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高木基金の15年を振り返り、「市民科学」の可能性を展望する
−助成先からの経過報告・メッセージ−



原子力資料情報室/伴 英幸さん・澤井 正子さん ほか



【助成の概要】
〔2002年度〕高レベル放射性廃棄物地層処分の批判的検討/200万円
〔2003年度〕高レベル放射性廃棄物地層処分の批判的検討(地層処分問題研究グループとしての
      助成) /120万円
〔2003年度〕原子力機器の材料劣化の視点からみた安全性研究/100万円
〔2004年度〕JCO臨界事故の原因と影響に関する調査報告書の英訳出版(JCO臨界事故総合
      評価会議としての助成)/30万円
〔2004年度〕六ヶ所再処理工場に関する包括的批判的研究/100万円
〔2004年度〕高レベル放射性廃棄物地層処分の批判的検討(地層処分問題研究グループとしての
      助成) /35万円
〔2004年度〕維持基準の原発安全性への影響に関する研究/90万円
〔2005年度〕コスト計算に含まれない原子力発電の諸費用に関する調査研究/50万円
〔2006年度〕「高経年化(技術)評価報告書」の詳細な批判的検討(原発老朽化問題研究会とし
      ての助成)/100万円
〔2006年度〕六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する調査研究(六ヶ所再処理工場放出放射
      能測定プロジェクトとしての助成)/120万円
〔2007年度〕六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する調査研究(六ヶ所再処理工場放出放射
      能測定プロジェクトとしての助成)/100万円
〔2008年度〕地震動を考慮に入れた原発老朽化の検討(原発老朽化問題研究会としての助成)
      /70万円
〔2008年度〕六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する調査研究(六ヶ所再処理工場放出放射
      能測定プロジェクトとしての助成)/110万円
〔2009年度〕地震動を考慮に入れた原発老朽化の検討(継続)(原発老朽化問題研究会として
      の助成)/90万円
〔2010年度〕六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する調査研究(六ヶ所再処理工場放出放射
      能測定プロジェクトとしての助成)/80万円
〔2010年度〕美浜1号炉の高経年化技術評価報告書の批判的検討(原発老朽化問題研究会として
      の助成)/70万円
〔2011年度〕六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する調査研究(六ヶ所再処理工場放出放射
      能測定プロジェクトとしての助成)/80万円
〔2011年度〕玄海1号炉の高い脆性遷移温度の検討(原発老朽化問題研究会としての助成)/70万円
〔2012年度〕ユーストリームの活用による原子力に関する科学的情報の提供/30万円
〔2012年度〕六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する調査研究(六ヶ所再処理工場放出放射
      能測定プロジェクトとしての助成)/80万円
〔2015年度〕高レベル放射性廃棄物処分場選定手続きにおける社会的合意形成手法と安全性確認
      に関する研究/60万円
〔2016年度〕高レベル放射性廃棄物処分場選定手続きにおける社会的合意形成手法と安全性確認
      に関する研究<その2>/40万円
【助成累計金額】 1,825万円

☆高レベル放射性廃棄物問題研究
 2001年〜03年まで総額355万円の助成を受けた。現在の日本原子力研究開発機構が2000年に報告書「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性」を公表したことを受けて、これを批判的に検討した報告書を取りまとめて公開した。また、岩波の雑誌「科学」に投稿し、JAEAとの誌上論争を行った。研究活動はその後も続いており、これまで経済産業省と公開討論会などを開催するなどをしてきた。また、同省と双方向シンポジウムを12年から14年まで実施してきている。(http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/sohoko/2012/index.html
 現在も活動を継続しており、近々に公開されるNUMOによる2015年レポートの批判的検討を進めようと準備している。高木基金からの助成によって、同研究のスタートが可能となり、また、その後の活動の基礎をつくることができた。
 
☆原発老朽化問題研究
 2002〜03年、05年、07〜10年と助成を受けた。総額590万円。その時々の具体的な課題は異なるが一貫して原発の老朽化による危険性を追及してきた。07年から2年間は地震動の老朽原発への影響を、09年から2年間は原子炉圧力容器の脆性遷移温度の上昇による危険性を追及している。現在もこの研究を続けており、使用されている脆性遷移温度予測式の不十分さについて、金属学会への問題提起、「科学」誌上での問題提起、さらに規制庁交渉などを行いながら継続している。
 
☆六ヶ所再処理工場からの放射能放出に関する調査研究
 2003年度に包括的批判的検討を行い、07~11年度まで放射能放出に関する調査を進めてきた。総額670万円。同工場の稼働前の汚染状況をバックグランドとして把握し、またアクティブ試験後の汚染状況を把握するための活動であった。トリチウムと炭素14を測定してデータを蓄積してきた。炭素14の測定は年代測定にも利用されているが、加速器を使って行うためコストが高く、高木基金の助成のおかげで測定を継続できたと言える。11年に福島原発事故が起きてこの測定委託先の状況が変化したこと、並びに、08年度よりアクティブ試験が停止し、その後は新規制基準への適合審査で運転再開が先延ばしになっていることから、測定調査研究を中断している。今後は審査状況を見ながら再開を計画したいと考えている。
 
☆その他に、JCO臨界事故を受けて、総合評価会議を発足させて事故原因や背景問題を提起してきたが、その報告書の英訳に関して助成を受けた(03年度30万円)。また、原発のコスト試算に関して試算項目に含まれない原発のコスト(研究開発や交付金など)について調査した(04年度50万円)。なお、福島原発事故後に政府が行ったコスト計算ではこれらの費用項目が反映されている。2011年の福島原発事故直後にはインターネットを通じての事故状況の発信が速報性の観点から必要と考えて対応した(11年度30万円)。
 
☆高レベル放射性廃棄物処分場選定手続きにおける社会的合意形成手法と安全性確認に関する研究
 2011年3月11日の福島第一原発事故を契機に脱原発を実現したドイツにおいて、高レベル放射性廃棄物処分場選定問題についての調査を継続中である。
 2022年までの脱原発決定によって「原発問題は終わった」と多くのドイツ人が考えている状況の中、高レベル放射性廃棄物処分場という最後で最大の問題に関わる政治家、専門家、地元の市民、さらにドイツ社会全体は、どのような合意形成をめざそうとしているのか。私たちの調査・研究は、特に合意形成のためにどのような手法がドイツで議論され、実行されようとしているのか、実現可能性や、社会における受容性などに焦点を当てている。この問いへの最善の回答はないと言えるだろう。しかし原子力エネルギーを利用したすべての国々で、必ず取り組まなければならない重い課題であり、よりまともな解決への道が模索されている。
 ドイツでは、合意形成という点で、「高レベル放射性廃棄物処分場選定法」において、脱原発以前から事実上唯一の候補地とされ、脱原発後も候補地の一つとされているゴアレーベンの人々や放射性廃棄物問題に関わる多くの市民団体が、政府の処分場選定手法に対して正面から異議申し立てを行い、「選定委員会」への参加を拒否している、という問題がある。あくまで「処分場拒否」を貫く地元市民団体の対応は、脱原発を決定したドイツでは、「NIMBY (Not In My Back Yard)」とされてしまうのだろうか。2016年6月末、連邦議会によってあらたな選定方法が決定され、これから作業が開始されようとしており、今後の経過を注視し、現地調査を実施したいと考えている。
 これらの調査・研究は、私たち日本の市民が最終処分場問題にどう取り組むべきか、重要な示唆を与えてくれると確信している。
 
「市民科学の重要性」
 国家は国家の方針にしたがって、研究テーマを設定し、そのための研究・教育体制をつくる。学者・研究者・専門家はその仕組みの中で養成される。そうやって生まれてくる科学、技術に市民・住民の視点が欠けているのは必然である。
 当原子力資料情報室が高木基金の助成をうけて取り組んだ、また、取り組みつつある研究テーマは、市民・住民の視点と意識に基づいて選んだものであり、その研究結果は国家の側の専門家の知見と価値判断とを強く批判するものになっている。
 高木基金のこの15年間の活動は市民・住民の批判的専門性を育成する大きな役割を果たしてきた。今後のいっそうの活動を期待するゆえんである。



上関の自然を守る会/高島 美登里さん



【助成の概要】
〔2002年度〕長島の自然環境及び生態系調査研究/100万円
〔2004年度〕上関原発予定地長島の自然環境・生態系の調査・解明と保護・保全方法の確立に向け
      ての実践的試行と検証/110万円
〔2005年度〕上関原発計画予定地の自然環境・生態系調査及び詳細調査が環境に与えるダメージの
      の科学的検証/120万円
〔2006年度〕上関原発詳細調査による自然環境・生態系へのダメージの検証/100万円
〔2007年度〕上関原発詳細調査による自然環境・生態系へのダメージの検証/120万円
〔2008年度〕上関原発予定地長島の生態系の解明と詳細調査によるダメージの検証及び地域再生
      に向けた実験的試行/90万円
〔2009年度〕上関原発予定地長島の自然環境と生態系調査/70万円
〔2010年度〕埋め立ての危機に瀕する上関原発予定地の生物多様性の立証/70万円
〔2011年度〕埋め立ての危機に瀕する上関原発予定地および周辺海域の生物多様性の立証/70万円
〔2012年度〕上関原発予定地周辺の生物多様性の解明と普及活動/80万円
〔2013年度〕上関原発予定地周辺の生物多様性の解明と普及活動/50万円
〔2014年度〕上関原発予定地周辺海域における希少海鳥の生態解明と温排水による影響予測の試み
      /50万円
〔2015年度〕上関原発予定地周辺海域における希少海鳥の生態解明と温排水による影響予測の試み
      /50万円
〔2016年度〕上関原発予定地周辺海域における希少海鳥の生態およびエサ資源調査/40万円
【助成累計金額】 1,120万円

 上関の自然を守る会は1999年9月に結成し、発足当初より高木仁三郎市民科学基金の支援を受け、日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会などの研究者と経年的な共同調査を継続することが出来ました。調査回数はのべ1,000回を超えます。主な成果は以下のとおりです。

@生態系の解明:スナメリ(ワシントン条約保護動物)の育雛域/ハヤブサ(環境庁絶滅危惧種)の繁殖/ナメクジウオ(水産庁危急種)の生息/ナガシマツボなど貝類42種(環境省R.D.B.登載)/カラスバト(国の天然記念物) の繁殖/カンムリウミスズメ(国の天然記念物/IUCN指定絶滅危惧種)の世界で唯一の周年生息域/オオミズナギドリ(山口県準絶滅危惧種)の瀬戸内海唯一の繁殖地−など、世界的に貴重な生物多様性のホット・スポットであり瀬戸内海で最後に残された「奇跡の海」であることを確認しました。

A上関原発計画に環境面から歯止めをかける:中国電力の環境アセスメントの不備を告発し原発計画の実施を2年3ヶ月遅らせました。国際シンポジウム開催(11回のうち3回)やPSG(太平洋海鳥会議)・日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会との連携などが功を奏し、国際的アピールや日本政府への要望など保護を求める国際世論が高まりました。

B原発に頼らず自然を活かした町作りを目指す: パネル写真展やDVD上映会などにより、フィールドワークに訪れる市民は年間のべ1,000人を数え、地元漁師さんや民宿と連携した受入れ体制が整いつつあります。

 ところが2016年8月3日に山口県知事が原発予定地の埋立延長許可を出しました。2011年以降中止されている埋立工事の再開を許さないため、これまで以上の知見蓄積と世論喚起が必要です。以下の課題に取り組みます。

@希少野生生物調査の強化:カンムリウミスズメ(IUCN危急種)/オオミズナギドリ(山口県準絶滅危惧種)/カラスバト(国の天然記念物)/アマツバメ(山口県準絶滅危惧種)/スナメリ(ワシントン条約保護動物)/プランクトン&稚魚調査

A成果の活用:中国電力の環境アセスメントの不備を追及する科学的根拠として活用し、調査成果をPacific Seabird Group Meeting や日本鳥学会などで発表します。また調査成果を報告書やパンフレットとして学会/自然保護団体/地元住民に配布し世論喚起に活用します。

B上関の生態系の価値を特別に保護するためユネスコの未来遺産や自然遺産登録を目指します。



たまあじさいの会/古澤 省吾さん・下向 辰法さん



【助成の概要】
〔2002年度〕日の出町ゴミ最終処分場からの焼却灰拡散の実態調査及び地域住民への成果広報活動
      /75万円
〔2006年度〕日の出町エコセメント製造工場の環境への影響調査/70万円
〔2008年度〕日の出町ゴミ焼却灰のエコセメント化工場の環境影響調査/50万円
〔2009年度〕日の出町ゴミ焼却灰のエコセメント化工場の環境影響調査/50万円
〔2010年度〕日の出町ゴミ焼却灰のエコセメント化工場の環境影響調査/60万円
〔2012年度〕日の出町処分場の放射能汚染焼却灰による環境影響調査/40万円
〔2013年度〕日の出町ゴミ最終処分場・エコセメント工場からの有害な化学物質や重金属、及び
      放射能による周辺環境への汚染の実態調査/30万円
【助成累計金額】375万円

 特に3.11以降の政府・電力会社の無責任きわまる横暴、マスコミの低下は酷いものです。
 自由で、独立した、信頼できる、市民による科学的アプローチは大切なことだと思います。この日本を(もちろん世界をもですが)次の世代に出来るだけ良い状態で受け渡すことはオトナの義務であり、それが本当の意味の愛国者だと思います。
 原発の再稼動など信じがたいことが あっけらかんと当然のことのように、権力による低レベルの嘘で固めてごまかし、反省もないまま、すり替えが行われています。
 高木基金は一隅を照らす灯火でありますが、さらに今こそ正しい『科学』を武器に、より発信力と存在感を増すことで、世の中の流れが変わる契機となれるのではないでしょうか。



水野 玲子さん



【助成の概要】
〔2002年度〕地域における出生児の性比変化と死産、出生に関する調査研究/60万円
〔2003年度〕杉並病を始めとした環境汚染による健康被害の病像パターン分析/50万円

 第1回目に受けた研究助成は、2000年に個人で発表した研究(Increase in male fetal deaths and birth in Japan、Lancet)の継続でした。高木基金の助成後、2010年にその問題をさらに深め、海外の生殖毒性学の雑誌「Reproductive Toxicology」 に論文を発表。タイトルは、日本の男児死産増加と腎臓の先天奇形と尿路障害(Increase in male fetal deaths in Japan and congenital anomalies of the kidney and urinary tract). この研究が生殖毒性学における大切な論文と評価されて「Who’s Who in the world 2012」に載り、その後海外より講演招待や科学雑誌への原稿依頼などが続いています。
 内容は、日本の全国レベルの男児死産増加と並行して、腎臓の先天異常などの増加の証拠があり、両者は、女性ホルモン作用のある子宮内の環境ホルモンレベルの上昇と関連している可能性を指摘したものです。市民レベルでの研究として2本国際誌に論文を発表しましたが、あと1つ発表したい問題があります。しかし、目下、もろもろの市民活動で忙しく、まとまった研究の時間がとれません。
 その後、団体として高木基金の助成を数回受けたカネミ油症の次世代影響調査では、その結果を国際会議などで発表。2008年以降は、ネオニコチノイド農薬の問題に取り組み、『新農薬ネオニコチノイドが日本を脅かす』(七つ森書館 2012年)、2016年にその増補改訂版、共著『虫がいない鳥がいない』(高文研 2012年)、共著『食と農の社会学』(ミネルバ書房 2014年)など執筆。雑誌『食べ物通信』には主婦向けの化学物質の知識を連載中。現在は、農薬問題や環境ホルモン問題などの講演、その他、化学物質削減に向けた市民活動を行っています。
 近況として、作成中の本が数冊あります。一冊は英文にして海外での出版を考え、日本の農薬問題について執筆中です。また、日本の若い女性に化学物質の危険性を簡単に知らせる本は、近く出版予定です。また、新しい化学物質被害者の記録なども作成中です。
 高木基金には、基金の第1回目より大変お世話になりました。博士号を持った専門家でなくても、科学の世界で海外に論文を発表することは可能ですので、高木基金が今後もそのような市民レベルの研究を支援されることの意味は大きいですし、今後も期待します。



カネミ油症被害者支援センター/石澤 春美さん・佐藤 禮子さん



【助成の概要】
〔2003年度〕カネミ油症被害者の健康追跡調査と台湾油症との比較調査研究/100万円
〔2004年度〕カネミ油症被害者の聞き取り調査:聞き取り記録集の作成/110万円
〔2007年度〕国際ダイオキシン会議NGOセッションの開催とカネミ油症英文冊子の作成/60万円
〔2011年度〕「油症患者に係る健康実態調査」検証報告書の作成/50万円
〔2013年度〕カネミ油症被害者(特に未認定者、死亡者、次世代被害)に関する聞き取り調査
      /40万円
【助成累計金額】360万円

 1968年に発生したカネミ油症事件はPCB被害として裁判も終了しておりましたが、ダイオキシン類の被害と知り調査を始めました。被害地は西日本一帯、関西、関東地区に及びましたので、高木基金による助成で調査、研究を続けることが出来ました。
 調査結果をもとに国に訴え続け、事件後初めて救済に関する2つの法律が制定されました(2007年、2012年)。現在は法律による施策について三者協議(被害者、国、企業)が開かれ、被害に相応した救済に向けて議論が続いています。今後は未認定者、次世代被害者、障害者の救済が早急に求められています。今年3月、次世代被害者と国会議員が面談することが出来ました。今後ともよろしくお願い致します。



日韓共同干潟調査団ハマグリプロジェクトチーム/山下 博由さん



【助成の概要】
〔2003年度〕「沈黙の干潟」私たちは何を食べるのか?−ハマグリを通して見る日本と韓国の
      食と海の未来−/30万円

 本助成研究の成果報告は、ハマグリ類の分類、生息分布状況、生息量の変化、社会的問題点などを分かりやすくまとめた、当時において画期的な総説で、その後、国内の多くの論文で引用された。この研究を契機として、ハマグリ類の様々な研究が展開された。本プロジェクトチームの佐藤慎一(静岡大学)・山下博由らは、ハマグリとシナハマグリの遺伝・形態学の研究論文を発表した。
 逸見泰久(熊本大学)は、近年で最も重要なハマグリ類の総説書である「肥後ハマグリの資源管理とブランド化」 (熊本大学政創研叢書:共著:2009年)や、生態学の論文を発表した。本プロジェクトチームと「アジアの浅瀬と干潟を守る会」(山本茂雄代表)は、2005年からハマグリ類の流通状況を調べるため「雛祭りハマグリ店頭調査」を現在まで続けており、多くの市民・研究者の参加により膨大なデータが蓄積されている。「雛祭りハマグリ店頭調査」は、ハマグリ類の分類や資源状況についての関心の喚起、取り組みやすさにおいて、身近な「市民科学」の好例になったといえる。
 高木基金の助成や成果報告書の出版は、こうした研究・活動に端緒を開いたものとして、深く感謝したい。このようなハマグリ類の研究の進展、生息状況への社会的理解の深まりもあって、2012年には環境省のレッドリストにおいて、ハマグリ Meretrix lusoriaは絶滅危惧U類に、西表島のトゥドゥマリハマグリ Meretrix sp.は絶滅危惧T類に指定された。



大入島自然史研究会/山下 博由さん



【助成の概要】
〔2005年度〕大分県佐伯市大入島石間浦の自然史・文化の研究 −不条理な埋立問題に関する
      科学的データの収集と分析−/80万円

 大入島石間浦の埋立問題に取り組んだ本助成研究では、生物相と人文地理学的調査を、地元住民と協力して実施した。生物相では、海洋無脊椎動物、魚類、海藻をそれぞれの専門家が調査した。その調査結果とあわせて、石間浦に特有の「磯草の権利」と呼ばれる地先権の対象となっている生物の正確な種名を明らかにし、またその利用の歴史・実態を調べた。
 その後、石間浦の埋立は、港湾計画の変更により回避されることとなったが、この埋立回避は、地元住民の苛烈な反対、直接的抗議行動の成果である。高木基金の完了報告(2006年)において、「大入島自然史研究会は研究成果の報告書を出版し、自然や文化の写真を集めたCDやパンフレットを作ることによって、石間浦の素晴らしさを社会に広く伝えていく予定である」としたが、実現できていない。貝類相については、約180種の確認を日本貝類学会で報告したが、その他の多くのデータと共に、高木基金報告書での要約的な報告にとどまっている。
 こうしたデータは時間の経過と共に埋もれていくことが必至であるので、詳細な報告書を作成することをあらためて検討したい。石間浦の埋立は回避されたとはいえ、「磯草の権利」は住民の海岸利用、すなわち入会権・入浜権・地先権・漁業権・開発などに関わる重要なテーマである。「磯草の権利」は、「自然は誰のものか」という根底的な問題や、現代の海岸利用の社会的矛盾について、さらに深く検討・議論されるべきものであろう。



海岸生物環境研究会/山下 博由さん



【助成の概要】
〔2011年度〕 原子力発電所周辺における海岸生物相の研究/30万円

 本助成研究では、佐賀県玄海原発、愛媛県伊方原発の周辺で、貝類を中心とした海岸生物相の調査を行った。しかし、ごく限られた地点での調査であるため、原子力発電所の存在が海岸生物相に及ぼす影響については、論議に有効なデータは得られなかった。
 調査手法として、岩礁域でのコドラート設置と写真撮影による記録は、市民調査においても汎用性が示唆された。写真による記録と、標本収集及びデータベース構築などの手法を、市民調査に教育的に持ち込む努力が必要であると考えられた。このような調査では、専門家の存在、専門性が不可欠であると共に、市民(住民)の参加は生態系への理解や問題の共有という点においても意義が大きい。調査手法や生物の同定などにおける、知識・作業の市民との共有が必要である。専門家と市民の共同作業によって、市民科学者の育成が期待されるため、高木基金にはワークショップ的な調査・研究活動への、さらなる支援を望みたい。



国土問題研究会大滝ダム地すべり問題自主調査団/奥西 一夫さん



【助成の概要】
〔2004年度〕市民防災の立場にもとづく奈良県大滝ダムの地すべり災害の研究/60万円

 高木基金の助成を受けた2005年4月までの調査では、このダム地すべりの発生原因と地すべりのメカニズム、および地すべりの発生を防止できなかった理由について検討し、一定の成果を挙げた。引き続き2005年4月〜12月に国土問題研究会の自主調査として、国土交通省の地すべり対策工事と大滝ダムの再運用計画、および、高木基金助成の主要研究テーマのひとつである、被災住民の生活再建に関する調査をおこない、2006年4月に報告書「大滝ダム地すべり災害の検証」を「国土問題」誌第68号として発表した。
 その後、被災住民は、村当局が造成した原石山跡の団地に移住するグループと安全で交通の便の良い土地を求めて村外に集団移転するグループに分裂したが、いずれも生活再建が精一杯で,ダム事業者である国の責任を追及することができず、結局2007年12月になって、村外移住を余儀なくされた住民だけが、時効にかかっていない損害の賠償を求めて提訴した。国土問題研究会の自主調査団メンバーは弁護団の求めに応じて、大阪市立大学の高田直俊名誉教授と共に訴訟支援をおこなった。この訴訟は2審まで争われたが、両審を通じて地すべりは予見可能であったとして、国の過失を認め、2審では住民の損害賠償要求をほぼ全面的に認めた。
 住民の要求は正しくても、調査、訴訟に必要な資金を調達できないために要求を勝ち取れないケースが大変多いことは周知の通りであるが、このケースでは高木基金の助成のおかげで、事実と原因の解明が進み、公認され、部分的ではあるが、損害の回復ができたことは感謝に堪えない。



奧田 夏樹さん



【助成の概要】
〔2005年度〕 エコツーリズムが自然環境に及ぼす影響についての研究/50万円   
〔2006年度〕 日本型エコツーリズムの自然科学・社会科学的研究/40万円

 発展途上国など現金収入の道が限られた場所で、森林伐採などにより大規模直接的な自然破壊が起こるよりはマシな代替手段として、エコツーリズムが成功した例もありますが、先進国である日本では、これまで定着が難しかった都会からの離島など僻地への移住に際して、仕事を提供することで新たな環境負荷になり、むしろ自然破壊要因になっている。 そのような問題意識を1990年代初期から沖縄県西表島に十数年間通い、生態学の学位研究を行う過程で感じるようになりました。
 学位取得後は沖縄の大学で研究生や無給の研究員などをしながら、資格を生かす仕事もすぐには見つからず、現地の知人の要請で西表島トドゥマリ浜の大型リゾート開発への反対運動に、専門家としてお手伝いをしたりしていましたが、専門的に裏付けられた疑問をもう少し深め、社会に提起したい、やはり日本のエコツーリズムの現状は自然のためにはなっていない、という思いから、助成金に応募させていただき、初年度は西表島での研究、2年目は小笠原諸島での研究で、採択していただきました。
 西表島は原生的な自然が多く残る中で、地元住民の利用もまれになっていた地域に急に年間数千人規模の入域があり、しかも事前調査もなく、従って適正な利用計画もなく、モニタリングすらなされていないという「エコ」と名乗るのも恥ずかしい状況で、この本質は現在も同じです。 一方、小笠原諸島は西表島と異なり、私は訪れたことはありませんでしたが、すでに多くの移入種などで多くの問題が起こっており、そうした状況でどのような視点からエコツアー導入が行われているかを知ることは、日本におけるエコツーリズムの実態を総合する上で意義があると考えていましたが、残念ながら、都内でフルタイムの仕事に就くことになり、受給を辞退させていただきました。
 2012年からはNPO法人よかっぺいばらきを設立し、持続可能な社会、自然と人間の調和ある社会実現に向かうために地方でも実現可能なモデルを作ることを目標に、耕作放棄地の活用方法の開発などを行っています。 恥ずかしながら、経営的にも実績としても成功しているとは言えない現状ですが、地道に続けるつもりです。エコツーリズムについても採択から10年を経ており、現状について調査を行う機会が欲しいところです。
 能力実績では高木仁三郎さんに及ぶべくもありませんが、科学的専門教育を受けた一市民として、権力やお金やしがらみではなく、自己の専門家としての良心に従い行動する姿勢は、今後も持ち続けたいと思っています。



ストップ・ザ・もんじゅ/池島芙紀子さん



【助成の概要】
〔2006年度〕米、英、仏、独における高速増殖炉開発からの撤退について/20万円  
〔2010年度〕「もんじゅ」及び若狭の原子力施設からの放射能放出調査/20万円

・風向調査は、2000年から開始し、2010年まで計6回実施。
・2010年の海流調査の結果と共に、一枚にまとめ、分かりやすく日本地図の上にカラー別に表示し、カラーリーフレットに掲載。
・翌年の2011年3月に福島原発事故が起こり、直ちにこのリーフレットを全国会議員に配付し、多数の議員に説明したところ、強い関心を示された。
・このカラーリーフレットは、全国の市民団体を通して、24,000枚を広めることができた。
・2015年12月、ロシアのスプートニク通信社から取材を受けた際に、この調査資料に大変強く共鳴され、以後スプートニクの画面で紹介されている。
・毎日新聞社、朝日新聞社の取材に於ても、同じく強い関心を示して頂けた。



北限のジュゴンを見守る会/鈴木 雅子さん



【助成の概要】
〔2007年度〕沖縄のジュゴンとその生息環境に関する市民調査/70万円
〔2008年度〕市民による沖縄のジュゴン保護のための野外調査、文化調査とそれに基づく保護
      ロードマップの提案/50万円
〔2009年度〕草の根市民による沖縄のジュゴン保護活動の構築/40万円
〔2010年度〕草の根市民による沖縄のジュゴン保護活動の構築/30万円
〔2011年度〕草の根市民による沖縄のジュゴン保護活動の構築/20万円
【助成累計金額】210万円

 高木基金15周年おめでとうございます。
 2000年に沖縄のジュゴンの国際シンポジウムを手始めに保護活動を開始し、2006年に沖縄事務所においてジュゴンの生態調査の着手にあたって、海外の専門家を招き、沖縄のジュゴンの餌場における食み跡調査を選択しました。市民の手による初のジュゴンの生態調査は困難を極め、改良に改良を重ね、数年に渡る高木基金のご支援がなければ継続的なデータの蓄積は不可能だったでしょう。
 また、沖縄各地に散逸するジュゴンの歴史や文化は私たち市民自身が記録することが無ければ、すでにその存在さえ忘れられようとしていました。国による保護施策がなされないままジュゴンはこの国の「幻の獣」として沖縄の不幸を背負った伝説となった事でしょう。しかし、沖縄の沿岸に細々と生き延びるジュゴンを地元市民がモニタリング調査することにより、沖縄の自然の豊かさの中で生きる意味を沖縄県民に周知し、ジュゴンの生存の証明をしていると自負しています。
 ご存知にように日米政府による米軍基地建設のために、ジュゴンを象徴とする沖縄の自然や平和な暮らしがなお一層脅かされています。日本政府による私たち沖縄県民の生存権の否定は、沖縄の生きものの営みの否定でもあります。
 さて、5年に渡る高木基金からのご支援によって地元における調査研究活動もしっかりと根づき、一般市民向けの観察、学習会の実績や行政への提言も広く認識されています。
 国際的世論を味方にし、世界の宝として「北限のジュゴン」の生存を周知させ、米軍基地の撤去の先には沖縄の自然環境の回復も視野に、新たな専門分野の方々と連携して次のステップにチャレンジしつつあります。
 今も沖縄の海にジュゴンの姿があり続けることはアジアの国々と良き関係性を築く未来がそこにあると確信し、今後も楽しく精進したいと考えております。



水俣病センター相思社/遠藤 邦夫さん



【助成の概要】
〔2006年度〕水俣市の廃棄物最終処分場建設予定地周辺の水環境に関する調査研究――建設反対
      のための科学的データの収集と分析/50万円
〔2007年度〕水俣市の廃棄物最終処分場建設予定地周辺の地質に関する調査研究/40万円
〔2008年度〕産廃阻止マニュアルの作成/50万円

 高木基金15周年おめでとうございます。ちょうど家族旅行のためフォーラムに参加できません。残念です。
 相思社と高木基金のおつきあいは、テーマは水俣病ではなく産廃処分場周辺の水質分析でした。2004年に安山岩溶岩の細い尾根に、150万立米の管理型産廃処分場の計画への反対運動を起こしました。しかし私たちは産廃処分場が何なのか、ほとんど知らず何から始めればよいのか分かりませんでした。その頃に相思社とお付き合いのあった理系の研究者に、協力してもらいたいと相談したのですが、あまり期待した反応はなく冷たいものでした。この印象は全く間違っていたとあとでは分かるのですが・・・。それでまずは水を調べようとして高木基金に助成申請をしました。事務局から「まずは自分たちで何を求めて水質検査をするのか考えて、採水場所を決めてみんなで取り組むのが重要ですよ」とアドバイスを頂きました。
 分析は専門の会社に依頼しましたが、水質のことを調べ考えていくうちに、自分たちに何が分からないのか分かるようになりました。すると研究者も私たちがわからないことを教えてくれるようになりました。続いて地質や交通・気象・生物のことも協力者の力を借りて進めました。反対運動を始めるにあたって考えたことは、水俣病の経験をふまえ、絶対反対と条件闘争を同時に進行させよう、ということでした。見た目は矛盾しているようですが、私たちは結果を求めました。目的は産廃処分場建設阻止なのだから、戦術は多彩な方がよいということでした。結果、処分建設は断念されました。運動がどれほどの効果があったかわかりませんが、少なくとも反対しなかったらそのまま処分場はできていたと思います。しかし水俣市としてその後の家庭ごみや産廃について、排出ゼロに近づけることがあまり進んでおらず、私たちの運動はNIMBYレベルを出ていないことが反省点です。
 まだまだ水俣には課題が山積みです。市民科学者としての実践を教えてくれた高木基金に感謝しています。近くには川内原発もあるので、まだまだお付き合いよろしくお願いいたします。



化学物質による大気汚染から健康を守る会/津谷 裕子さん



【助成の概要】
〔2007年度〕大気中揮発性有機化合物簡易分析法の検討/60万円
〔2008年度〕簡易分析法によるプラスチック廃棄物処理による大気汚染の研究/20万円
〔2009年度〕各地におけるVOC汚染物質の変動/50万円
〔2010年度〕建築材料等のVOC汚染による健康影響の総合調査/40万円
〔2011年度〕合成樹脂系VOCの健康影響実態調査/30万円
〔2012年度〕地域環境における有害性VOC発生源と分布の探求/50万円
〔2015年度〕地域環境における有害性VOC発生源と分布の探求-続き/50万円
〔2016年度〕地域環境における有害性VOC発生源と分布の探求-続き/40万円
【助成累計金額】340万円

 2016年の今、今年から身近に広がった大変な汚染に気づき、我ながら半信半疑で、しかし連日のように届く被害の知らせと歴然とした分析器に現れる前代未聞の異常さからは信じないわけにいかず、必死になって皆様へのお知らせ、説明、調査、運営に明け暮れています。根本的な国の政策に反映させるべきとは思いながら、裁判や調停での裁定者の理不尽な対応から、中央での対策は半ばあきらめて、まずは市民への正確な情報浸透に取り組んでいます。このままであと数年推移すると日本人の健康と生活はどれほど影響されるだろうかと恐ろしくなっています。
 2007年に初めて高木基金の助成を頂きました。その頃には、人工有機化合物による空気汚染公害は問題になり始めていましたが、市民による分析調査はもとより専門的な分析調査技術も今のように普及していませんでした。専門的な空気汚染有機化合物分析とはどんなものか、人工有機化合物健康被害調査にどのように利用できるか、を確かめるところからこの研究は始まりました。そのことを市民が正確に認識して、分析調査結果を示されての有害性判断に誤りがないように啓発したいというのが始まりでした。ちょうど、簡易クロマトグラフ分析器が市販され始めたため、市民自身で身のまわりの分析調査を綿密に行い、実際の身の回りの汚染実態を見定めてほしい。それによって専門家の分析報告書を判断できる技術力が市民の手に握れるだろう、と考えたのでした。
 しかし、簡易とはいえクロマトグラフは特別に精密な機械なので故障無しに共同研究できるだろうか、研究協力を組織できるだろうか、とハラハラしながら発足しました。当時から今までには有害汚染化合物の種類も発生源も新たに生じたものが急速に変質し、増大しています。当研究で発見することの重大な役割をひしひしと感じています。最初から高木基金の助成を頂けなかったら今のように恐ろしい実態を突き止め、警鐘の役割を担うことは不可能だったことでしょう。深く感謝申し上げます。



彩の国資源循環工場と環境を考えるひろば/加藤 晶子さん



【助成の概要】
〔2008年度〕彩の国資源循環工場による環境汚染調査/40万円         
〔2009年度〕彩の国資源循環工場による環境汚染調査/30万円
〔2011年度〕彩の国資源循環工場による環境汚染調査/20万円

 埼玉県寄居町と小川町の境にある、埼玉県が全面関与している大型産業廃棄物中間処理施設群「彩の国資源循環工場」からの環境汚染調査について活動しています。
 この工場群が計画され、建設されるときに当地に引越し、急遽団体を結成し、反対的運動から始め、2006年に8社全社が稼働し、さらに第二期事業として、廃棄物埋立最終処分場と工場群の拡大が進んでいます。
 当会は、環境調査として、2004年設立後、身近な環境調査から取組み始め、桜の異常花調査、松葉によるダイオキシン類・重金属類調査、水生昆虫調査、水質調査、放射能空間線量調査を定期的に続けています。
 それぞれ、敷地内と敷地外と比較すると、すべて敷地内の方が高い値が出ること、調査時に参加者に体調不良が現れるなど、この工場群からの環境影響は明らかですが、公定法でないことから県などは参考にするにとどまり、一般市民のゴミ問題への関心が低くなっていて参加が少ないなど、活動が難しいなか、なんとかやっています。
 課題として、蓄積したデータの表示法や効果的なグラフの作成法など、プレゼンの仕方をその道のプロフェッショナルから各団体が教えてもらえる講習会を開いていただけないでしょうか?



森 明香さん



【助成の概要】
〔2008年度〕ダム計画をめぐる生活史 -熊本県川辺川流域での聞き書き-/20万円
〔2013年度〕川の傍に生きるということ -川辺川ダム建設反対運動の経験から-/36万円

 二度にわたって高木基金の助成をいただいた。最初の助成は2008年、博士課程1年で、熊本県人吉市に二ヶ月間住み込んだ。住み込み調査は初めてだったが、川辺川ダム建設反対運動をめぐるステークホルダーと関係を築くことができた。この時の経験が、のちの研究の礎となったと思う。二度目の助成は2013年。「ダムの“受益地“と事業者から措定される球磨川水系の流域に住む人びとが、ダム建設に反対するのはなぜか」を模索し、インタビューや資料収集のための渡航費、再度の短期間の住み込み調査等に充てた。流域で反対運動を展開する住民団体にくわえ、代々川の傍に居住する流域の人びと(ダムの賛否を問わない)を対象とした、水害体験の通時的なインタビューを実施した。これらの作業を通じて、代々球磨川水系流域で川の傍に居住してきた人たちにとっての、川という自然に対する見方(川の自然観)について、理解を深めた。
 二度目の報告書の末尾に「川辺川ダム問題をライフワークと考える私にとって本調査研究は今後も続く模索の一環である」と明記したが、その思いは今も変わらない。むしろ、研究職を得たいま(2015年4月より高知大学に勤務)、研究助成によって住み込みで調査し、そのフィールドで知り得たことの意味は、執筆当時よりも身に沁みている。たとえば、人間関係の濃密な地域社会の中で、心根で思っていることを表明するのがいかに難しいか。都市部とそれ以外の地域社会との格差が広がっていく中にあって、地域の自然を食いつぶして成り立つ産業(公共事業や、生業や伝統行事の“観光化“を含む)が一層重視される。それでも、地域を育む自然を将来世代に手渡すために、誰かが声をあげることがいかに重要であるか。他方で、それがいかに困難であるのか。
 日本の河川管理の文脈を辿ると、90年代以降、河川環境の重視が河川法に盛り込まれ、ダムに極力依らない河川管理の在り方が模索される時代を経験してきた。にもかかわらず、石木ダムや小国最上川ダムの続行、大戸川ダムの継続などの報に触れると、先人らの努力を知るからこそ、無力感に襲われる。川辺川ダム計画をめぐっても、2008年には流域首長らや県知事が白紙撤回を表明し、時の国交相からも明言され、ダムによらぬ治水計画が模索されてはいる。だが中止を確定する法的な手続きは取られていない。くわえて、「ダムによらない治水を検討する場」の後継である「球磨川治水対策協議会」では、川辺川ダム計画の是非をめぐって紛糾した2000年頃とほぼ同じような議論が展開され続けている。
 声を上げることは難しい。そのことは院生時代よりもずっと身に沁みている。他方で、声を上げなければ、この社会では容易に“なかったこと“にされてしまう。私が出会った球磨川水系流域の人びとは、代々川の傍で生きる中で、川の傍で暮らす術ともいうべき文化を培い継承してきた。2000年頃と比して、その文化を知る人たちの高齢化が進む中での現状である。これからを生きる世代と共に、先人たちの努力を身辺で目の当たりにしてきた私が、果たすべき役割は何か。自らの無力さを嫌というほどに痛感しつつも、いま自分が生活をする現場や、研究フィールドで、声を上げ分析し発信していくこと以外には、ない(それすら不十分であるが……)。
 私のような立場の人間が果たすべき役割を探求するのは必須である、ということは論を待たない。ただ、一つの甘えのようなことが許されるのだとしたら、数多の市民科学を様々なかたちで支援してきた高木基金にあっては、ぜひ厳しくも励ましを包含した同志のような伴走と、多世代とを引き継ぎつなげるハブの役割とを、切に期待したい。



澤田 慎一郎さん



【助成の概要】
〔2008年度〕 大阪・泉南地域の石綿被害実態と石綿公害問題の検証/10万円

 大学在学中に助成を頂く形で、アスベストを使った紡織産業が大正時代から盛んだった大阪・泉南地域の被害に関して調査をしました。産業自体は1980年代末には大きく衰退しており、私が調査をした当時でも、多くの被害者が亡くなっていました。
 調査に入る以前の2006年から、被害者が国を相手に裁判を起こしていました。裁判は最高裁まで争われましたが、2014年に国の被害拡大を防ぐための規制に不備があったことが認められ、部分的な救済が図られることとなりました。
 その間、助成終了後の大学卒業後も職業上、泉南地域をはじめとするアスベスト被災者支援の活動に関わることができました。また、大学院進学も平行する形で、泉南地域のアスベスト被害の調査・研究をすることができました。
 1年程前から10年以上の活動実績のある、アスベスト被災者団体の事務局として働いています。一人ひとりの患者さんやご家族と向き合い、学びながら、こつこつと目の前の課題を解決していきたいと考えています。
 当時、アスベスト問題に関する知識も極めて不十分であり、学部生としても力量不足であったなか、背中を押してくださいました。今後も、多様な角度から、多くの方の研究活動の後押しをして頂き、これまで同様にそれらが社会を動かす原動力になっていくことを期待しています。



玉山 ともよさん



【助成の概要】
〔2010年度〕米国南西部におけるウラン鉱山をめぐる環境正義運動/56万円
〔2011年度〕米国ニューメキシコ州文化財として認定されたテーラー山における「ロカ・ホンダ」
      ウラン鉱山開発問題/37万円

 2007年以来、住友商事が独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて、国の海外ウラン探鉱支援事業より2か年にわたり助成金を得て、4割出資・合弁事業を行っていた米国ニューメキシコ州にある「ロカ・ホンダ」ウラン鉱山開発計画は、東京電力福島第一原子力発電所事故後のウラン価格の低迷により、2013年に住友商事の合弁相手先であるカナダのストラスモア・ミネラル社(6割出資)が米国のエナジー・フューエルス(EF)社によって買収され、しばらくの間住友商事はEF社とも引き続き合弁事業を続けていたが、最終的に2016年3月に住友商事は4割分の保有権益すべてをEF社に売却し、ほぼ完全に事業から撤退した。
 海外ウラン探鉱支援事業は単年度成果主義に基づき、リードタイムの長いウラン開発案件に対しては助成金の成果は住友商事の事例にみるようにほぼ皆無であったのにもかかわらず、2007年から10年間の長期にわたり、2011年の福島事故を経て、国内における原発でのウラン需要が激減した後でさえも漫然と助成事業が続けられてきた。
 「ロカ・ホンダ」ウラン鉱山は、元々近隣先住民が聖地とするテーラー山の麓において計画され、ウラン開発を少しでも食い止めるために2009年に5部族の先住民族政府がテーラー山を州の文化財としてノミネートし認定されたことがあり(最終的に2014年、州の最高裁で決着)、住友商事とJOGMECは十分に調査を行わないまま事業に投資・助成を行っていた。
 現在、同計画は2017年に、EF社が農務省森林局へ提出した環境影響評価書の裁定を待っている段階であるが、同鉱山が経済的に採算の採れる状態になるためにはウラン価格が現在の30ドル以下から倍ほどに回復する必要があり、そうでなければ鉱山はオープンしないとみられる。シェール開発により天然ガス価格が大幅に下落し、原子力発電へのインセンティブが無いまま、ウラン鉱山開発計画は頓挫したままにゾンビ化する。地元のウラン開発に疑問を持つ市民グループは、長年にわたり監視を続け、環境保護局や州政府等に彼らの提言を出し続けており、私が研修を行ったMASE(Multicultural Alliance for a Safe Environment)も息の長い活動を目指している。
 私が学んだ「開発等において最も深刻に影響を受ける当事者たちの意見が、政策決定過程に最も反映されるべきである」という米国の環境正義運動の精神は、日本においても重要であると思っている。個人的には私が住む兵庫県篠山市において、原子力災害対策検討委員会の市民委員となり、同委員会が提案した安定ヨウ素剤の事前配布が実現したことで、米国で研修させていただいた経験をもとに、市民科学者としての実践を少し果たせたのではないかと思っている。とはいえ、研修の成果を博士論文に当初まとめるとしていたことが未だに果たせていないことが、社会還元が不充分と大変申し訳なく思っており、地道な生活の中から少しずつでも今後もまとめていきたいと考えている。



諫早湾アオコ研究チーム/梅原 亮さん



【助成の概要】
〔2011年度〕諫早湾干拓調整池におけるアオコの大発生とアオコ毒の堆積物および水生生物への
      蓄積と健康リスク/50万円
〔2013年度〕潮受け堤防開門による諫早湾調整池への塩水再導入がアオコの発生および底生生物
      群集に及ぼす影響/70万円

 2011および2013年度の2度にわたり助成をいただき、誠にありがとうございました。貴基金からのご支援により、諫早湾干拓調整池における貴重なモニタリングデータを取得することができました。2013年度の完了報告書提出後、私個人としましては2014年度から広島大学に所属が変更となりましたが、現在も度々熊本へ出向き、熊本保健科学大学および熊本県立大学の先生とともに、分析やデータ解析、論文執筆や今後の研究計画に関する打ち合わせ等を行っております。
 同時に、高橋徹教授率いる調整池の調査にも同行させて頂いております。本研究チームは、現在も調整池、諫早湾、および有明海奥部において採取してきた調査データの解析を進めており、それらをまとめた研究成果の一部は、すでに学会発表、講演会、論文(一部を下に記載)、書籍、およびマスメディアを通して社会に公表してきております。その結果、研究者だけではなく、多くの市民の方々にも諫早湾干拓によるアオコ問題に関心をよせて頂いております。しかしながら、未だに開門は実施されておらず、現在もアオコ毒素による環境リスクが続いております。開門に向けて、引き続き科学的なアプローチにより、諫早湾のアオコ問題に取り組んで行きたいと思います。今後も、諫早湾干拓問題に関する貴基金のご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

Umehara A, Komorita T, Tai A, Takahashi T, Orita R, Tsutsumi H (2015) Short-term dynamics of cyanobacterial toxins (microcystins) following a discharge from a coastal reservoir in Isahaya Bay, Japan. Marine Pollution Bulletin, 92: 73-79.
梅原亮,高橋徹 (2016) 諫早湾干拓事業がもたらしたアオコ問題.科学, 岩波書店,86:968-974.



チェルノブイリ救援・中部/池田 光司さん



【助成の概要】
〔2011年度〕チェルノブイリ原発事故被災地におけるバイオエネルギー生産と農業復興の試み
      /40万円
〔2012年度〕福島原発事故被災地(南相馬市)における飲食物の放射能汚染の調査研究/50万円

1.2011年度
 高木基金第10回助成金をもとにチェルノブイリ原発事故被災地のウクライナ国ジトーミル州ナロジチ地区の放射能汚染地域で植物(ナタネ)を使った除染(バイオレメデーション)によってゆっくり除染し、同時に汚染したナタネから油をとり放射能を測定し、ナタネの種子や葉、茎などのバイオマスを使ってバイオエネルギーを生産する計画である。この助成金では土壌やナタネのバイオマスの放射能分析、放射能を含むバイオガス発生装置の廃水処理装置の設計と処理成績の分析、BDF(バイオディーゼル燃料)生産の副産物であるグリセリンをバイオガス発生に利用するための確認などを行った。
 結論としては、
(1)ナタネ種子やその他のバイオマスは強く汚染するが、搾油後のナタネ油はCs137、Sr90共全く汚染がなく検出限界以下であった。
(2)植物による除染には時間がかかる(年間土壌中のセシウム減少率は約5%)が、ナタネの裏作として栽培した小麦、ライムギ、蕎麦などのセシウム汚染は激減し、食料に出来るレベルになった。従って、土壌汚染があっても、汚染しやすい植物と通常の作物を交互に栽培することで、農業が可能である。
(3)バイオガス発生装置から出る排水にはCs137やSr90などの放射能が含まれるが、これらはゼオライト吸着材で効率よく吸着分離出来る。汚染したゼオライトは低レベル廃棄物として処分する。
(4)バイオガス発生装置の発酵槽は10m3だが、原料投入後約1か月でバイオガス発生量は平行に達し、その量は2 m3/日であった。BDF装置の副産物のグリセリンは有意にバイオガス発生量を増加させた。
(5)こうした成果をまとめ「ナロジチ地区復興のナタネ」勧告書としてウクライナ語で作成し、ウクライナ政府とナロジチ地区行政に提出した。
(6)ジトーミル州政府はこれらの成果を生かし、約1万haある耕作放棄地の再生を目指し、州議会でも予算化を図ったが、膨大な初期投資の資金を集めているさ中に、ウクライナとロシアの戦争が勃発し、現在、事業化は停止中である。
(7)プロジェクトの最終年度末(2011年3月)に福島原発事故が発生し、これらの成果を日本(南相馬市)で活かす事業を現在行っている。具体的には南相馬の農民らと共同で2013年12月に「南相馬農地再生協議会」を発足させ、ナタネの栽培を始めた。栽培面積は2013年(13.5ha)、2014年(25 ha)、2015年(42.5ha)である。2016年度は60ha以上になる予定である。
(8)搾油後のナタネ油はゲルマニウム半導体検出器による精密分析でもND(検出限界0.026Bq/Kg)であり、事実上汚染はないことがウクライナでの実験を裏付けた。その結果、ナタネ油を商品化した。商品名は「油菜ちゃん」でこれは相馬農業高校の生徒らの発案でラベルも作った。また、油菜ちゃんを使ったマヨネーズも農業高校生らの努力で商品化された。2016年秋にはドレッシングも商品化の予定である。
(9)ナタネ油に汚染がないことからイギリスに本社のある化粧品会社(ラッシュ・ジャパン)がこれを使った石鹸を開発し「つながる思い」として商品化した。
(10)現在、ナタネの搾油は栃木県の企業に外注であるため、2017年度には南相馬市内に搾油工場を建設する予定である。
(11)汚染した油粕やその他のバイオマスは、ウクライナと同様、「バイオガス」生産に利用し、バイオガス発電で搾油工場の電力を自給する計画である。
 高木基金の助成金は市民が中心で行う様々な調査や研究を支え、更なる発展のきかっけになるので大いに助かりました。

2.2012年度
 高木基金の第11回助成で行った事業は、当NPO法人が運営する「放射能測定センター・南相馬(通称:とどけ鳥)」における放射能の分析が中心でその結果、
(1)南相馬市の水道の水源5か所(すべて地下水)の水の放射性セシウムを1年間継続測定した。結果は全て検出限界以下で汚染はなかった。これは住民にとっては大きな安心材料となった。
(2)川の水や井戸水もほとんどが検出限界以下であったが、まれに地表の泥が混じった濁り水の場合は 汚染が検出された。
(3)様々な食材(野菜、コメ、果物、キノコ、山菜、畜産物など)も測定した。野菜や果物の汚染は年々低下傾向にあり、2016年度は殆どが検出限界以下である。原因は、放射性セシウムが時間と共に土壌粒子に固着し水溶性になりにくくなっているからである。しかし、山菜などはその生産地である山野が降雨による慢性的なカリウム不足のため、セシウムによる汚染が依然として継続している。
(4)土壌の汚染は場所によって大きく異なり、放射能プルームが通過した南相馬市の西側山間部では非常に高濃度である。土壌汚染の度合いは、別途測定している空間線量率の強さと良い相関関係がある。
(5)こうした測定結果を「放射能とどう向き合うか――住民の被曝低減のために――」という冊子(2015年9月発行76頁)にまとめ、南相馬市内の市民や幼稚園、学校、団体、行政機関に配布している。
(6)2016年7月12日に立ち入り禁止が解除された20km圏内の南相馬市小高地区に「放射能測定センター・南相馬小高分所」を設置し、帰還した住民のために土壌や食材などの放射能測定を無償で行い、地域住民の被曝低減に寄与している。
 こうした測定は今後も当分継続し、住民の被曝による被害をもたらさないように努力する。



eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)/吉田 明子さん



【助成の概要】
〔2011年度緊急助成〕エネルギー基本計画の課題分析、市民版基本計画策定、社会ムーブメント
      づくり/80万円
〔2012年度〕原発事故被害への対応と脱原発への方向転換を目指す政策提言と社会ムーブメント
      づくり/40万円
〔2013年度〕脱原発を含むエネルギー・原子力政策実現に向けた政策提言と社会ムーブメント
      づくり/60万円
〔2014年度〕脱原発を含むエネルギー・原子力政策実現に向けた政策提言と社会ムーブメント
      づくり/50万円
〔2015年度〕「パワーシフト」自然エネルギー拡大に向けた働きかけと普及啓発/40万円
〔2016年度〕電力小売全面自由化にむけて〜地域再エネ電力会社の状況調査と情報共有(パワー
      シフト・キャンペーン運営委員会としての助成)/40万円
【助成累計金額】310万円

 eシフトは、2011年に環境団体や脱原発団体、消費者団体、国際協力団体など、それまであまりコミュニケーションがなかったさまざまな分野の団体が、福島原発事故の脅威と被害に向き合い、脱原発を実現するために結成されました。ゆるやかなつながりではありますが、定例会議やメーリングリストでの情報交換・意見交換は貴重な機会として続いています。
 高木基金の助成を受けたことで、このネットワークの事務局運営をスムーズに行うことができ、ブックレットの編集・発行やシンポジウムの開催、重要な機会での連携アクションを行うことができました。2012年の国民的議論におけるパブリックコメントや各地での世論喚起は、成果の一つでした。ほかにも、原子力規制委員会発足時のロビー活動にも連携して取り組みました。
 2013年、2014年度は、政権交代後にエネルギー政策のゆり戻しがあるなか、パブリックコメント提出や意見提出、院内集会の開催などの働きかけを行いました。
 2015年度は、そこから発展して、電力自由化の機会を安さの追求だけではなく再生可能エネルギー拡大につなげるために、パワーシフト・キャンペーンを発足させて取り組みました。
 また、気候変動対策と脱原発は矛盾しないことを、政府や業界団体のプロパガンダに対抗して理解を広げ、運動を広げていくことも大きな課題です。eシフトでも、2014年にセミナーを開催するとともに、2015年からは原発と同時にすすめられる石炭火力の問題にもフォーカスして取り組もうとしています。
 これらのように、一つの団体だけでなく、複数の、分野の異なる団体のネットワークが必要な課題に対して連携して取り組むために、高木基金の支援が大きな力となっています。



福島老朽原発を考える会(フクロウの会)/青木 一政さん



【助成の概要】
〔2011年度緊急助成〕子どもの生活環境の放射能汚染実態調査と被ばく最小限化/260万円
〔2013年度〕脱原発に向けた市民の情報発信-フクロウ・FoEチャンネルの開設(フクロウ・FoE
      チャンネルとしての助成)/20万円
〔2014年度〕福島原発事故に伴う子どもの生活環境の放射能汚染実態調査と被ばく最小限化
      /70万円
〔2015年度〕福島原発事故に伴う生活環境の放射能汚染実態調査と住民の被ばく最小限化/70万円
〔2016年度〕福島原発事故に伴う生活環境の放射能汚染実態調査と住民の被ばく最小化/50万円
【助成累計金額】470万円

○2011年3月の東日本大震災・福島原発事故による放射能汚染の拡大は深刻であるにもかかわらず、政府・自治体の対応は極めて不十分であり、次世代を担う子どもたちの被ばくリスクを最小化するため、生活環境の汚染実態を把握し、子どもたちの被ばくを最小化するための方策を研究するとともに、その推進に取り組んできた。

○2015年度は、従来からの取り組みを継続し、各地域のグループ、個人の協力を得て尿検査を推進している。新たなこころみとして、関西方面への自主避難者にも尿検査を呼び掛けて実施した。当然のこととはいえ、関西方面への自主避難者では尿検査でセシウムが検出された人はいなかった。様々な困難を抱えている自主避難者からは、今回の尿検査について好意的な反応を得た。

○尿検査やリネン吸着法による大気中粉塵の放射能調査で、新たに岩手県、千葉県東葛地域などのグループ、個人との連携を進めている。

○各地域の協力グループ、個人の相互の交流、連携を狙いとして、交流会を実施した。

○「たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会」の総会に参加して、活動状況をプレゼンした。放射能汚染問題とゴミ焼却炉問題が重なりを見せている。各地でゴミ焼却炉の問題を闘うグループとの連携を始めている。



未来につなげる・東海ネット 市民放射能測定センター/伊澤 眞一さん



【助成の概要】
〔2011年度緊急助成〕東海地方・市民放射能測定センターの開設と食品および環境の監視
      /157.5万円

 未来につなげる・東海ネット 市民放射能測定センター(略称:Cラボ)発足以来、5年が経過し、測定試料数も、約3000となり、行政によるモニタリングの穴を抜けてきた汚染食品や汚染物を発見して、警鐘を鳴らしてきました。
 測定精度向上、精度管理のために、基準玄米を開発し、「みんなのデータサイト」参加の32測定所の測定技術向上に貢献してきました。
 「みんなのデータサイト」構築と発展のために中心となって活動し、食品汚染検索サイト、東日本土壌汚染プロジェクトによる汚染実態の解明と社会啓発に寄与してきました。
 「3.11事故」の衝撃の風化の中で、次の5年、次の10年を活動しつづけるには、知恵と戦略と心意気が必要です。Cs-137が半分になる30年後までの持続を目指して、頑張ります。



いわき放射能市民測定室たらちね/鈴木 薫さん



【助成の概要】
〔2012年度〕市民による食品・体内放射能測定と脱原発をめざす活動/50万円
〔2013年度〕放射能汚染・低線量被ばく地における放射能測定の活動と記録/50万円
〔2014年度〕放射能汚染地域における甲状腺検診事業/70万円
〔2014〜18年度〕たらちねβ線放射能測定プロジェクト/500万円
【助成累計金額】 670万円

 「たらちねβ線放射能測定プロジェクト」は2013年度後半から計画が準備され、2014年に多くのご支援をいただき設備の工事、機器の導入を行いました。β線の測定は技術的に難しく、これまでγ線の測定に於いて、専門性を極めた市民科学者の人々も手がつけられずにいた分野でした。
 「たらちね」では、元原研の研究員で放射線分析の専門家である天野光氏に協力を仰ぎ、技術面の整備を行いました。それにより、「たらちね」のお母さんスタッフとこれまで放射線以外の分析の経験がある職員とで実務にあたることが可能になりました。また、資金面でも、設備、機材、人件費等で多額の予算を必要とするプロジェクトでした。アクト・ビヨンド・トラストを始め、高木仁三郎市民科学基金、未来の福島こども基金、常総生協、DAYS被災児童支援募金などの大口の支援団体、そして個人の多くのみなさまの協力で費用をまかないました。特に高木基金からは放射能測定器である液体シンチレーションの購入費の半分を担っていただき、このプロジェクトを開始するにあたり、非常に重要なご支援をいただきました。
 2014年のラボの工事、テスト測定を経て2015年4月に一般受付を開始し、β線測定ラボがオープンしました。このラボの活動は、2011年の東京電力福島第一原発事故の被害の中で暮らす地域の人々が持ち込む試料の測定を行うことが中心です。そのため、測定料金はこれまでの1測定20万円ほどの高額なものではなく、1測定3,000円の利用しやすい料金に設定しました。足りないところは全国からのご寄付を充当しております。技術的には、これまでの「時間もかかる、危険も大きい」国が定める公定法ではなく、「短い期間で、一定の安全が担保され、精密な分析」を目指す新しい方法が導入されています。
 そのため、技術開発の意味でチャレンジする部分も大きく、放射能の値の決まった標準試料や国が常用する分析専門機関とのクロスチェックを繰り返し、結果の正確性を確認しながら進めております。2015年は、人々から持ち込まれる試料測定の傍ら、それらの実績をまとめて論文発表も行い、「たらちねβラボ」の測定は確実に前進していると言えると思います。
 2016年以降のプロジェクトの目標は、水・海水・骨のストロンチウム90の分析を安定的に行えるようになるための技術の確立です。「たらちね」では現在、福島第一原発沖1.5km地点での海洋調査を行っています。福島第一原発の汚染水の流出のコントロールができない現在、また国が汚染水を海洋放出する方向で検討している中、この調査は、非常に重要なものです。そこで採取された海水、魚、その他の海洋生物の分析の記録は、現在だけでなく未来に生きる子どもたちが科学や文明の進む方向性を決定する時に必ず必要になるものです。それは、国が行ったものではなく、「子どもたちの今日の糧を守る」母親たちが起こした測定室で、そして市民が協力し記録したものであることが大きなメッセ―ジだと思います。その記録を正確に残すために、どうしてもこの技術の確立が必要となります。放射能の被害は私たちが死んだ後も残るものです。遠い未来の子どもたちに、私たちのメッセージが届くよう、スタッフ・理事会一同、日々精進していきたいと思います。
 また、2011年の「たらちね」開所以来、高木基金のみなさまには、資金面のご支援はもちろんのこと、精神的な面でも多くの応援をいただきました。この問題が永年にわたるという共通の認識と「ともに歩む」というお気持ちをもっていただいていると感じております。今後も、これまでの信頼関係を大切にし、少しでも子どもたちの未来に役に立てるよう進んでいけることを強く願っております。



遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン/天笠 啓祐さん



【助成の概要】
〔2012年度〕隠れGMナタネ及び交雑種の拡大調査/30万円
〔2013年度〕隠れ遺伝子組み換え(GM)ナタネおよび交雑種の拡大調査/40万円
〔2014年度〕隠れ遺伝子組み換えナタネ及び交雑種の拡大調査/20万円

 遺伝子組み換え(GM)作物は日本では商業栽培されていませんが、大量に輸入されています。輸入される形が種子であるため、こぼれ落ちなどによって輸入港周辺や搾油工場周辺、その輸送経路などで自生しています。
 GM作物の中でも、もっとも自生の広がりがみられるGMナタネを対象に、2005年以来、毎年全国各地で、市民が検査キットを用いて、汚染の実態を調査しています。
 2011年に、検査キットを用いた1次検査では陰性であるが、PCR法(DNA)による2次検査では組み換え遺伝子が検出されるという「隠れGMナタネ」が見つかりました。組み換え遺伝子をもったナタネが知らないうちに広がり、汚染が潜行拡大することを恐れて、どのような地域、条件のもとでこのようなナタネが見つかるか実態調査を高木基金の助成を得て、2012年から行いました。隠れGMナタネは、汚染のひどい地域、特に三重県四日市港周辺、福岡県博多港周辺で多く確認されています。
 同時に、GMナタネの交雑種と思われるものを調査しています。三重県ではハタザオガラシ、イヌカキガラシとの交雑種も確認され、GM遺伝子をもった雑草が広がっていくことが懸念されます。隠れGMナタネもGMナタネとの交雑種も汚染のひどい地域で見つかり、現在も調査を続けるとともに行政や油糧企業とも手を組んで、抜き取り作業を行い、汚染の広がりを防いでいますが、根絶には至っていません。
 私たちは、毎年調査結果をもって、農水省・環境省と意見交換を行っていますが、現在の「カルタヘナ法」ではこの状況に対して何も手を打てないため、「カルタヘナ法」の改正を訴えています。また、2年に一度開催される生物多様性条約締約国会議にも参加し、GM作物の輸入国で起きているGM作物による生物多様性への影響の実態を報告しています。
 調査は今年度で12年となります。継続して行っている市民の調査は、輸入港周辺の企業による清掃作業を促すなど、汚染の拡大防止に確実に効果を上げています。
 高木基金は、市民の活動の支えです。今後とも市民の手による地道な調査活動の支えとなって活動を継続していくことを期待しております。



泊原発の廃炉をめざす会/樋口 みな子さん



【助成の概要】
〔2012年度〕泊原発の廃炉を実現させるための研究/80万円
〔2013年度〕泊原発の廃炉を実現させるための研究/50万円
〔2014年度〕泊原発の廃炉を実現させるための研究/30万円

 2011.3.11の福島第一原発事故を受けて、北海道には、フクシマから、たくさんの方が避難されてきました。ほとんどが若いお母さんとお子さんばかりでした。北海道が安全で、汚染されていないからこそ、多くの方が避難されてきたのです。また、北海道は、日本全体の食糧基地でもあります。未来の子どもたちに安全で汚染のない北海道を残そうと、私たちは、2011年11月11日、泊原発の廃炉をめざす訴訟を起こしました。裁判では泊原発周辺の活断層が焦点の1つですが、これまできちんと研究されていなかったので、その研究に焦点を絞り、2012年に助成をいただきました。また研究によって明らかになった泊原発の危険性を、ひとりでも多くの道民に知っていただくために、たくさんの学習会、講演会を道内各地で行ってきました。その結果として、第一提訴では612人、2012年11月の第二提訴では621人もの原告を得ることができました。
 2年目の2013年度は、引き続き、泊原発周辺の活断層の研究を継続するとともに、福島原発事故の被害と、泊原発が事故を起こしたときの比較、原発のコスト、北海道での原発に代わるエネルギー、地層処分問題についての調査を行い、これらの成果をまとめ、2014年3月には、カラー8ページのパンフレット「知ってましたか?――原発をやめたほうが得する8つの理由」を1万部、発行しました。原発反対という言葉を使わず、賛成の人、無関心な人にも、とにかく手にとって読んでもらい、原発の問題点を知っていただく、ということを目標にしました。カラーでイラストや写真を多用し、ヴィジュアルな内容にしたため、大変好評で、最初は1万部でしたが、その後も増刷を重ね、これまでに5万部以上を配布しています。
 3年目の2014年度は、原発からの避難計画の問題点をとりあげ、アンケート調査や現地調査を実施しました。また、避難計画をたてている北海道への質問状も提出しました。北海道は、基本的に30km圏内は避難させず、屋内待機を優先させるような方針をとっており、一刻も早く遠距離への避難を考えている住民感情とは大きな隔たりがあります。また60km以上離れた札幌でも、事故が起きれば、600〜1000km以上の避難、すなわち道外への避難を考えている市民が多いことも明らかになりました。現地調査からは、とくに福祉施設などに居住する災害弱者の避難の問題点が明らかになりました。現在の原子力規制委員会の「安全審査」には、住民を安全に避難させる計画はまったく含まれていません。避難計画の不備と問題点を住民に知ってもらうことが、原発を再稼働させようとしている動きへのもっとも強い抑止力になるのではないかと考え、今後、会としてわかりやすいパンフレットをつくり、高木基金の助成の成果をさらに広くアピールしていきたいと思っています。
 科学的研究については、規制委員会での原発の安全性審査をウォッチしてきましたが、会のメンバー以外でも、同様のウオッチングをしてきた在野の科学者がおられたことがわかり、昨年、新たに「行動する市民科学者の会・北海道」という組織が立ち上がりました。これも、3年間、高木基金から助成をいただき、裁判に立ち向かうための基礎的な研究を積み重ねることができたおかげだと思います。原発訴訟に限らず、裁判を闘うためには、原告側が科学的なデータをしっかりもつことが必要です。こうした意味でも、高木基金の助成がきっかけとなって、北海道で、原発訴訟を支援する新たな市民科学者の活動が始まったことは、3年間の助成の大きな成果の1つといえると思います。



手塚 智子さん



【助成の概要】
〔2012年度〕ボトムアップ型エネルギー供給システムの構築可能性に関する研究/40万円
〔2013年度〕ボトムアップ型エネルギー供給システムの構築可能性に関する研究/70万円
〔2014年度〕ボトムアップ型エネルギー供給システムの構築可能性に関する研究/50万円

<経過や近況>
 協同組合や地域・市民による電力事業の調査を、現在も継続しています。貴基金助成による研究の成果として、ボトムアップ型エネルギーシステムへの転換を「エネルギー自治」が推進すること、エネルギー自治の実現には、@エネルギー事業の担い手の多様化、Aエネルギーシステムの上流から下流まで(電力では発(送)・配電・小売)の分権化、B“エネルギー自治” の効果(メリット)の見える化、これらの動きをネットワーク化した中間支援組織の存在、が重要であることを現地聞き取り、資料収集等によって調査しました。これらを発信し、足元からの実践をはじめています。
 鳥取では、2012年から市民の共同による発電事業と、エネルギー自治の実現に向けたネットワークづくりに取り組んでいます。NPO、協同組合、県、金融機関等と協同し、エネルギー自立の地域づくりを目指し、2016年8月までに4か所、約326kWの太陽光発電所を建設しました。2016年9月1日に稼働した太陽光発電所が生む鳥取産の電力は、地域の電力小売会社、(株)とっとり市民電力への売電(卸売)を開始したところです。また公営電気事業の売電に環境・地域性に配慮した入札制を取り入れるよう働きかけています。
 2012年に再生可能エネルギー固定価格買取制度、2016年に電力小売市場の完全自由化がスタートし、持続可能な地域の再生に向けてエネルギーの自治を志向する、市民や地域によるボトムアップ型の動きは活発化しています。一方、国レベルでは世界の潮流に逆行するエネルギー基本計画、長期エネルギー需給計画が策定され、エネルギー政策は後退しており、電力システム改革やFIT法改正後の動向も楽観視できず、貴基金の助成を受けて取り組んだ調査研究の成果を、実践と研究の両輪をもって、一層生かしていく必要があると感じています。
 日本では、まだまだ再エネ電源が足りません。省エネの取り組みも不十分です。この課題と制度的な逆風に対しては、市民電力連絡会やパワーシフト・キャンペーン、環境首都創造といったネットワーク組織の運営や活動への参画を通して、中間支援組織的な役割強化をすすめています。

<今後の展望>
 日本では、ボトムアップ型のエネルギーシステムを志向する自治体・地域間の連携、業界団体と市民ネットワークとの連携などがようやく動き始めました。さらに、市民、自治体、業界団体、協同組合、エネルギー事務所、研究機関、財団など多様なアクターが、当事者としてエネルギー事業やエネルギー自治を推進していくことが重要です。そのためには、地域経済や合意形成の点からも、エネルギー自治が地域固有の持続可能な社会づくりに資すること=効果(メリット)を見える化し、そのメリットやモデルについての情報発信と、現場で役立つノウハウやツールの提供が求められます。引き続き、それらの情報を収集し発信すると共に、研究者や実践者の方々との連携や、それらの知見を活かした活動、事業に取り組んでいきます。
 鳥取では、昨年開催した市民発電所・節電所の担い手育成会議を通した鳥取・山陰のネットワークやエネルギー事務所づくり、地域主体による電源開発と省エネの推進、電力の地産地消とエネルギー自立地域づくりを通して、足元からもボトムアップ型のエネルギーシステムの構築に取り組んでいきます。

<期待>
 今後も、社会の本質や構造的な問題に迫る活動や研究、研究機関に属さない市民科学者や活動家、実践者の取り組みへの貴重な助成を続けていただけたら幸いです。このたびのフォーラムがそのような場になるかもしれませんが、助成を受けた方々の交流やネットワーキングの場があればよいと思います。



高木仁三郎記念ちょうふ市民放射能測定室/藤川 泰志 さん



【助成の概要】
〔2012年度〕食品、土壌などの放射能調査による市民生活の安全向上と記録/30万円

 市民からの依頼の放射能測定、自主検査の測定、合計で約900件の測定を実施。特に昨年の土壌ベクレル測定調査では、調布市との合意の下で、市内の公園40箇所、市立保育園のすべての11園の土壌検査を行い、結果を未来のためのデータとして行政と共有した。





さっぽろ市民放射能測定所はかーる・さっぽろ/富塚 とも子さん



【助成の概要】
〔2012年度〕北海道における食品の放射能汚染状況の測定と分析について/50万円

 NPO法人設立15周年おめでとうございます。
 さっぽろ市民放射能測定所はかーる・さっぽろは当初、福島の子どもたちを守る会・北海道(以下、福島子ども北海道)の一部門としてスタートしました。「この北海道は放射能の被害を受けた子どもたちの保養地と大丈夫なのか?」「北海道産の食品の汚染はどうなっているのか?」など、放射能測定の経験はないものの、測定所が必要だという切実な思いで開設の準備を始めたのです。
 高木基金には、開設のための測定機械の購入助成をいただき、当初雲をつかむよだった運動を、金銭的に、また社会的な価値があるのだという裏付けとして、力強く支えていただきました。心から感謝しています。
 福島こども北海道は東日本の子どもたちの保養をミッションとして特定NPO法人を取得しました。これを機に、はかーる・さっぽろは任意団体として独立し現在に至っています。
 資金調達に始まり、測定活動に必要な知識を取得する場の提供、市民測定所や専門家のネットワークの形成、測定精度を担保するための仕組みなど、高木基金の力なくしては、今のはかーる・さっぽろはなかったでしょう。助成を受けた団体として恥じることのないような活動を心がけてまいります。
 「市民科学者」を育てる、社会を変える、高木基金のますますのご発展を祈っています。



情報公開クリアリングハウス/三木 由希子さん



【助成の概要】
〔2012年度〕福島第一原子力発電所事故に関する情報公開制度を利用した政府の持つ一次情報の
      収集・分析/40万円
〔2016年度〕政府の行う福島原発事故に関連する調査研究委託の成果物の分析・評価/40万円

 福島原発事故を受けて「公文書」として作成される関連情報は数多くあり、中でも公開されていない情報を収集し、情報を必要とする人々のアクセスを長期的に確保するのが、当会の課題でした。また、原発、放射能とそのリテラシーに一定の知識を要する情報が多く含まれるため、どのように情報を活用するのかということも、大きな課題でした。高木基金からいただいた助成金と、その他のいくつかの財源を組み合わせて、原発事故関連の情報の公開請求を行い、公開された文書を整理、データ化し、だれでもアクセスできるアーカイブを構築し、2015年7月に一般公開を始めました。当初スタートは、3000件以上、6万ページ強の文書の公開で始め、現在も継続して情報公開請求を行い、公文書の収集を行っています。近く、追加文書の公開を始める予定で、今回は1500件近い文書件数になる予定です。
 情報公開請求をしている中には、環境省、原子力規制委員会が外部委託で行っている多くの調査研究について、網羅的に報告書を収集し、その中で放射線の健康影響、環境影響、住民教育用資料、リスクコミュニケーション、世界の原子力規制や廃棄物処理に関するものなど、活用すれば市民社会にとって有益なものが多く含まれています。これらは、単にアーカイブに収蔵しているだけだと埋もれてしまうかもしれない情報なので、2016年度に高木基金から助成金を再びいただき、資料の活用プロジェクトを始めました。
 原発問題や放射能の影響は、その危険性を訴える市民の活動が様々な形で一定の成果を見せる時もある一方で、厳しい局面を迎えているものもあります。すぐに答えの出るものではありませんが、公文書を収集し、共有し、活用を進める中で、厳しい状況を乗り越える手がかりを探していきたいと考えています。高木基金は、このような活動に助成をする唯一といってよいところです。そのため、多くの関連する活動を支援していると思われ、それらを有機的につなげていくプロジェクトがあるとよいのではないかと思っています。



市民放射能監視センター(ちくりん舎)/浜田 和則さん



【助成の概要】
〔2013年度:緊急助成〕市民放射能監視センター設立/100万円

 NPO法人設立15周年おめでとうございます。
 高木仁三郎さんの遺志を継ぎ市民科学の発展に尽力され、それを支え続けてきたスタッフ、支援者の皆さんのご努力に敬意を表します。
 ちくりん舎はフランスの市民放射能分析NGO ACRO(アクロ)からのゲルマニウム半導体測定器の寄贈を契機に設立されました。放射能から環境と健康を守るため市民の立場で放射能汚染を監視する、市民の「共同のラボ」という位置づけです。
 設立にあたり貴基金の助成をいただきました。おかげさまで2013年4月には測定器を立ち上げることができました。その後、多くの方のご支援により2015年にはゲルマニウム測定器を増設し測定能力もパワーアップできました。能力アップにともない高精度(長時間)の測定料金を下げることができました。
 市民への拡散、啓蒙という面でも毎年のシンポジウムにおいて高木基金様から後援をいただき、盛況に行うことができました。
 この4年間でちくりん舎での測定を通じて、会員間の交流も進み環境(水、大気)、内部被ばくの問題など、会員間で協力支援しあうプロジェクトも進行しています。最近では、除染ごみ処分という形での新たな放射能汚染の拡散をめぐり、従来からごみ問題に取り組んできた団体との連携もできてきました。
 政府の「福島原発事故はなかったことにする」動きに抗して「放射能汚染」と「健康被害」を明らかにしてゆくことが重要と考えます。
 ちくりん舎は放射能の高精度測定と分析を通し、このような市民科学の運動を担って行きたいと思っています。

意見:助成をいただいていて言いにくいのですが、助成申込書の書式など手続きが厳格すぎ草の根市民運動には助成金へのハードルが高くなっているのではと思いました。



原子力規制を監視する市民の会/阪上 武さん



【助成の概要】
〔2013年度〕市民による原子力規制委員会の監視活動/60万円
〔2014年度〕市民による原子力規制行政の監視活動/80万円
〔2015年度〕市民による原子力規制行政の監視活動/60万円
〔2016年度〕原子力規制行政の市民による検証/40万円
【助成累計金額】240万円

 「原子力規制を監視する市民の会」は、原子力規制委員の人事問題を発端に集まった人たちを中心に、2012年12月に井野博満さんを迎えて開いた集会をきっかけに結成され、以来、原子力規制行政の監視活動を続けてきました。翌年から、高木基金の助成を受けることができ、原発の再稼働が問題になっている立地地域の生の声を規制当局にぶつけ、また研究成果を現場に還元することができました。
 川内原発の火山リスクの指摘については、火山審査の根本的な欠陥を明らかにすることができました、原発で使われている地震動に過小評価がある指摘については、島崎邦彦元原子力規制委員会委員の警告につながったと思います。また、40年超え老朽原発の寿命延長審査では、耐震性をクリアさせるために、計算手法を変えるだけで無理やり通そうとする電力事業者に対し、規制委員会が積極的に協力している状況を明らかにしてきました。
 福島原発事故後、長期化し解決のめどが立たない汚染水問題についても、実状を明らかにする活動を行ってきました。今後は、沸騰水型では、福島原発事故後最初となる柏崎刈羽原発の再稼働も重要な課題となります。
 これからも監視活動を続けていきたいと思います。私たちの活動は、高木基金によって支えられています。今後ともよろしくお願いいたします。



玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/石丸 初美さん



【助成の概要】
〔2013年度〕玄海原発事故時における自治体の避難計画の実効性の検証/40万円

 九州電力玄海原発3・4号機の再稼働が迫っています。福島原発事故が収束しない中、緩すぎる規制基準と実効性なき避難計画の下、核のゴミを未来の世代へさらに押し付けることになる再稼働をなんとしても止めるべく、日々の活動を進めています。
 熊本地震が起きてしまいました。原発事故との複合災害になれば、住民は避難することも「屋内退避」することもできないこと、災害が起きてからの安定ヨウ素剤の配布も不可能だということなど、現在の原発避難計画では命が守れないことがますますはっきりしました。
 私達は2014年度に貴基金から助成いただき取り組んできた避難計画の実地調査や自治体への要請行動を継続しています。最近では熊本地震を踏まえた避難計画の全面的見直しを佐賀県知事に要請したり、安定ヨウ素剤の事前配布を佐賀県全20市町と福岡県17市町に求めて要請・陳情したりしました。各地域の住民、議員、自治体職員らと、放射能から住民の命を守るために今できることは何かという具体的な話から、そもそも原発そのものをなくさなければならないよね、という話までして、脱原発を向けた世論形成を図っています。
 原発30キロ圏の伊万里市長が「犠牲になるのは市民だ」と「再稼働反対」を明言しました。市長の姿勢を応援し、他地域にもひろげようと、「避難計画では命を守れない」と訴えるチラシの個別配布も始めました。
 引き続き、「原発」を身近に考えざるをえない避難計画問題を切り口の一つとして、一人ひとりが原発と放射能の危険性に向き合い、原発を止める行動へと立ち上がるように、行動を強めていきたいと思っています。



もっかい事故調/田中 三彦さん



【助成の概要】
〔2014年度〕福島第一原子力発電所の事故原因と推移過程に関する、運転データと客観的事実に
      もとづく詳細検討/100万円
〔2015年度〕福島第一原子力発電所の事故原因と推移過程に関する、運転データと客観的事実に
      もとづく詳細検討(その2)/80万円
〔2016年度〕福島第一原子力発電所の事故原因と推移過程の詳細検討および原発の安全性に関する
      規制基準の日欧米の比較調査/50万円

■現在助成を受けている最新のテーマの概要については次の通り:
 「もっかい事故調」は、「福島第一原発の各号炉で何が起きたのか」を中立的・科学的視点から、できるかぎり詳細に明らかにすることを目的として調査研究をおこなっている。
 東京電力の福島第一原発事故は、現在もいろいろなかたちで継続しており、熔融燃料(炉心デブリ)の回収や汚染水の処理とその副産物(いわゆる「スラッジ」)の長期保管など、手探りで方法・手段を開発しながらの対応に追われている。使用済み燃料も多くはプール(建屋内プールと共用プール)に残されたままで、次の手がすすまない。事故の原因・推移についても、データ不足や調査の困難さのため未解明の問題を数多く抱えている。 
 私たちの調査研究の作業は、国会事故調において事故の直接的原因の調査に当たったワーキンググループTのメンバーが中心にすすめている。必要に応じて国内外の専門家・研究者等の協力も求め、成果を論文やブックレット(計画中)などにまとめたり、シンポジウムや学習会を開いたりするほか、新潟県技術委員会への対応もおこなっている。
 全交流電源発生の時間と津波の襲来や、原子炉建屋内での水素爆発発生過程など、これまで得られている成果は、福島第一原発1号炉に関する作業に偏ったものであったが、2・3・4号炉で何が起きたのかについても調査をすすめており、随時まとめの作業をおこなっていく予定である。東京電力の提示しているいわゆる「未解明問題」とは違ったものとなるだろう。
 同時に、福島第一原発事故が起きたあとの、安全面に関する各国の規制基準・技術基準について、調査し比較する作業をドイツのエコ研(Oeko-institut)との共同のプロジェクトとして検討をすすめている。新基準にもとづく審査中の原発について、設計基準事故やシビアアクシデントのシナリオ選定の問題点などを具体的に指摘してゆく作業もおこないたい。
 
■上記で計画していたブックレットについては、内容を変更して、岩波書店『科学』の2016年6月号に特別企画「日本の原子力安全を評価する」として掲載していただき、ほぼ同時に同名の別刷りとしても刊行することができた。



放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会/和田 央子さん



【助成の概要】
〔2015年度〕福島県内における農林業系放射性廃棄物の減容化事業が地域社会に及ぼす環境リスク
      に関する調査研究/70万円

 福島における放射能汚染ゴミ処理の現場では、中間貯蔵施設の一部、管理型処分場フクシマエコテック、東京電力南いわき開閉所の仮設焼却炉、楢葉町仮設焼却炉、大熊町仮設焼却炉など着々と建設が進んでいます。一方で飯舘村蕨平では前処理施設の不具合で5か月間焼却炉停止となりましたが一切報道はなく、その後も郡山市の産廃処理施設の指定廃棄物焼却灰保管庫での火災、富岡町仮設焼却炉ボヤなど事故が続いていますが、報道や公式発表はあまりに限定的で、できる限り開示請求で情報収集しています。
 郡山市の産廃焼却施設については東京農工大のご協力を得て土壌のCs濃度のみならず重金属類の分析も行い、有意な汚染の実態が明らかとなりました。さらに火災のあった保管庫に隣接する田んぼあぜ道の空間線量が周囲の数倍も高いため、農工大で同様に土壌汚染分析をお願いし、Cs濃度については高濃度の結果が得られましたが、微量元素については人手不足と資金難のため保留となってしまいました。出火原因については環境省の方でも燃えかすの成分分析を進めています。
 情報発信・共有の場としては、南相馬市、宮城県加美町、千葉県で学習会講師として招かれ、また週刊金曜日(まさのあつこ氏)、熊本日日新聞等で放射能ゴミ問題を取り上げていただきました。
 今後の活動として、これまでの活動をできる範囲で継続しながら、8000Bq/kg指定廃棄物基準を撤回させ、放射能汚染を食い止める法令整備などの運動を進める必要性について話し合いをしています。
 この度は高木基金から勿体ないほどの助成金をいただき光栄に存じます。委員の方々にはご多忙ながら時折ブログにお目通し頂いていることと存じますが、どのくらい伝わっているのかが分かりませんので、お一言でもコメントやアドバイスを入れていただけますと尚幸甚です。



設楽ダムの建設中止を求める会 地質調査グループ/市野 和夫さん



【助成の概要】
〔2015年度〕設楽ダム建設予定地周辺の地質調査/30万円

 2016年6月11日、京都での高木基金成果報告会の後、さらに事業者の情報開示資料の点検を進め、7月26日付で、今回の調査で発見した推定活断層についての報告書「設楽町田口西部の道路工事で現れた活断層と推定される断層について」をまとめ、会のホームページに掲載するとともに、冊子版を作成しました。別に、設楽ダムサイト付近の地質地盤について、「設楽ダム予定地周辺の地質ガイドU」を作成しました。
 以上の二つの冊子・リーフレットを活用して、地質地盤調査というダム事業の前提に不備があることを示しつつ、本年度に予算が計上されている転流工や今後の本体工事を中止するよう、事業者に迫る取り組みを行ない、あわせて世論喚起もしていきます。
 なお、八ツ場ダム事業で大幅な事業費の増額を国土交通省が示してきていることはご承知の方も多いと思いますが、設楽ダム事業でも、国は当初計画に比べて330億円、16%もの増額を関係自治体(愛知県)に示してきています。ダム事業の検証の場で複数案を比較し、もっともコストの安いのがダム事業であるとされ、現在の事業が継続されているのですが、その際のコストの差は20億円だったのですから、今回の330億円増額という変更案は、振り出しに戻らねばならないような大問題です。
 このような問題も含めて、環境破壊の著しい大型ダム事業、しかも水をためる目的の大半が「流水の正常な機能の維持」とされる無駄な事業を止めさせるため、取り組みを強めます。



R.I.La/伊藤 教行さん



【助成の概要】
〔2015年度〕東京湾奥における魚介類の放射線調査/30万円

 東京湾の放射能調査については、2016年4月からは魚介類の調査だけでなく、干潟の調査も開始した。2016年6月には日本郵便(株)の支援を受け、NPO法人R.I.La所有の調査用ボートを進水させ、魚介類については昨年実施したシロギス・アナゴ、太刀魚、スズキ、ハゼ、アサリ、ホンビノス貝の他、湾奥の魚介類としては鯵、サバ、黒鯛。更に湾口の魚介類として真鯛、イナダ、カワハギ、カサゴ等の調査も実施する予定。干潟については多摩川河口、三番瀬・江戸川放水路、三枚洲、盤洲干潟の土壌調査を予定しており、現在予備調査を実施している。8月中旬には多摩川河口の干潟の土壌調査を開始した。
 東京湾の調査については、特に期待する声が多く、大勢の方がこの結果に注目されている。我々としては、今後も長期に渡り継続して調査をしていく所存である。



深草 亜悠美さん



【助成の概要】
〔2015年度〕29年の歴史と記憶:ベラルーシの社会におけるチェルノブイリ事故の受容/50万円

 高木基金の助成を受け、チェルノブイリ原発事故から約30年を迎えるベラルーシ社会について調査しました。チェルノブイリ原発は現ウクライナに位置しますが、当時事故により発生した放射性物質の7割が現ベラルーシ側に降り注いだと言われています。事故後30年ほど経つベラルーシの人々は、事故をどのようにとらえているのか?被害はまだ続いているのか?福島第一原発事故を経験した日本が学ぶべき事は何か?そういった問いに取り組むべく、ベラルーシに赴きました。また、長年ベラルーシの市民を支援するドイツの市民団体との交流や意見交換も行いました。研修の後半は国際環境NGO FoE Japanでのインターンを行い、ベラルーシについて学んだ事をいかし、日本の脱原発や被災者支援に取り組みました。
 1年の研修を終え、現在は研修受け入れ先のFoE Japanでスタッフをしています。主には気候変動とエネルギー問題について取り組んでおり、特に海外への情報発信や原発輸出に関する取り組み、気候変動も原発もない未来を達成するためのキャンペーン等を行っています。
 今後もよりいっそう海外との連携を深め、日本で起きていることの体外発信や、海外の市民社会との協働などを行っていきたいと考えています。
 また、日本だけでなく複数の国の政府は気候変動対策に低炭素エネルギーである原発を気候変動対策に推進しようとしています。気候変動の被害はとても深刻ですが、原発は気候変動対策の解決にはなりません。化石燃料も原発も中央集権的で、持続可能でない事は明らかです。持続可能で再生可能エネルギー100%の社会に向けて今後も取り組んでいくつもりです。
 高木基金に研修助成を頂き大変感謝しています。ありがとうございました。



みんなのデータサイト/小山 貴弓さん



【助成の概要】
〔2016年度〕NaIシンチレーターによる土壌中放射性セシウム濃度測定の精度向上と検証のための
      取り組み 〜市民放射能測定所の連携強化を目指して〜/60万円

 市民による放射能測定の精度向上、また今後のデータ発表の信頼性を高めるために、低濃度の検体と高濃度の検体を準備し、機種の異なる測定器で測定誤差がどれだけ出るか、ウラン系列が多く混ざった検体の測定結果がどのように表示されるか、非常に高い汚染検体の数値がどのように表示されるかを、あらためて検証しようとしています。
 先頃、低濃度3種類、高濃度2種類の検体の準備、異なる6種類の測定器22台(環境濃縮プロジェクト・HITの1台を含む)を持つ測定室が参加するオペレーションがようやく整ったところです。9月の終わりから測定に取り掛かり、11月の終わりにデータサイトの総会・合宿にて、中間報告と解析を行ないます。
 またこれらの結果から、今進めている「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」とこれから行なう「環境濃縮ベクレル測定プロジェクト」の表示が正しく行われるようアウトプットデータとの関連を精査し、データの提供を行っていく予定です。
 
 高木基金には設立から関わらせて頂き、3.11の事故後、市民放射能測定事業を通じて、市民測定室のネットワークづくり、「みんなのデータサイト」の立ち上げに高木基金のスタッフとして深く関与させて頂く事となりました。
 3年間の勤務期間を経て高木基金を離れ、現在は「みんなのデータサイト」を支えるスタッフとして活動しています。本来、国がやるような「国家的プロジェクト」である「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」もお陰様で最終ステージに入り、17都県2,500件の土壌採取が目前に迫って来ました。市民によるこの壮大なプロジェクトは当初不安以外何もなく、どこへ到達するのか清水の舞台を飛び降りて試すしかないと、ここまで懸命に牽引を続けました。
 来年3月すべてのデータアップを終えましたら、日本国内だけでなく、海外にも情報発信をしていく予定です。その際には、忘れ去られようとしている福島原発事故の新たな姿が浮かび上がり、再び注目が集まることを期待しています。
 高木基金の皆さんには、今後資金集めの裾野が大きく広がるように、幅広い世代に情報を届ける努力を続けて頂ければと思います。今後、国内の市民運動、NPOやNGOの活動資金の不足はますます顕著になっていくであろうと思われます。高木基金の存在意義や、その活動からどれだけ精度の高い「市民科学」が実践されているかをもっと内外に広報し、1,000円程度の気軽な寄付から、数百万から数千万円というような高額寄付が集まるような仕組みを、インターネットなどを通じて構築し、多くの市民運動に高額の助成がされるようになれば嬉しく思います。
 また、働いているスタッフの皆さんの労働環境を我慢の現場にせず、お洒落で憧れを持たれるような職場にして、若い能力のあるスタッフの皆さんが後に続けるようになればよいなと感じています。
 皆様の日々の活動に心より感謝とリスペクトを申し上げます。
 いつもありがとうございます。生涯応援し続けます!!



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