、出てくる汚水の量は1日1トンくらい。だから50日から100日溜めて処理してやれば間違いないだろうと思ってこの池を作った。実際には、材料費はこっちが支給しましたけど、作ったのは農家が自分ブロックを積んで作ったのです。

ところが実際に運転しますと、1日30トン入ってくる日がある。こんなものは全然予想してなかったと農家に文句をいいますと、「豚を出荷した後の豚舎を掃除すれば30トンくらいの汚水は出てきます」と。そう言われりゃそうなんですが。こういうものを固定した連続の装置で、例えば1トンで設計したところへ30トンも入ってきたら、完全に壊れちゃって、そのあと2〜3ヶ月は動きません。

連続の施設はそういう性質なんですけれど、ここでは、回分ですから、バッチでやってますので、30トンくらい入ってこようとどうということはないですね。

それから、台風が来そうだというときは、この水位のレベルを前もって下げておけば、100ミリや200ミリの雨なら溢れないでいられる。

そうやって処理した水を、プロセスはこういうわけですが、下水が入ってきて、それを撹拌曝気をして、それから沈殿した上澄みを取り除く。そしてこれを繰り返すのです。


成績を若干挙げておきますと、例えば入口のBOD、水の腐り易さの水質項目なんですが、出口はだいたい100ぐらいですから、ここでは下の座標軸に入っちゃって、ちょっと表現のしようがないということになります。


アンモニア性窒素はこんなふうなデータです。


硝酸を含めた全窒素。実はこっちの方が宮古島みたいな飲用水として地下水を使うところでは大問題になるんですが、これはこんな結果です。全窒素といってもだいたい80〜90%取っているということは間違いない。



問題はこのMLSS(活性汚泥量)といっている汚泥の濃度なんですけど、減り気味なんですよね。


お百姓に、「こいつは働いている微生物だから畑には撒かないでくれ」とかなり厳重に言ったつもりなんですけど、上澄みをみんな肥料として使っている農家に言わせると、「上澄みだけであれだけ利くんだから泥はもっと利くだろう」ということで、どうもこっちの目を盗んで抜いているらしい。だから、どれくらい増えていくのかというデータが取れてないんですね。

これは大変大事なデータでして、1年間に1回程度抜けばいいのか、あるいは毎日抜かなきゃならんのかが分かるデータなんですが、今のところ、これについては、そういうわけで答えが出せていないというのが正直なところです。

たぶん3ヶ月に1回くらいドカンと抜くぶんには支障がないだろうと思っています。

これはレタスですね。これに処理した水を撒くと、だいたい10日早く出荷できる。ということは、レタスは普通65日くらいで出荷できるので、1年3回転というのが普通なんだけど、この水を使っていると4回転できるのでそれだけ得になる。というので、絶対捨ててないはずなんです。


捨ててないというのが大事なところであろうと思います。これで経験して辿りついたことは、1日1トンくらいの汚水を処理する池として、例えば100トンくらい容量を持っている。つまり、能率として非常に悪いんですね。普通はこんな能率の悪いことはやらないんです。しかし能率を思いきって下げると、さっき言った30トンの水が入ってきても何とかこなしていけるというように、安定性がよくなる。

安定性が良くなりますと、実はこの池一つで、有機物の除去あるいは悪臭の除去、それからアンモニアの酸化、そして泥と上澄みの分離というふうな、いくつもの機能をこの池で交互にやることができる。

そうやって能率を思い切って下げて、一つの要素に幾つかの機能を持たせる、どれも適当にやらせる、ということをやってみてふと気が付いたのは、これは昔どこかで見たなという記憶です。それは確かに自分も高校まで経験した小農複合経営なんですね。つまり、1枚の畑に米を作ったり野菜を作ったり、いろんなものを輪作やなんかを換算にいれて交互に作る小農複合経営。一つの池にいろんな機能を持たせて交互にやらせる。

そうしますとと、汚水処理というのはバイオテクノロジーですが、バイオテクノロジーで下水道だったらすぐに1日1千トンとか1万トンとかいう規模になりますが、こんなべらぼうに大きいバイオテクノロジーというのは他に類がないんですけれども、そういう最先端のバイオテクノロジーをやってますと、もちろんバイオですから当然といえば当然なんですが、だんだんに農業に似てくる。今まで農業のほうが一生懸命工業化、大規模産地化あるいは規格の統一、周年栽培なんてことをやってきたんですけど、どうもばかばかしいんじゃないか。農業は農業らしくやった方がいいし、それから工業でも、ものによっては最先端には農業に近くなってくるというのは、長いこと工業の第一線にいて仕事をした職人の結論であるということになります。

そういう点からいっても、やはり原子力発電みたいなものは手に負えないのだということですね。手に負えるもので我々生きていくしかないんじゃなかろうかと、こんなところに辿りついたというのが私の結論です。絵を見ていただいたんですけど、こんなことをこの数年やってきました。

司会  どうもありがとうございました。ディスカッションの時間に移りたいと思いますので、どなたか質問ございましたらどうぞ。

PAGE 1 / 2 / 3 / 4 / 5


HOME | 助成応募の方法 | これまでの助成研究・研修 | 高木基金の取り組み | ご支援のお願い | 高木基金について
ENGLISH  | サイトマップ | お問い合わせ 個人情報の取り扱い